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経理・経理・経理マンの巣窟

大・中・小あらゆる企業で経理実務経験約40年の蔵研人が、本音で語る新感覚の読み物風の経理ノウハウブログです

決算短信の謎

2016-12-10 18:25:54 | 崩壊する上場企業の経理

  そもそも『決算短信』とは、証券取引所に株式を上場している企業が、証券取引所の適時開示ルールにより決算発表時に提出する、共通形式の決算速報のことをいう。従って決算公告や有価証券報告書のように法律で定められた開示ではなく、証券取引所の自主規制に基づく開示なのである。

  またその提出時期は、決算期末後45日以内に開示されることが適当だが、30日以内の開示がより望ましいとされている。そのため、企業が最も早く決算情報を開示する資料となり、投資者・マスコミ・金融機関からの注目度が非常に高いのだ。
 そんなことから、部長以上の直接経理実務に携わっていない偉い人たちは、この決算短信の提出をもって決算作業は終わったと思い込んでしまうから困ったものである。実務的にはまだまだ、有価証券報告書、会社法に基づく財務諸表、税務申告書の作成など、ボリュームのある決算書類の作成がずらーと控えているのだ。

  まあそれはそれとして、いつの間にかこの決算短信自体も、30頁前後というかなりの肥満児に育ってしまった。30年以上も昔、私が直接作成していた頃の決算短信は、決算情報をサマリーした表紙部分のみを決算短信と呼び、付属資料として営業状況・貸借対照表・損益計算書・利益処分案などを添付していたに過ぎない。従って総枚数も5枚程度で、自信のある超大企業などは、「藁半紙にガリ版刷りで作成した、メモのような財務諸表」を添付していたものである。

  それがいつの間にか、連結財務諸表が中心となり、セグメント情報なども加えて、約6倍のボリュームに膨れ上がってしまい、体裁もりっぱなものになってしまったのである。さらに四半期決算制度の確立とともに、年4回に亘って作成・提出しなくてはならないのだ。
 まあ会計ソフトなどの発達・充実により、決算短信を作成するためのデーター類が、自動的に有価証券報告書などに援用できるようになったこともあり、経理マンにとっても決算実務の中核的な存在になってしまったようである。

  さらに決算短信は企業のHPにも掲載するため、もうかつての片手間的な作成もできないし、ミスも許されない。それにしても、偉くなってしまった『決算短信』様々だね。だから逆に言えば、もう『有価証券報告書』なんて必要ないのでは、と言いたくなってしまうのである。

 

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上場会社の世襲制

2016-07-18 11:28:24 | 崩壊する上場企業の経理

  本来企業のトップを決めるのは取締役会であり、その取締役を選任するのは株主総会である。従って言い換えればその企業の議決権の過半数を所持していれば、代表取締役社長を選任できると言うことになる。これはその企業が中小企業であれ上場企業であれ同様である。
 そんなこともあってか、天下のトヨタをはじめとして、上場会社の中にも創業者一族が世襲でトップを独占している企業がかなり存在している。なにを隠そう、私が勤務していた二つの上場会社は、いまだに双方ともトップは創業者一族の長男である。

 まあそれでも経営能力や人望があれば、世襲制であろうがなかろうがどうでも良い。しかしながら現実には、学業成績は良いのだが、経営能力や人望のないトップが多いから厄介なのである。もっとも何の苦労もなくトップになれるのだし、子供の時から裕福で贅沢をしているわけだから、わがままで他人の意見を聞かず、世間知らずに成長してしまったのは当然の成り行きかもしれない。
 だが上場会社などの大企業ともなれば、経営者の判断ミスなどから、多くの従業員や株主に損害を与え、場合によっては社会全般にも迷惑をかけてしまう場合がある。だから世襲に限らず、経営能力のない者が大企業の経営者になってはならないのだ。

 そんなことは社会人なら誰でも分かっている基本常識である。それにも拘わらず相も変わらず創業者一族が会社を私物化しているのはなぜであろうか。もちろんそうすることが創業者一族にとって美味しいからに決まっている。
 でもなぜそんなことを営々と続けられるのだろうか。それは冒頭に述べたように創業者一族がその企業の株式を大量に保持しているからである。またそれは必ずしも直接に保有しているとは限らない。
 つまり、かつて国土計画株式会社が西武鉄道の株式を大量に保有し、西武鉄道の実権を握っていたのと同様に、創業者一族が実権を握っている非上場会社に大量に上場株を保有させている例がかなり多いのである。それはもちろんこの方法が、相続や税金対策に有効だからだということになる。

 さらに上場企業の場合は、必ずしも株式の過半数を保持している必要はない。つまり議決権に興味を持っていない一般株主がかなり多いからである。従って買収などの特殊な事例を除けば、通常20~30%程度の株式を直接または間接に保有していればその企業の実権を握れるはずなのだ。
 それでも取締役会が強力であれば、法に従い真の実力者が代表取締役に選ばれても良いはずではないか。と理屈をこねてみても駄目!。それこそ創業者一族が一番恐れているクーデターであり、少なくともその対策だけはしっかりと構築されているからだ。

 つまり自己保身に長けている創業者一族は、取締役たちのクーデターを防止するため、決して実力のある者を取締役には選任しないのだ。こうして常に決して裏切らない、安全牌だけに絞って役員を選んでいるのである。まあそれでも、高度成長期や社会が安定している時代には、経営者が安定しているというメリットを生かしてなんとか辻褄を合わせてきた。
 ところが低成長期を迎え世界的不況の時代に突入すると、創業者をお守りするだけの軟弱役員では難局を乗り越えられなくなってしまったのだ。それこそが、最近になって破たんを迎えてしまった大企業の成れの果てなのかもしれない。
 だからそろそろ上場会社においては、世襲制を見直す時期が訪れているのではないかと考える。それでもなんとしても創業者一族が世襲に拘るならば、かつての松下やスズキのように、社内外から優秀な人物を娘婿に迎えてトップに据えるしかないだろう。

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大手監査法人の見解とは

2015-11-23 17:25:19 | 崩壊する上場企業の経理

 東芝が過去5年間にわたり利益の水増しを行い、不適切会計を行っていたことは周知の事実である。そしてこの不正を見逃していたのは、大手監査法人の「新日本監査法人」であった。
 これに対して金融庁は、新日本監査法人に対して、公認会計士法に基づく業務改善命令の処分を行う方針を固めた。なお監査審査会が新日本監査法人への立ち入り検査を行い、監査作業の実態を調べた結果、内部手続きの形骸化や不審点への追及不足といった問題が判明したという。
 さてこの新日本監査法人は、過去にもオリンパスの巨額損失隠しにも関与し、業務改善命令を受けていたのである。従って2006年に中央青山監査法人がカネボウの粉飾決算に絡んで業務停止処分を受けたように、最悪解散に追い込まれる可能性も否めない。

 それにしても、なぜ公正な立場を維持すべき監査法人で、このようないい加減な監査が行われるのだろうか。なお新日本監査法人では、大口顧客の担当者を長期間固定し、良好な関係の維持を幹部登用への暗黙の条件とする人事慣行があったというのである。
 だがそのような慣行は、決して新日本監査法人だけの慣行ではないだろう。事実私が現役の頃に、私が勤務していた会社の監査を担当していた某監査法人が、次のような怪しい監査を行っていたものである。

 私の勤務していた2部上場会社をA社、それより10倍以上大きい超大企業をB社とする。そのA社とB社がそれぞれ50%ずつ出資した合弁会社をC社とする。このC社に対する連結上の会計処理に対して、某監査法人はA社に対してかなり厳しい会計処理を要求してきた。それをそのまま受け入れると数十億円の損失計上を余儀なくされる。
 ところがB社が行った会計処理方法は、繰延資産としてその損失相当額を将来に繰り延べるというものだった。しかもB社を担当する監査法人はA社と同じ監査法人なのである。つまり同じ合弁会社C社の会計処理がA社とB社で全く異なっており、それを監査しているのが同じ監査法人だというのだから、実に奇妙ではないか。

 私はすぐに某監査法人のA社担当責任者に対して、B社と同じ会計処理を行いたいと申し入れた。そして同じ監査法人内で見解が異なる程度のものならば、大して重要な問題ではないだろうと追及したものである。
 だが監査法人側の回答は、「担当者が異なるので見解が異なっても仕方ない、自分は絶対に繰延資産とは認めない」とのことでチョンであった。当時A社が某監査法人に支払っていた監査報酬は約5千万円、おそらくB社は数億円支払っていたのかもしれない。つまりその金額の差が、見解の差を生んだのではないだろうか。監査法人といえども、大勢の社員を養ってゆかねばならないという悲しい事実である。

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社外役員の必要性

2015-06-29 20:11:57 | 崩壊する上場企業の経理

 また株主総会の季節となり、各社から株主総会招集通知書が送付されてくる。その中で役員の選任などの議案を見ると、かなり年配の候補者が目につくことが多くなった。よくみるとそれらのほとんどが社外役員であることが多い。
 さてここで言う社外役員とは、会社役員のうち、一定の要件を満たした社外取締役及び社外監査役を言う。このうち社外監査役については、平成5年の商法改正で導入されているが、一方社外取締役のほうはだいぶ遅れて平成14年になっている。だが社外取締役制度については、経団連の反対などにより強制力のない貧弱な制度でお茶を濁していたに過ぎない。

 ところが最近になって、株主の権利や取締役会の役割、役員報酬のあり方など、上場企業が守るべき行動規範を網羅させる「コーポレートガバナンス・コード」の導入が国際的な気運となってきた。またアベノミクス第三の矢の重要施策の一つとして、コーポレートガバナンス改革が挙げられており、この「コーポレートガバナンス・コード」の原案が凄まじいスピードで取りまとめられていると言うのだ。

 そんな背景もあってか、今年の株主総会では、新たに社外取締役を選任する企業が、昨年の約2倍と大幅に増えたらしい。もちろん外部の斬新な目で経営を見直して、不採算事業の撤退など、従来から放置されてきた懸案に大鉈を振るい、会社のリスクを排除し収益改善に繋げられれば言うことはない。
 理屈の上では良いことだらけの『外人さん思想』なのだが、結局は運用面で上手くいかないだろう。つまりこの社外役員たちをどこから引っ張ってくるのか、そして彼等の報酬は誰が支払うのかと言う二点のため、今までもほとんど理屈通りには機能していないからである。

 そもそも監査役の本来の最重要業務は、「取締役の業務監査」であるはずなのに、ほとんどの企業の監査役がそれをほとんど放置したまま、公認会計士の会計監査のお邪魔虫的な存在になり下がっている。それに社外監査役は何にも異を唱えないし、同調しているだけではないだろうか。
 結局監査役では役に立たないと見切って、今度は社外取締役ならどうだ!と大声を荒げたのだ。しかしただ社外取締役と名前が変わるだけで、社外監査役同様、単なる員数合わせで無駄な費用が増えるだけであろう。

 なぜ私がこのようなことを断言するのか。それは先に述べたとおり、社外役員の選任が企業のトップなどにより行われ、取引先やトップの知り合いなどから選ばれているからだ。またそれらの社外役員の報酬も企業から支払われるし、トップの判断でクビにすることも出来るのだから、社内役員と何ら変わりがないではないか。

 もし本気で社外役員制度を導入しようとするなら、まず国や東証などが中心となり『社外役員協会』なる機関を創立し、そこに一定の条件を満たす実力者たちを登録する。そしてそこに登録された優秀な人材を、協会がランダムに企業へ派遣するのだ。もちろん彼等の報酬はその協会から支払われる。またその報酬の原資は、上場企業から会費として徴収することにすればよい。こうした組織を創って運用すれば、社外役員たちもきっと本来の職務をまっとう出来るはずである。

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工事進行基準の恐ろしさ

2015-06-08 17:54:33 | 崩壊する上場企業の経理

 連日のようにマスコミで不適切会計を報道されている天下の『東芝』さん。一体何があったのか調べてみると、インフラ事業の会計処理に適用される「工事進行基準」の取り扱いに問題があったようである。さて一般の方には耳慣れない「工事進行基準」とは、一体どのような会計処理方法なのだろうか。
 そもそも1年超の長期工事等が多い建設業では、昔から会計・税務ともども工事の進行度合いに応じた収益の計上方法が認められていた。そう、認められていたという表現でもわかる通り、あくまでも原則は工事の完成時に収益を計上する「工事完成基準」が原則であり、継続運用を前提に「工事進行基準」も認められていたに過ぎなかったのだ。

 ところが会計ビックバンによる黒船来襲により、国際会計基準に従わざる得なくなり、2009年4月1日以降は土木、建築、造船、大型機械装置の製造、受託ソフトウェア開発など工事収益総額、工事原価総額、決算日における進捗度の3点が信頼性を持って見積れる長期請負工事では、工事完成基準ではなく工事進行基準が強制適用となってしまったのである。
 さてこの工事進行基準とは、工事の進捗度合いにより収益を計上する基準のことをいい、収益の具体的な計算方法を簡単に記すと次の通りとなる。
工事進捗度合=累計原価/見積総原価
当期収益=契約価額(工事収益総額)×工事進捗度合 - 前期までの収益計上額

 つまり、当期収益計上の鍵となる工事進捗割合の計算に「見積総原価」を使用しているところがミソなのである。見積もりとはあくまでも現時点での予測であり、計算違いもあれば資材費の変動もあるし、もっと言えば恣意的に数値を捏造することもできるのだ。
 実は東芝の不適切会計も、その見積総原価の見積りに問題があったと発表されている。結局のところは、強引な理屈ばかりで武装しているものの、実践的な弱さが目立つ「欧米会計の限界」を露呈してしまったのではないだろうか。

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なぜ日本は3月決算が多いの

2015-05-18 07:43:34 | 崩壊する上場企業の経理

 国税庁の統計によると、日本企業の約20%が3月決算だと言う。もっと多いはずだと思っていたが、実はこの統計は中小企業も含めた全企業が対象だからであり、上場企業だけに絞れば数年前までは約80%が3月決算なのであった。だから決算発表や株主総会が5~6月に集中してしまうのである。
 
 逆に言えば、上場会社以外の会社はさほど3月に集中していないことになる。これは私の個人的な推測であるが、所得税の確定申告が暦年主義であるため、個人事業から零細企業に法人成りした場合、そのまま12月決算を引き継いでしまうことが一つ。もう一つの理由は、顧問税理士さんが3月決算の集中を嫌って、3月以外の決算日を薦めてしまうためではないだろうか。

 まあ零細・中小企業の決算日は別として、大企業や上場会社はなぜ3月決算を選ぶのであろうか。そもそも発端は日本国や地方自治体の決算が、毎年4月から翌年3月までを会計年度としているため、企業側がこれに合わせたと言うのが定説となっているようだ。また公共事業や許認可が必要な事業を営んでいる場合、決算日をお役所と併せておいたほうが都合よく処理できることもある。
 それから上場会社に3月決算が多いのは、3月決算でないと格好がつかないと言うこともあるが、実は株主総会を集中的に実施して総会屋を分散させ、株主総会を迅速に終了させたいと言う助平心もあったようだ。だから多くの上場会社が6月○○日頃に株主総会を同時開催しているではないか。

 しかしながら、米国をはじめとして、海外では12月決算の企業が主流である。ことに中国では12月決算が法令で義務付けられている。そんな中で、国際会計基準がだんだん厳しくなり、連結決算をする場合には、親会社と子会社の決算日を一致させなくてはならない方向へと進みつつある。そしてついに数年前、「花王」など会計システムの進んでいる企業で、3月決算から12月決算への移行がはじまったのである。さらに最近ではJTや資生堂などが12月決算へ動き出している。

 とは言っても、まだまだ日本では3月決算企業が多い。だが時代の流れは速くまた誰にも抗えないものである。いずれは日本も12月決算が主流になってゆくのだろう。そのときはお役所も暦年基準かもしれない。そうなると入学式も1月になり、「早生まれ」という概念もなくなるのだろうか。

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PLから法人税等をなくしてしまえ

2013-01-17 14:15:54 | 崩壊する上場企業の経理

 そもそも日本の古い企業会計原則では、法人税等のIncome Taxを、株主配当金などと同様に「利益処分項目」のひとつと考えていた。従って当期分の法人税等を費用としてPLに計上することはなかったのである。

 ところが昭和38年4月に新たに商法計算書類規則が制定され、当期の所得に対する法人税は、期末日現在すでに納税義務が発生しており、その納付期限も二ヶ月以内であるところから、これを貸借対照表の流動負債として計上し、かつ損益計算書の費用として計上するよう義務付けられたのである。

 これ以来、法人税等は費用としてPLに計上され、それを控除した後の金額が当期利益として認識されるようになった訳である。また米国では早くからこれを費用として処理していたため、もはや国際的にもこの処理が定着してしまい、法人税等を費用処理することに異を唱える学者はいなくなってしまった。

 しかしながら、本当にこれで良いのだろうか・・・。企業側で全く調整出来ない税金という支出を費用と考えていいのか、また税法基準で計算された法人税等を費用計上するため、会計との期間的なギャップが生じる。そしてそれをフォローするために税効果会計を運用し、訳の分からん繰延税金資産などを発生させるという悪循環を産んでしまった。

 株主総会重視だった旧商法と異なり、現在の会社法では、かなり柔軟に会社側で利益処分が行えるようになっている。そのため利益処分案が無くなり、株主資本等変動計算書に変わっているのだから、法人税等はこの株主資本等変動計算書の中で、剰余金の減少項目として表示したらどうであろうか。むろん期末に剰余金を流動負債の未払法人税等へ振り替える仕訳が必要なのは言うまでもない。

 こうすることにより、PLから法人税等の費用項目は消滅し、税効果会計と言ういかがわしい制度も不要となる。さらには当期利益が税引前利益と一致することになり、経営者の果たした真の功績が評価し易くなるではないか。そもそも企業努力で調整出来ない税金を、経営者の責任対象にすること自体がナンセンスだったのである。さらには、法人税等が経営責任から除外されれば、法人税等の税率が高いの低いのといった議論も影を潜めることになり、国側としても減税に頭を悩ますこともなくなるであろう。
 従って「PLから法人税等をなくす」ということは、こんなに良いことだらけの正しい会計処理なのである。ただもはや日本単独では、抜本的な会計処理方法の変更が出来ないという現実が横たわっているのが悲しい。だが国際的にみても、これだけのメリットのある会計処理への変更をしないというのは、大いなる世界的損失ではないだろうか。

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中小企業に入社しようぜ

2012-11-29 15:24:11 | 崩壊する上場企業の経理

 すでに半世紀以上に亘って、日本の母親たちは大事な我が子を、良い大学に入学させて、大企業に入社させたいとの虚仮の一念で、我が子たちを育て教育してきた。また未婚女性が望む結婚相手も同様の思考を辿り続けている。お陰で若い男性たちも、同様の価値観に被われてしまい、日本中が金太郎飴人間で蔓延してしまったのである。
 これだけならまだ良いのだが、最近では不況や高学歴化により、すでに大企業では人手過剰に陥り、どこの企業でも新学卒の雇用を極力抑制する傾向が続き、巷では就職出来ない若者たちが溢れ返っている。ところが中小企業では、募集してもなかなか良い人材が集まらないという、矛盾の循環のような状況が続いていたのである。

 ところが最近になって、中小企業を希望する学生たちが急激に増加し始めたという。やっと若い人たちもわかってくれたか。と思うと同時に少し明るくなり始めた就職展望にほっと胸を撫で下ろすという心境に浸っている。もちろん中小企業ならどこでも良いと言う訳ではない。やはり将来に希望と夢が持てる会社でなくてはいけないのは言うまでもないことである。
 もはや最近では、上場会社が簡単に倒産する時代に突入してしまった。大企業だからといって定年まで無事に勤務出来る保障はなくなってしまった。そのうえ仕事はつまらないし、つきあいや残業ばかりで、自分の自由時間を持てないし、独自の個性も価値観も持てず、金太郎飴的価値観の中で埋もれてしまうのが関の山。つまらない出世競争に明け暮れて、挙句の果は壊れた人形のようになり、ポイ捨てされておしまいという人生を辿ることもある。

 一方中小企業では、若くとも重要な仕事を任せてもらえるし、自分の個性や実力を思う存分に発揮できることが多い。またつまらない法令等に縛られることも少ないので、自分流のやり方で仕事の効率アップを図り、残業ゼロを達成することも可能である。
 そして余った時間を自分の好きなことに使うことも出来るようになるかもしれない。さらに実力さえあれば、若くともどんどん出世し、将来自分で起業することも可能となる。ただしやる気のない人には、中小企業は向かない、いやもちろんそんな人間は大企業でも通用しないし、仕事以外でも大成することはないだろう。

 とにかく、まずは良い中小企業に入社して、真剣に勉強し実務をしっかりと覚えることである。また勉強と言っても、本を読んだりセミナーに参加するだけではなく、尊敬出来る先輩や上司を見つけて、暫くはその人の行動を真似するということも必要である。
 最後に良い中小企業の見分け方だが、その中小企業が行っている事業内容や技術に将来性があるということがひとつ。もうひとつは、そこの社長の人格や価値観が素晴らしいかどうかである。だから一方的に面接を受けるだけではなく、自分もその会社の社長を面接する位の気持ちを持って面接に挑もうではないか。

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監査役制度を抜本的に見直せないのか

2012-06-26 15:41:21 | 崩壊する上場企業の経理

 監査役とは、取締役及び会計参与の業務を監査する機関であり、株主総会、取締役と並ぶ株式会社の機関の一つである。その主な役割は会社経営の業務監査および会計監査によって、違法または著しく不当な職務執行行為がないかどうかを調べ、それがあれば阻止・是正するのが職務である。また、会社と取締役の間での訴訟においては取締役に代わって会社を代表する役目も担う。
 と会社法に定められているが、この中の取締役の業務を監査し、問題があれば阻止・是正するするという項目については、いまだ十分にその職務を果たせないでいる。そして株主総会において、どこの会社の監査役も判で押したように「十分に監査しましたが、全て適正で問題ありませんでした。」と報告するのである。私はそれを聞くたびに、心の中で失笑してしまう。

 大昔は、取締役まで出世出来なかった者や何らかの理由で取締役を早期退任した者を監査役に選任する傾向が多かった。そして何もしない形式だけの監査役が重用され、その実態を熟知している従業員たちは、彼等のことを陰で「閑散役」と呼んで嘲笑していたものである。
 だが現在の監査役は、その時代に比べれば、かなり勉強しているし、ある程度監査が出来る人が選任されるようになった。しかしながら、彼等が行う監査内容の大部分は、従業員等の業務監査や公認会計士が行った監査の報告をまとめることなどに限定され、取締役に対する業務監査等を行っている者は殆んどいないのが実情である。

 ではなぜ彼等は取締役に対する業務監査等が出来ないのだろうか。答えは簡単である。そもそもどこの会社においても、監査役は取締役よりも地位が下だと思い込んでいることがひとつ。もう一つは、会社から報酬を頂いているので、彼等もサラリーマンの一人にしかなれないということなのである。従ってことに役員の人事権を持つ代表取締役には、絶対逆らえない訳である。

そもそも長年サラリーマンをしていた人が、監査役になったその日から急に価値観や人生観が変わるはずもなく、これまで築き上げてきたサラリーマン人生を棒に振ることもあり得ないだろう。
 そのため会社法上の大会社においては、監査役の半数以上を、過去にその会社や子会社の従業員・役員でなかった外部の者としなければならない定めを創ったのである。ところがこの社外監査役を選任するのは、やっぱり代表取締役であり、自分を裏切らないような人物を探してくるのだ。そしてその大部分は、弁護士や税理士などで、彼等は本業を別に持っているので、本格的な監査など出来る訳がない。そしてこの制度もいつの間にか形骸化してしまったのである。
 
 それではどうすれば、良いのだろうか。そもそも会社が監査役を選任することと、会社が監査役に報酬を支払うことの双方をやめない限り、真の監査を行う監査役は生まれない。だから、それを実現するために次のことを国が整備する必要がある。

 監査役の任期は2年とし、重任はできない。また監査役は日本監査役協会(仮称)より派遣された者しかなれない
● 日本監査役協会(仮称)は、国が認可する公益法人でなければならない
 企業は法人税等の他に監査税(仮称)を国に納付し、国はこれを日本監査役協会(仮称)に支給する
● 監査役の報酬は日本監査役協会(仮称)から支給する
 日本監査役協会(仮称)に属する監査役候補者は、監査役資格(仮称:一定の国家資格を設定する)を持ち、監査役以外の仕事を兼務することは出来ない

 こうすれば、会社と監査役とのしがらみは全くなくなり、かつ任期を2年とし、重任させないことで、企業との癒着も防止出来るのである。国庫の負担もないし、その気になれば簡単に出来るような気がするのだがどうだろうか。あとは国が本気でやるかやらないかじゃないのかな。

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損益計算書ってそんなに偉いの

2012-02-03 10:29:12 | 崩壊する上場企業の経理

 会社の偉い人たちは、PL・PLとうるさい。また投資家もマスコミも利益・利益と大騒ぎする。
 確かに赤字よりは利益があるほうが良いに決まっているし、会社の目的は利益を計上して、株主に配当として還元することにある。しかし本当は、その利益の中味が重要なのだ。
 「売掛金の話」でも述べた通り、現金が増えて初めて利益が評価されるのである。会社の財務諸表をみればわかるが、利益累計(つまり剰余金)の額だけ現預金を保有している会社はほとんどない。
 あるとすれば、新規に上場したが、やることがなく現預金を使っていない会社とか、赤字で借金まみれの会社くらいか。こんな会社は論外であり、通常は先行投資するために、現金預金は別の資産や開発投資などに姿を変えているはずである。
 だから損益計算書の利益だけ眺めても、決して安心出来ない。過剰な投資をしたため、或いは粉飾決算をしたため、利益があっても金がないという会社がある。

 会社が倒産するのは、損益計算書で赤字になるからではない。もちろん赤字会社にロクなものはないので、結果として赤字だったということになるかもしれない。
 だが倒産の直接原因は、資金繰りがつかないからである。金がないから、給料や債務が払えない。銀行が永久に金を貸してくれればよいが、これ以上傷口を広げたくないと、借金を引き上げ始めたらオシマイである。それが倒産に繋がるのだ。
 だから無尽蔵に金のある会社なら、たとえ赤字が続いても絶対に潰れない。逆に言えば金欠病の会社は、黒字倒産もあり得るのである。
 だからといって、金さえあれば赤字でも良いと言っているわけではない。会社は永久に継続する前提なのだから、利益が出るということは将来の価値の測定に繋がる。また社会的信用も維持出来るのである。

 従って、会社の真の価値を見極めるためには、損益計算書だけではなく、少なくとも貸借対照表やキャッシュフローも必要だと言っているのだ。
 ところが会社の偉いさんたちは、損益計算書の売上と利益にしか興味がない。極論すればそれ以外はどうでもよいのだ。というより良く判らないのかもしれない。
 もともと判り難い会計だが、アメリカ流の会計制度を取り入れたお陰で、ますます近寄り難い存在になってしまったようである。会計の専門家である公認会計士さえも、即答出来ないことが多いのだから、仕方がないのかもしれないね。

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