今回はちょっと自慢話になるかもしれないけれど、得るところもあるので我慢して読んでね。
もうだいぶ昔のことである。某上場企業に転職して3年間は本社勤務を続けていたが、製造業なので工場の現場を知ることが必須と考え、自ら志望して静岡県にある工場に転勤となった。当時この工場は約600名ほどの従業員を擁し、毎年一回各職場ごとにチームを組んで改善提案の発表会を行っていた。
この大会での改善提案の発表方法は、各職場で考え実行可能な職務の改善計画を模造紙一枚に図表にして描き、それを600名の前で分かり易く説明するというものである。まず全課長の前で予選を行い、それに合格したチームだけが食堂で発表するという手順であった。
私が所属する経理課は、課長と私以外は女性ばかりなので、畢竟私が中心になってこの改善提案に取り組まなくてはならなかった。初めのうちは本社から来たばかりでよく分からないと辞退したのだが、課長をはじめとして誰も許してはくれない。
それで仕方なく、今現在実際に取り組んでいる「パソコンを用いた予算制度の構築」をそのまま提案として発表することにした。まだ当時はNECのPC98が出回って間もないころで、フロッピーディスクを中心に仕事をしている時代で、ハードディスクはわずか20Mのものが50万円位していた記憶がある。そしてまだホストコンピューター全盛で、パソコンは半分おもちゃみたいな存在だった。
そんな中で私の考えた「パソコンを用いた予算制度の構築」とは、営業が工場の製造計画課で作る「機種別の製造計画データー」をパソコンに落として、販売計画データーを作成し、それを経理課へフロッピーで渡すというものであった。経理はこの販売計画データーの横に原価欄を作り、そこに標準材料費を入力する。さらに各部門からフロッピーで吸い上げた経費データーと、製造予定工数をもとにして構築した労務費を集約して、工場単位の予算損益計算書を作成するというフローであった。
またその過程で作成した部門別の労務費経費をパソコンからホストのほうへ転送できるようにし、毎月の予実管理表の作成をスムーズに行うようにした。これによりそれまで二重に作成していたデーターが一元化した。さらにそのシステムを自分の所属する静岡工場だけではなく、全国にある工場および関連企業にも適用させたのだ。これによって猛烈な工数削減が可能となり、それまでの深夜残業が嘘のよう無くなり、やがて経理課では全員残業ゼロ状態を実現することになったのである。
これらのことを全て一枚の模造紙で発表するのはだいぶ厳しかった。そこで私が考えたのは二枚の模造紙を使い、一枚には現状の手作業の図表を、もう一枚には改善後のシステム図表を書いた。だがあくまで一枚の模造紙という条件を守るため、この二枚を重ねて壁に貼り付けて、はじめに現在の手作業図表を説明した後、その一枚を引きちぎりその下に隠された改善後のシステムの図表を表出させて説明するという手法を用いたのである。
もちろん予選のときはこの手法は用いず、本番のときにいきなりこの方法を取ったため、一枚目の模造紙を引きちぎったとき、600名のどよめきが会場の食堂にこだましたのを今でもはっきり覚えている。
後から聞いた話であるが、審査のときに工場次長から、二枚の模造紙を使ったのは反則だから失格にすべきとの猛烈な抗議があったという。この工場次長には、私が本社から転勤になった日に挨拶をしたら、「本社から来たやつなんかには、工場は勤まらないぞ」といきなり嫌味を言われたことを記憶している。だがパソコンに興味を持っていた当時の工場長の鶴の一声でセーフとなり、しかも優勝してしまったのである。当時は間接部門は良くても3位くらいで、いつも製造現場のチームばかりが優勝していたので、工場中で大騒ぎとなり、本社発行の社内報に優勝カップを持った写真も掲載された。そしていただいた優勝賞金は、チーム全員で食したフランス料理のコース料金として貢献したのである。
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