大企業では、なぜか固定資産の管理と減価償却計算の担当を新人に任せている例が多い。固定資産の管理は、他の会計システムと分離し易く、パソコンのパッケージソフトを使う企業が多いからであろうか。それに現物とのチェックなどの雑務が伴うため、まだ文句の言えない新人に押し付けているのであろう。
だが固定資産管理には、税務をはじめとしていろいろな要素が絡んでおり、実はかなり重要な業務なのである。だから本来担当者の選択は、ベテランと新人の組み合わせとしなければならない。
ところが、超巨大企業を除いた大・中企業の大半が、新人一人に丸投げしているようである。従って大企業においても、一度固定資産管理について、じっくりと内部監査をして欲しい。きっとびっくりするような実態が浮かび上がってくるだろう。
周知の通り会計上の固定資産とは、企業が一年を超えて使用または保有する資産のことをいう。具体的には、土地・建物・構築物・機械設備・什器備品・車両運搬具などの有形固定資産と、工業所有権・借地権・営業権などの無形固定資産、及び投資有価証券などの投資等の総称である。
だがここでいう固定資産管理には、投資等は含めないことにする。投資等については、通常財務部門が管理することが多く、その性格が異なることから、ここでは分離して考えたいのだ。
さて固定資産管理と一口に言っても、その内容はかなり広範囲に亘る。ざっとまとめると次のようになるだろう。
①固定資産の取得・移動・廃棄記録と現物管理
②建設仮勘定の管理
③資本的支出と修繕費の区分判定
④減価償却計算(通常の減価償却、リース資産、一括償却資産、特別償却、圧縮記帳などがある)
⑤固定資産税のチェックと納付
⑥償却資産税の申告及び納付
⑦事業所税の資産割りの計算
⑧リース資産の管理
⑨減損会計
⑩研究開発費とソフトウェア会計
⑪資産除去債務
⑫賃貸等不動産の時価等の開示
かなり中身が濃いのが分かったであろう。またそれぞれが一冊の本になるほどのボリュームなのだから、固定資産管理の担当者は税務と会計の大ベテランでなくては勤まらない。そのうえ税務調査や会計監査でも、かなり精査される項目が多い。とてもじゃないが、新人任せに出来るはずがないのだ。
さて減価償却については、税法がかなり詳細に定めていたため、従来は会計も税法に従っていた。ところが会計ビッグバン以降は、微妙な食い違いが生じている。さらに今後は、第二次会計ビッグバンといえるIFRSの強制適用により、さらに会計と税務が乖離する可能性があるだろう。
固定資産管理の重要性について延々と述べてきたが、これらの大半は大企業に関連するものである。ことに⑧~⑫に関しては中小・零細企業には縁のない項目かもしれない。だがそれらを除いても、固定資産管理のボリュームは膨大である。
また減価償却には、中小企業だけを対象にした特例も多い。そして法的義務がなくとも、土地建物などの最新評価額は、中小企業にとっても重要な関心事である。
従って達人経理マンになるには、固定資産についての十分な知識の習得が必須であることは言うまでもない。
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