そもそも『決算短信』とは、証券取引所に株式を上場している企業が、証券取引所の適時開示ルールにより決算発表時に提出する、共通形式の決算速報のことをいう。従って決算公告や有価証券報告書のように法律で定められた開示ではなく、証券取引所の自主規制に基づく開示なのである。
またその提出時期は、決算期末後45日以内に開示されることが適当だが、30日以内の開示がより望ましいとされている。そのため、企業が最も早く決算情報を開示する資料となり、投資者・マスコミ・金融機関からの注目度が非常に高いのだ。
そんなことから、部長以上の直接経理実務に携わっていない偉い人たちは、この決算短信の提出をもって決算作業は終わったと思い込んでしまうから困ったものである。実務的にはまだまだ、有価証券報告書、会社法に基づく財務諸表、税務申告書の作成など、ボリュームのある決算書類の作成がずらーと控えているのだ。
まあそれはそれとして、いつの間にかこの決算短信自体も、30頁前後というかなりの肥満児に育ってしまった。30年以上も昔、私が直接作成していた頃の決算短信は、決算情報をサマリーした表紙部分のみを決算短信と呼び、付属資料として営業状況・貸借対照表・損益計算書・利益処分案などを添付していたに過ぎない。従って総枚数も5枚程度で、自信のある超大企業などは、「藁半紙にガリ版刷りで作成した、メモのような財務諸表」を添付していたものである。
それがいつの間にか、連結財務諸表が中心となり、セグメント情報なども加えて、約6倍のボリュームに膨れ上がってしまい、体裁もりっぱなものになってしまったのである。さらに四半期決算制度の確立とともに、年4回に亘って作成・提出しなくてはならないのだ。
まあ会計ソフトなどの発達・充実により、決算短信を作成するためのデーター類が、自動的に有価証券報告書などに援用できるようになったこともあり、経理マンにとっても決算実務の中核的な存在になってしまったようである。
さらに決算短信は企業のHPにも掲載するため、もうかつての片手間的な作成もできないし、ミスも許されない。それにしても、偉くなってしまった『決算短信』様々だね。だから逆に言えば、もう『有価証券報告書』なんて必要ないのでは、と言いたくなってしまうのである。
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