煙草は「百害あって一利なし」とは誰でも分かっている常識だ。ところが禁煙したいと思いながらも、なかなか禁煙できないでいるサラリーマンが多いのが実情ではないだろうか。
かつては私もその一人であった。もう30年近く前になるが、一度禁煙を決意して1か月間位禁煙を決行したことがある。ところが常にイライラが募り、それを抑えるために毎日のように和菓子屋へ出入りするようになってしまった。それで糖分を取りすぎて、体は重くなるし体調は崩すし、挙句の果ては和菓子屋の狭い駐車場で、看板に車をぶつけてしまったのである。
そしてその結果として、看板と車の修理代を負担しなくてはならないハメになってしまった。その時感じたのは、禁煙するのは「命がけで金のかかる」ものだと言うことだった。それがきっかけと言い訳になって、その日を境にまた喫煙生活に逆戻り。せめて喫煙本数くらいは減らそうと決意したが、1か月もしないうちに元の本数以上の1日30本に増えてしまった。
それからはもう禁煙など絶対にする気が無くなり、世の中が禁煙方向に進んでゆくのに、まるでそれに反発するが如く1日30本を維持し続けていたのである。その間に生まれつき弱い私の喉は更に悪化し、絶えず咳き込むため胸が痛くて仕方がなかった。そして周囲の人々にもいろいろと迷惑をかけていたようである。気が付くと既に50歳を超えており、毎日体の不調を告げない日がないほど私の体は劣化しはじめていた。
そんな時、お世話になっていた公認会計士の先生が、肺がんに侵され62歳の若さで亡くなってしまったのだ。代表社員であったこの先生とはよく一緒に出張に行き、旅先で麻雀、カラオケなどを楽しんだ。そして時々私の下手なゴルフにも、嫌な顔一つせず付き合ってくれたものである。
先生は酒もかなり飲んだが、それ以上にヘビースモーカーで、仕事中も四六時中くわえ煙草のままであった。そしてよく咳き込んでいた。さらには、その吠えるような咳の仕方が、まさに私の咳とそっくりだったのである。
私は急に恐ろしくなり始めた。そろそろ喫煙も潮時かもしれない。だがたぶん意志の弱い私に、禁煙は無理であることも分かっていた。それと会社の喫煙所での情報は捨て難い。
サラリーマンが飲みに行っても、会社や仕事に対する愚痴や上司の悪口くらいしか話題にならない。だが真昼間の喫煙所ではそれは出来ない、従って仕事の話や情報交換などのまっとうな話題が中心となるのだ。従って上司も知らない社内外の話が、場合によっては極秘情報さえキャッチできることがある。
「百害あって一利なし」と決めつけられている煙草だが、実はそんなメリットもあるのだ。それに食後や珈琲を飲みながらの一服は、それこそ至高のひと時であり、心も体も癒されるような気がする。もっとも医学的には、それこそ「気がする」だけで実際の効果はないのだと仰る医師が多いのだが、喫煙家にとっては「気がする」だけで十分なのである。
だから少なくとも現役サラリーマンをしている間に、無理やり禁煙してストレスを溜め込むことは得策ではない。だが本数を減らすことは可能かもしれない。それは先に述べた情報取得や癒しのための一服だけではなく、「なんとなく吸ってしまう」という習慣と言うか習癖による喫煙のほうが圧倒的に多いことに気が付いたからである。
そうこの習慣こそ喫煙の最大原因なのだ。喫煙に限らず人は習慣に弱い、体や心に馴染んでいることは、知らず知らずに実行してしまうではないか。車の運転なども良い例で、今日は別ルートで行こうと車を走らせていても、話に夢中になっていたりすると、知らぬ間にいつもと同じ道を選択してしまう場合がある。
それで煙草の本数を減らす場合も、この習慣を逆手にとることが必須となることに気付いたのだ。つまりまず自分なりの喫煙ルールを創るのである。例えば車の中では絶対に吸わない。歩き煙草は絶対にしない。二時間おきに喫煙所に行き、一度に1本以上吸わない。などなどであるが、いきなりハードルを上げずに、二時間おきを一時間おきから始めても良いだろう。また慣れてくれば逆に三時間おきとか食後のみとか、少しずつハードルを上げて行こうではないか。
私の場合は、1日30本から20本、15本、10本、7本、5本、3本と徐々に本数を減らし、現在は1日1本の喫煙におさめている。こう言うとそれなら、さっさと辞めればいいではないかと反撃されてしまう。だがたかが一本されど一本であり、無理に辞めてストレスの原因を創らないことがポイントなのだ。従って喫煙家の友人と飲んだ時は3本位吸っても良いことにしている。だからと言ってその日から3本に増えたりはしない。また元の1日1本に戻すことが、何の苦も無く出来なくてはだめなのだ。なにしろ柔軟に例外を認めても、決して習慣は崩してはいけないのである。
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