経理・経理・経理マンの巣窟

大・中・小あらゆる企業で経理実務経験約40年の蔵研人が、本音で語る新感覚の読み物風の経理ノウハウブログです

役員面接に臨んだ日

2013-04-30 10:19:54 | たそがれ経理マン編

 それまでは中小・零細企業を渡り歩いたのだが、33歳になって初めて上場会社の面接に呼ばれることになった。私が面接を受けたその会社は、千代田区の外れにあり、戦前から残っているという三階建ての古い建物であった。
 あとから人事部長から聞いたのだが、会社訪問に訪れる学生の大半が、この古いオンボロな建物を見た途端にがっかりして帰ってしまうとのこと。だが私の感想は全く逆であった。これだけ年季の入った建物だということは、賃貸ではなくおそらく自前の土地なのであろう。と言うことは、高価な土地という莫大な含み資産を持っている優良会社ということになる。それならなんとしてもこの会社に入社したいものだと考えたのである。

 そこらへんが学生と社会人の価値観の違いだったのであろう。また時期的に学生たちの役員面接と私の役員面接日が重なったことが、私に幸運をもたらしてくれた。まず面接室に入室するときのドアのたたき方、そして入室後の挨拶の仕方などが、「学生たちとは全く違って整然としていて凛々しく逞しい、さすが社会人だ」と着席した瞬間に、面接官の会長から褒められてしまったのである。
 もう会長のその一言で、私の入社は決まってしまったようなものであった。あとはボロを出さずに、無事数分間の面接時間を消化すればよかった。

 ちなみにこの面接に立ち会ったのは、末席に座っている経理担当役員をはじめとして、会長・社長・副社長という、そうそうたるメンバーであった。経理担当役員とは、第二次面接で一度逢ったことがあり、そのときは同席した課長・係長と比べると、ずっとりっぱに見えたものだが、こうして会長・社長・副社長というこの会社の最高レベルのトップたちと比べると貧弱に見えるから不思議なものである。
 このお偉い三人組から受けた言葉は、30年以上経った今でもはっきり覚えている。会長は高卒で努力と誠実の塊のような人で、彼が居なければ営業部門は成り立たないと言われるほど、得意先の信頼を得ている人であった。また社長は二代目で若くして社長になったため、まだ世間知らずのボンボンなのだが、人柄がよく頭も良いので、銀行や得意先のトップに可愛がられていたようである。もう一人の副社長は、歴史にその名を刻まれている某政治家の孫であり、その政治力と膨大な人脈を生かして、それを会社経営と従業員管理に生かしている人であった。

 まず会長は、私が苦学をしていることや、若くして父親を亡くしていること、そして転職を重ねていることに対して、「若くしていろいろな苦労を重ね努力しているね」と褒めてくれた。また副社長は、私が税理士試験の三科目に合格していることに着目して、「これから残りの二科目にも合格して、是非税理士資格を取って欲しい」と励ましてくれた。
 ところが最後に社長が言ったのは「君は何度も会社を変わっているけれど、また辞めるようなことはないだろうね。」という疑心の言葉だけであった。それまで会長・副社長に好感を持たれていただけに、この社長の一言には一瞬ドキッとしたが、なんとか平然を装い凌ぎ切ったものである。油断大敵、面接では絶対に本性を見せてはいけない。それにしても三者三様、それぞれの特徴のある役員面接であった。
 数日後に人事部から合格の連絡があり、この会社に入社することが叶った。晴れて本社経理部に配属され、課長と一緒に挨拶回りをするときには、嬉しくて嬉しくて、まるで夢を見ているような気分であった。

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女性の管理職が少ない訳は

2013-04-22 11:42:44 | サラリーマンは魔術師


 安倍首相は、育休を3歳まで延長することと、役員に女性を一人以上登用することを上場企業に要請した。そのうえで20万人分の保育所を整え、5年後には待機児童ゼロを目指したいと述べたという。
 なかなか良いことであり、しかもスピードが速いのが安倍さんの特徴である。内閣支持率がグングン上昇しているのが分かるような気がする。このままいけば夏の参議院選挙は、自民党の超・大勝利で、民主党はほぼ絶滅すること間違いなしであろう。

 さていまここでは、選挙の話をしたいわけではない。話のテーマはなぜ日本では、女性の管理職が少な過ぎるのかということである。その最大原因は、出産と子育てという問題であることは、誰でも周知の事実であろう。だからこそ安倍さんが育休、役員、保育所の問題を改善しようとしているのである。まあ政治家の立場からすれば、まず根本的なインフラ整備から手を付けるのが定石だ。しかしそれだけでは、一般企業における女性の管理職は急増しないだろう。

 女性管理職の進出を阻んている根深い問題点のひとつとして、ここで何度かとりあげている『日本企業特有の残業』というシステムが、眼前に立ちふさがってくる。そのために子育てしながら働くことは出来ても、他の人と同じように毎日遅くまで会社に残っていられない。だから結局育て社員は、正社員であってもパート社員としてしか見られないのである。
 従ってどんなに能力があっても、パート社員が管理職や役員になれるはずもなく、出世できる一握りの女性は、未婚もしくは子供を作らない既婚女性に限定されてしまうだろう。まあ実務を全くやらない名ばかり役員なら、誰でも勤まると思うのだが…。ただ日本の企業では、多忙で一番辛い管理職を経験せずに、いきなりヒラからぶっ跳んで役員になれるはずもない。

 もう一つの問題点は、女性たち自身の中にあるような気がする。会社人間としてどっぷりと仕事に浸かってしまい、自分の自由な時間が失われるくらいなら出世などしたくないと考えている。嫌味な言い方をすれば、女性たちは会社の美味しい部分だけを享受しているような気がするのだ。もちろん会社人間ばかりを重視する企業ポリシーに問題があることは確実だとしても、辛い部分から逃げているだけでは、無責任とのそしりは免れ得ないだろう。この問題には「鶏が先か卵が先か」というような、矛盾した因果とジレンマが内在しているが、重大なテーマであることは間違いのない事実ではないだろうか。

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自分から希望して田舎へ転勤

2013-04-15 08:42:58 | たそがれ経理マン編

 静岡の片田舎にある工場へ転勤したのは36歳の年である。この転勤は会社都合というわけではなく、自ら望んで実現させた転勤だった。静岡の工場から本社へ転勤して、私の直属上司になった係長が、毎日のように静岡の良いところばかりを並べ立てるものだから、当時田舎暮らしに憧れていた私も、その気になってしまったのである。
 製造業なら、絶対に原価計算を覚えておく必要がある。いつか転勤するなら早いほうが良いと考え、転勤希望を人事部に提出し、車の免許を取得し、ことあるごとに課長をせっついて転勤を促していた。そしてとうとう本当に、希望通り静岡工場へ転勤となってしまったのである。

 本社と違って偉い人の少ない静岡工場での仕事は、それまで私が渡り歩いてきた中小企業とも共通する部分もあり、いろいろなことを任されて、ほぼ自分の思い通りの仕事が出来、かなり充実感を味わうことが出来た。だが私生活のほうは、憧れていたような田舎生活は少なく、すぐに退屈感を抱くようになってしまったのである。
 昔ながらの貸本屋が残っていたのは嬉しかったが、ビデオ一本借りるのに、車で往復一時間以上かかる町まで出なくてはならなかったし、レンタル料金も一本1500円もかかった。さらに社宅での閉鎖的で微妙な人間関係に、少なからずも心が疲弊し始めていた。

 本社から静岡に転勤して約三年経過し、田舎生活には飽きてきたのだが、工場経理の仕事は楽しかったし、まだまだ覚えることも残っていたので、神奈川にあるメイン工場への転勤を希望していたころである。ところが突然、本社の税務担当者が退職し、またまた本社へ呼び戻されることになってしまった。
 係長に昇進とのことだったが、もう少し工場経理を勉強したかった。もしかするともう工場へ戻ることはないかもしれない。嬉しくてたまらない半面、中途半端なまま工場経理を中退したような喪失感も拭えなかった。
 
 しかし家族は大喜びだ。それまでは巧みに静岡の方言を操っていた子供たちが、東京に戻ったその日から、なんとすんなり標準語に戻っていた。そうか子供たちも、いままで我慢して田舎の風習に従っていたのだな…。やっぱりなんだかんだ言っても、江戸っ子の私や、私の家族には東京が一番性に合っていたんだね。三年間という短い期間だったが、家族揃って田舎生活をしたのは、これが最初で最後になってしまった。そしてそれからの私は、田舎暮らしに憧れる気持ちを、完全に喪失してしまったのである。

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経理は残業をなくせない部署なのか

2013-04-08 14:18:33 | たそがれ経理マン編

 別稿『残業する人しない人』では、残業をする人にはいろいろなパターンがあることを述べた。私自身は基本的に残業が大嫌いで、上場会社に入社するまでは、ほとんど残業などしたことがなかった。だからまた残業する奴らは、無能力者か残業手当稼ぎの犯罪者なのだと勝手に決めつけていた。

 ところが上場会社の本社経理に配属されて、それが世間知らずの独断と偏見だったと思い知らされてしまった。上場会社の決算は重く長い、そしてもの凄いボリュームである。そして何よりも法的に納期と品質がこと細かく、バカみたいにしつこく細かく規定されているのだからたまったものではない。それがさらに年々厳しくなってきているのだから、むかっ腹が立ってくるどころか、全てをブン投げてしまいたくなってしまう。悲しいかな、これが上場会社の本社経理部の宿命であろう。

 だからと言って人事部が、この繁忙な決算期の仕事に合わせて人員を配置してくれるわけではない。結局は毎日毎日、超・深夜まで残業しなくては追いつかないのだ。もし上場会社の本社経理部で、決算時期に残業ゼロの会社があるとすれば、スーパー経理システムが配備されており、有能な経理マンを決算期に合わせて揃え、かつ監査法人の監査体制が万全である会社ということになるだろう。もしそうした会社が実在するならば、是非ご一報頂きその仕組みをお教え願いたいものである。

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長嶋茂雄の国民栄誉賞に拍手

2013-04-03 10:23:26 | 経済ニュース編

 プロ野球の長嶋茂雄氏と松井秀喜氏に国民栄誉賞が贈られることになった。でもなぜ今、長嶋なのか、長嶋は「記憶の人」で「記録の人」ではないと、その受賞を疑問視する若者もいる。それは長嶋の現役時代の活躍を、データーでしか知らないからであろう。
 確かに歴代の国民栄誉賞受賞者で、スポーツ選手たちをみると、王貞治をはじめとして、山下泰裕、千代の富士、高橋尚子、吉田沙保里など、そうそうたる大記録達成者が並んでいる。

 だが長嶋茂雄が残した痕跡は、単なるスポーツ選手としての活躍だけに終わってはいない。戦後の貧しい日本において、彼の存在そのものが、未来に向かって逞しく生きてゆこうとする日本人の「夢と希望の原動力」そのものだった。その果てしなき人気力については、オールスターファン投票で、入団から引退まで現役17年連続ファン投票1位という前人未到の大記録でも実証されている。
 ではなぜ当時、王、張本、野村などと比べて記録の上で下回る彼が、そこまで国民の人気を博し得たのか。それは彼のルックス、派手なプレー、なによりもファンを大切にする姿勢、そして肝心なところでファンの期待に応えるというカリスマ性のお蔭だったのではないだろうか。

 また巨人が勝ったか負けたかではなく、長嶋の成績はどうだったのかのほうが気になり、後楽園球場では、8回の裏に長嶋の打席が終わると半数近くの人が席を立つという異常な現象を巻き起こしていた。そして自分の息子に、長嶋と同じ「茂雄」という名前を付けた親も多かった。また第一次長嶋監督が解雇されたとき、読売新聞の購読を辞める人が後を絶たなかったという伝説もある。
 いずれにせよ彼の活躍は、長嶋のようになりたいと願う少年たちを急増させ、野球人口の大幅増加に大貢献したはずである。もっと言えば、長嶋茂雄がいなければ、プロ野球いや日本経済がここまで発展しなかったといっても過言ではないだろう。

 こうなると彼は単なるプロ野球選手ではなく、天が戦後の日本国民たちに与えた救世主だったのかもしれない。彼と同列とされる救世主には、力道山、美空ひばり、大鵬などがいる。力道山については、国民栄誉賞などまだなかった昭和38年に、暴力団組員に刺されて死亡しているため論外であるが、美空ひばりと大鵬については、その功績が称えられて死後に国民栄誉賞が与えられている。

 ただ美空ひばりも大鵬も死亡後に受賞しているため、本人たちの喜びの声は聴くことができなかった。だから長嶋も死亡後に国民栄誉賞を受賞するのだろうなと思っていた。ところが今回安倍首相の英断により、生前に受賞する運びとなり、長嶋茂雄信者たちにとっては実に喜ばしい限りである。
 巨人軍は永遠に不滅だと引退メッセージを残した長嶋茂雄。だが我々世代のおじさんたちには、長嶋茂雄こそ永遠に不滅の英雄であり、まさに自分自身の分身そのものなのではないだろうか。

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株主総会のお土産

2013-04-01 09:57:14 | ひとりごと

 株主総会は平日に都心で行われることが多い。このため普通のサラリーマンは会社を休んで出席しなくてはならない。従って会社の仕事上の関連があるか、余程興味のある議題でもない限り、総会に出席することはほとんどないだろう。
 だから総会に出席する株主は、年配の方や主婦が多いのである。だが定年退職者や主婦たちは、時間があっても通勤定期券がない。郊外の自宅から都心までの交通費も馬鹿にならないのである。電車賃にバス代を含めると、おおむね往復で1500円程度の出費になってしまうのだ。

 このあたりの細かい事情も考慮してか、株主総会に出席した株主には、心ばかりのお土産を配布する会社が多いようである。コンシューマー事業を営んでいれば、大体は自社の商品やサービスがお土産の対象となり、株主優待と同じようなものがお土産となる。またコンシューマー事業を営んでいない会社では、菓子類やプリペイドカードなど配布することが多い。
 
 各社のお土産相場は大体1000円程度である。もちろんこれでも、お土産なしの愛想のない会社に比べれば十分嬉しいのだが、そのお土産が欲しい品物とも限らないし、わざわざ半日潰してやって来ても交通費にも満たないのではちょっぴり悲しいよね。せめて2000円程度以上のお土産を用意してもらえないものだろうか。

 株主総会に出席する都度、いつもこんなケチ臭いことを考えていたのだが、去年出席した(株)東京ドームの総会では、一人約2500円相当のスパ ラクーア入場券を二枚もらって、幸福感に浸ったものである。逆に従来お土産に、好きな書籍を三冊も選ばせてくれていた(株)インプレスホールディングスが、去年から一冊配布に格下げしてしまったのには、死ぬほどがっかりしてしまったな。(笑)

 個人株主なんて、こんな些細なことで一喜一憂しているのだ。従って株主総会のお土産くらいは、もう少し太っ腹でバブリーな精神を貫いても良いと思うよ。結果的に企業の評判を高め、商品などの宣伝効果に繋がると考えれば、決して損にはならないはずである。などと手前味噌に考えている株主は私だけなのであろうか…。

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