経理・経理・経理マンの巣窟

大・中・小あらゆる企業で経理実務経験約40年の蔵研人が、本音で語る新感覚の読み物風の経理ノウハウブログです

社外役員の必要性

2015-06-29 20:11:57 | 崩壊する上場企業の経理

 また株主総会の季節となり、各社から株主総会招集通知書が送付されてくる。その中で役員の選任などの議案を見ると、かなり年配の候補者が目につくことが多くなった。よくみるとそれらのほとんどが社外役員であることが多い。
 さてここで言う社外役員とは、会社役員のうち、一定の要件を満たした社外取締役及び社外監査役を言う。このうち社外監査役については、平成5年の商法改正で導入されているが、一方社外取締役のほうはだいぶ遅れて平成14年になっている。だが社外取締役制度については、経団連の反対などにより強制力のない貧弱な制度でお茶を濁していたに過ぎない。

 ところが最近になって、株主の権利や取締役会の役割、役員報酬のあり方など、上場企業が守るべき行動規範を網羅させる「コーポレートガバナンス・コード」の導入が国際的な気運となってきた。またアベノミクス第三の矢の重要施策の一つとして、コーポレートガバナンス改革が挙げられており、この「コーポレートガバナンス・コード」の原案が凄まじいスピードで取りまとめられていると言うのだ。

 そんな背景もあってか、今年の株主総会では、新たに社外取締役を選任する企業が、昨年の約2倍と大幅に増えたらしい。もちろん外部の斬新な目で経営を見直して、不採算事業の撤退など、従来から放置されてきた懸案に大鉈を振るい、会社のリスクを排除し収益改善に繋げられれば言うことはない。
 理屈の上では良いことだらけの『外人さん思想』なのだが、結局は運用面で上手くいかないだろう。つまりこの社外役員たちをどこから引っ張ってくるのか、そして彼等の報酬は誰が支払うのかと言う二点のため、今までもほとんど理屈通りには機能していないからである。

 そもそも監査役の本来の最重要業務は、「取締役の業務監査」であるはずなのに、ほとんどの企業の監査役がそれをほとんど放置したまま、公認会計士の会計監査のお邪魔虫的な存在になり下がっている。それに社外監査役は何にも異を唱えないし、同調しているだけではないだろうか。
 結局監査役では役に立たないと見切って、今度は社外取締役ならどうだ!と大声を荒げたのだ。しかしただ社外取締役と名前が変わるだけで、社外監査役同様、単なる員数合わせで無駄な費用が増えるだけであろう。

 なぜ私がこのようなことを断言するのか。それは先に述べたとおり、社外役員の選任が企業のトップなどにより行われ、取引先やトップの知り合いなどから選ばれているからだ。またそれらの社外役員の報酬も企業から支払われるし、トップの判断でクビにすることも出来るのだから、社内役員と何ら変わりがないではないか。

 もし本気で社外役員制度を導入しようとするなら、まず国や東証などが中心となり『社外役員協会』なる機関を創立し、そこに一定の条件を満たす実力者たちを登録する。そしてそこに登録された優秀な人材を、協会がランダムに企業へ派遣するのだ。もちろん彼等の報酬はその協会から支払われる。またその報酬の原資は、上場企業から会費として徴収することにすればよい。こうした組織を創って運用すれば、社外役員たちもきっと本来の職務をまっとう出来るはずである。

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習うより慣れよ

2015-06-25 10:05:43 | 一口メモ

 「習うより慣れよ」とは、人に教えてもらうよりも、自分自身で実際に経験したほうが身につくということわざである。
 身近なところでは、車の運転が一番当てはまっている。つまり教本を読んだり講習を何度受けても、思うように運転技術が上達しなかったが、実際に何度も運転しているうちに、見違えるように運転が上手くなったという話が多いからである。もちろん「文武両道」が如く、勉強(習う)と経験(慣れ)の双方を極めることが最善であることは言うまでもない。

 また車の運転同様、このことわざはパソコンの操作にもピタリと当てはまる。おじさんたちが、いくら教えられても端末機の操作が出来ないのも、女性や若者たちのように毎日のように操作していないからである。
 もちろんおじさんたちが年を取って機敏さを失い、記憶力が低下したことは否めないものの、決して能力がなくてやる気がないわけではない。そのあたりは全国のおじさんを代表して弁明しておきたい(笑)。

 さてパソコンと言えば、マイクロソフトが2012年10月頃に正式リリースしたOSのWindows 8は、スマホやタブレットの普及に対応しようとしたため、外観及び操作性が従来のバージョンから大きく飛躍してしまった。
 そのため使い辛いという不評の嵐が吹き荒れて、発売より僅か1年後に、その改良版であるWindows 8.1 の提供を開始せざるを得ない状況に追い込まれてしまったのである。
 ところがWindows 8.1に改良しても、まだまだユーザーたちの不評は納まらなかったのだろうか。なんと本年7月29日にWindows 9を飛び越して、今度はいきなり Windows 10がリリースされる予定だと言うのだ。

 この新しいOS Windows 10がどのようなものなのかは未だ良く判らないし、実際に使ってみないことには何とも言えない。だがせっかく1年以上かけてやっと慣れてきた Windows 8.1なのに、またまた新しいOSの操作に「習い慣れる」時間を失ってしまうのが勿体ない気分である。だからしばらくは Windows 10にバージョンアップせず、 Windows 8.1のままで静観していようかな。 

 

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ひとが生きる意味とは

2015-06-15 11:19:54 | 一口メモ

  私は、いや人間は一体何のために生きているのだろうか・・・。誰でも若かりし日に、一度は考えたことのある疑問である。そしてそのうちいろいろ忙しくなって、そんな抽象的で経済価値のない疑問は忘れ去られてしまう。
 私自身も現役時代はバタバタと過ぎ行く日々に追われ、毒にも薬にもならないような書生的思考は封印し続けた。だがいつの間にか、今まで生きていた時間より、これから生きる時間のほうが圧倒的に少なくなってしまった。
 さらに定年を過ぎて経理マンを引退し、「労働=金銭収入」という概念が消失した頃、やっと「ひとが生きる意味」がぼんやりと見えるようになった気がするのである。

 大昔、ひとがまだ単細胞生物だった頃。引き続き生きるために、細胞分裂を行って個体の増殖を行っていた。その後多細胞生物に進化したが、個体の増殖を行うためには、受精と言う行為が絶対条件となってしまったのである。
 そして親から子へDNAが引き継がれてゆく。だがその子供たちは、単細胞生物の細胞分裂のようなクローン的存在ではない。またことに高い知能と知識を有する人間は、それらの知識を残された者たちに伝承することにより、とどめない進化を続けているのである。

 つまりひとが生きる意味とは、自分が死ぬまでの間に、かつて苦労して得た知識・技術・ノウハウなどを、自分以外の者に伝えたり引き継いで行くことなのである。もちろん「労働=金銭収入」の過程においても、それは十分に果たされるし、ボランティアという形をとることもあるだろう。
 そうして個体は死んでも、知識や技能等という形で、ひとは永遠に生きてゆくのである。だから死ぬまでやりがいのある仕事を続けられるひとこそ、人間として一番幸せなひとなのだと言えるだろう。
 だがそんな幸運なひとはほんの一握りに過ぎない。だからこそ定年後は、金のためにだけ働くのではなく、これまで得たものを自分以外の者に分け与えられる自覚と環境づくりが必要なのである。

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工事進行基準の恐ろしさ

2015-06-08 17:54:33 | 崩壊する上場企業の経理

 連日のようにマスコミで不適切会計を報道されている天下の『東芝』さん。一体何があったのか調べてみると、インフラ事業の会計処理に適用される「工事進行基準」の取り扱いに問題があったようである。さて一般の方には耳慣れない「工事進行基準」とは、一体どのような会計処理方法なのだろうか。
 そもそも1年超の長期工事等が多い建設業では、昔から会計・税務ともども工事の進行度合いに応じた収益の計上方法が認められていた。そう、認められていたという表現でもわかる通り、あくまでも原則は工事の完成時に収益を計上する「工事完成基準」が原則であり、継続運用を前提に「工事進行基準」も認められていたに過ぎなかったのだ。

 ところが会計ビックバンによる黒船来襲により、国際会計基準に従わざる得なくなり、2009年4月1日以降は土木、建築、造船、大型機械装置の製造、受託ソフトウェア開発など工事収益総額、工事原価総額、決算日における進捗度の3点が信頼性を持って見積れる長期請負工事では、工事完成基準ではなく工事進行基準が強制適用となってしまったのである。
 さてこの工事進行基準とは、工事の進捗度合いにより収益を計上する基準のことをいい、収益の具体的な計算方法を簡単に記すと次の通りとなる。
工事進捗度合=累計原価/見積総原価
当期収益=契約価額(工事収益総額)×工事進捗度合 - 前期までの収益計上額

 つまり、当期収益計上の鍵となる工事進捗割合の計算に「見積総原価」を使用しているところがミソなのである。見積もりとはあくまでも現時点での予測であり、計算違いもあれば資材費の変動もあるし、もっと言えば恣意的に数値を捏造することもできるのだ。
 実は東芝の不適切会計も、その見積総原価の見積りに問題があったと発表されている。結局のところは、強引な理屈ばかりで武装しているものの、実践的な弱さが目立つ「欧米会計の限界」を露呈してしまったのではないだろうか。

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