経理・経理・経理マンの巣窟

大・中・小あらゆる企業で経理実務経験約40年の蔵研人が、本音で語る新感覚の読み物風の経理ノウハウブログです

残業する人しない人

2013-01-29 12:07:32 | サラリーマンは魔術師

  誰でも残業せざるを得ない決算などの季節的繁忙期は別として、毎日当然のように残業する人々がいる。そしてこれらの人々はいつも同じメンバーであることが多い。つまり残業をする人には、ある一定の法則のようなものが存在すると考えられるのである。これを長年の経験を踏まえた上で、独断と偏見を織り込んでいくつかのパターンに分類してみた。

1.早く帰っても特に何もやることのない人
 はじめからいつも一時間程度の残業をして、ちょうど夕食というタイミングに帰宅できるパターンを作っている。だから用事やイベントがある日は、即行・定時で帰ることができるのである。残業稼ぎという一種の不正だ。

2.他人の目ばかり気にしている人
 とっくに自分の仕事は終わっているのだが、周囲の人が帰らないので、なんとなく帰り難くて残っている。サービス残業という場合が多いが、これで残業代を請求していれば、上記と同様ある種の不正である。

3.人に仕事を任せられない人
 部下や同僚を信頼できない。あるいは自分の存在価値を担保しておきたいため、少しでも複雑な仕事は絶対に手放さないので、どうしても残業しなくてはならなくなる。こういう自己中な先輩や上司がいると、その部署の人材は育たない。

4.小心者で心配性の人
 どうでもいいような仕事でも、ミスを恐れて何度も何度も見直したり、くどいほど沢山の説明用補助資料を作るため、どんな仕事をしても時間がかかり過ぎる。悪気はないのだろうが、ある程度の年齢になっても仕事の重要度を判断できないようでは、ある意味無能力者と同じである。

5.無能力の人
 どうやって仕事を処理していいか分からないため、悩んだり、調べたり、人に聞いたりで時間を費やして、気が付くと深夜になっているというパターンか。この人の上司がフォローしたり、彼に適している職場を探してあげるべきである。

6.上記には該当しないが圧倒的に仕事の量が多い人
 厭な仕事を他人から押し付けられているのか、根本的に従業員数が少な過ぎるのか、いずれにしても上司や会社に問題があるようだ。上司と相談しても解決できないようなら、こんな会社には見切りをつけることも必要かもしれない。
 

 毎日残業ばかりしている人は、だいたい以上のようなパターンに分類されるのではないだろうか。いずれにしても困ったものであるが、いまだに残業することを美徳と考えている人がいることも悲しいね。少なくとも、残業するたびに自分の大切な人生を安売りしているのだということに気付いて欲しいものである。

 

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教師が駆け込み退職する時代

2013-01-26 11:10:11 | 経済ニュース編

 国家公務員の退職手当を減額する法改正に伴って、自治体職員の退職手当の引き下げが、全国で条例改正が進められている。だがその実施時期を年度途中に設定したため、警察官や教師などの公務員は、退職金が減額されるまえに、我も我もと辞職願いを提出しているという。
 もともと民間企業と比べて異常に高かった役人たちの退職金。これを是正するのは良いことだが、なぜ条例施行日を4月1日としなかったのだろうか。ある程度このような事態が起こることも、予想できたのではないのか。それに東京都のように途中退職者の退職金が減額されるような仕組みになっていれば、このような事態は起こらなかった筈である。余りにもお手盛りでいい加減な自治体が多過ぎるのではないだろうか。

 しかしそれにも増して、市民生活を守る警官や、子供たちを教育する立場の教員たちが、目先の小金に目がくらんで、その責任を途中で放棄してしまうのは如何なものだろうか。ある意味で彼等の気持ちも分からないではないが、そもそも公務員の給与は市民の税金から支払われていることを忘れないで欲しい。これでは一般企業の営業マンが、顧客から集金だけして、商品を届けないままトンズラするのと変りがないではないか。
 まあいずれにせよ、これが若者たちだけなら、ある程度は情状酌量の余地もあるのだが、警察署長や中学校の教頭、そして定年直前の大ベテランなどの、責任ある立場の大人達も含まれているのである。ああ情ないというより、悲しくてたまらない。

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若者よ囲碁をやってみようよ

2013-01-24 13:31:53 | ひとりごと

 昔は政治家、医者、企業役員など、いわゆるエライ人達の趣味は、ゴルフと囲碁が常道であった。だがゴルフはバブル崩壊で接待費が使えなくなり、逆に廉価化・大衆化・スポーツ化の道を辿り、金持ちのステータスにはならなくなってしまった。一方の囲碁のほうは、昔は昼休みになると将棋を指したり囲碁を打つ人をよく見かけたものであるが、いつの間にかそうした人たちの姿を見ることは皆無になってしまった。そもそも現代では、囲碁というゲーム自体を知っている若者が、ほとんど居なくなってしまったという悲しい状況に陥っているのである。

 一時期マンガ『ヒカルの碁』の大ヒットにより、子供たちの中で囲碁ブームが起こり、最年少五冠王を達成した井山裕太本因坊を誕生させたきっかけになっている。だがマンガ終了後は、子供たちの囲碁熱もあっという間に醒めてしまったようだ。そして誰も囲碁のイの字も言わなくなり、囲碁をするのは定年後の暇な老人たちだけというイメージだけが一人歩きしている。

 ところが最近、女性向けのフリーペーパー『碁的 -GOTEKI-』のヒットや、囲碁バーなどのお洒落な居酒屋によって、ファッションとして囲碁に興味を持ち始めた囲碁ガールたちが登場している。また学童保育などで、頭の体操にとても役立つということで、年配のボランティア指導員たちが、子供たちに囲碁を教え始めているという。こんな活動がじわじわと実を結び始め、いままで囲碁を知らなかった女性や子供たちにも囲碁の楽しさが浸透し始めているようである。

 考えてみれば、囲碁は平安時代からの日本の伝統文化であり、右脳の発達を促して大局的な戦略思考を培うことの出来る貴重なゲームである。そして碁石と碁盤さえあれば、老若男女誰でもどこでも遊べる、お金のかからない娯楽でもあるのだ。逆に言えば、なぜこんな素晴らしいゲームが今まで忘れ去られていたのか不思議なくらいである。

 現在日本の国技だった大相撲が、外人達に凌駕されてしまったように、囲碁も韓国と中国には全く歯が立たなくなってしまった。これは日本人のハングリー精神が欠如しただけではなく、圧倒的な囲碁人口の低下と、マスコミの扱い方の低下に起因しているのてはないだろうか。韓国では囲碁の国際棋戦で優勝すると、一般紙の一面トップ扱いとなり、国民的な英雄となるらしい。そして子供たちに対する囲碁教育施設も充実しているという。
 これでは、日本が勝てなくなるはずである。囲碁は先に述べたように、本当にためになる楽しいゲームである。そこで日本がまた世界のトップに戻るよう、若い人たちには是非、囲碁を覚えて楽しんでもらいたいものである。

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65歳雇用時代が到来する

2013-01-21 15:38:58 | 経済ニュース編

  もちろん今でも定年後の再雇用制度はあるのだが、それは暫定的に64歳までの再雇用を促進奨励する制度であり、人事考課の悪い従業員は再雇用されない場合もあったのだ。ところが今年4月には、いよいよ改正高年齢者雇用安定法が正式施行され、企業は希望者全員を再雇用しなければならなくなるのである。

 この改正新制度による企業の人件費負担は、かなり膨大な金額になると予測されている。そのため従来どおりの旧態然とした人事制度では、企業の存続そのものが脅かされかねない。従って今後企業側では、かなり思い切った人事政策に切り替えるに違いない。
 もちろん再雇用者の年収ダウンは当然で、年金よりちょっと良い金額である300万円位がターゲットになるだろう。しかしながら実は、本当の問題は人件費の額ではなく、溢れる再雇用者達に、一体どんな仕事をさせるかという事なのである。今までのように何もしない評論家や窓際族集団として放置しておく余裕はないのだ。

 従ってもう年功序列とか、高齢者のプライドを遵守する環境を維持することは難しくなるだろう。昨日まで部長であろうと上司であろうと、年収に見合った労働力を提供してもらわなくては、企業が生き残れない時代に突入してしまったのだ。
 だからといって、技術マンや営業マンはいいとしても、今まで会議とハンコ押ししかしたことのないプライドだけが高い事務系のおじさん達に、一体何が出来るのだろうか。ことに頻繁に変化するOAには絶対についてゆけないだろう。これはまさに彼等にとっては地獄の到来であるが、そんな彼等に出来る仕事を見つけなくてはならない人事部にとっても、同様に地獄の幕開けなのである。

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PLから法人税等をなくしてしまえ

2013-01-17 14:15:54 | 崩壊する上場企業の経理

 そもそも日本の古い企業会計原則では、法人税等のIncome Taxを、株主配当金などと同様に「利益処分項目」のひとつと考えていた。従って当期分の法人税等を費用としてPLに計上することはなかったのである。

 ところが昭和38年4月に新たに商法計算書類規則が制定され、当期の所得に対する法人税は、期末日現在すでに納税義務が発生しており、その納付期限も二ヶ月以内であるところから、これを貸借対照表の流動負債として計上し、かつ損益計算書の費用として計上するよう義務付けられたのである。

 これ以来、法人税等は費用としてPLに計上され、それを控除した後の金額が当期利益として認識されるようになった訳である。また米国では早くからこれを費用として処理していたため、もはや国際的にもこの処理が定着してしまい、法人税等を費用処理することに異を唱える学者はいなくなってしまった。

 しかしながら、本当にこれで良いのだろうか・・・。企業側で全く調整出来ない税金という支出を費用と考えていいのか、また税法基準で計算された法人税等を費用計上するため、会計との期間的なギャップが生じる。そしてそれをフォローするために税効果会計を運用し、訳の分からん繰延税金資産などを発生させるという悪循環を産んでしまった。

 株主総会重視だった旧商法と異なり、現在の会社法では、かなり柔軟に会社側で利益処分が行えるようになっている。そのため利益処分案が無くなり、株主資本等変動計算書に変わっているのだから、法人税等はこの株主資本等変動計算書の中で、剰余金の減少項目として表示したらどうであろうか。むろん期末に剰余金を流動負債の未払法人税等へ振り替える仕訳が必要なのは言うまでもない。

 こうすることにより、PLから法人税等の費用項目は消滅し、税効果会計と言ういかがわしい制度も不要となる。さらには当期利益が税引前利益と一致することになり、経営者の果たした真の功績が評価し易くなるではないか。そもそも企業努力で調整出来ない税金を、経営者の責任対象にすること自体がナンセンスだったのである。さらには、法人税等が経営責任から除外されれば、法人税等の税率が高いの低いのといった議論も影を潜めることになり、国側としても減税に頭を悩ますこともなくなるであろう。
 従って「PLから法人税等をなくす」ということは、こんなに良いことだらけの正しい会計処理なのである。ただもはや日本単独では、抜本的な会計処理方法の変更が出来ないという現実が横たわっているのが悲しい。だが国際的にみても、これだけのメリットのある会計処理への変更をしないというのは、大いなる世界的損失ではないだろうか。

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不思議なことを不思議と感じよう

2013-01-14 10:55:25 | 経済ニュース編

 衆議院選挙で自民党が圧勝し、「安倍ノミクス」が発動された途端に、日経平均が上昇しはじめ、為替が円安方向に向かって急速に加速し始めている。なかなか良いことではないか。ただその表現方法に疑問があると言いたい。どうも日本人はお人好しなのか、どんな不思議なことでも、慣れてしまうと当たり前のことになってしまうようである。

 日経平均が上昇したのは間違いないが、今までが異常に低過ぎただけではないだろうか。このたびの世界不況の原因を創り、日本よりずっと景気の悪かった米国の株価はそれほど下がらなかったのに、日本の株ばかりがどんどん下がり続けていたことのほうが不思議だったのである。

 また為替についても、日本経済が悪化し、日本株がそれほど下がり続けていたのに、なぜ円だけが上昇し続けていたのだろうか。これも経済原理に反比例した不思議な現象であった。一説には某大国が大量にドルを売り、円を買い続けて自国通貨を有利に導いていたという噂もあるが・・・。
 いずれにせよ、日本株と円については、不思議状態を脱却して正常に動き始めたというべきなのである。ざっくりだが、日経平均は2万円、為替は1ドル100円が正常値なのではないだろうか。

 もうひとつの不思議はガソリン価格である。今朝私のケータイに、会員登録しているガソリンスタンドから「為替が円安に振れているため、近々大幅なガソリン値上げがあります。」というメールが届いた。もちろん石油は全面的に輸入している訳だから、円安になれば価格が上昇するのは当たり前なのだが、なぜか円高の時にはほとんど値下げしていなかったじゃないの。そのときガッチリ溜め込んだ利益は一体どうしちゃったのだろうか。都合が悪いときにだけ、為替を利用して値上げする石油業界の卑怯な手口には、もう呆れてモノも言えないね。もっともっと早く電気自動車時代にならないのだろうか。

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証憑類だけから、決算書を創る税理士たち

2013-01-12 13:36:12 | たそがれ経理マン編

 大手税理士法人や国税局天下り税理士は、上場会社などの大企業を顧問先に持つことが多いが、難しい国家試験を突破して自力で個人開業した普通の税理士たちの顧問先は、そのほとんどが零細企業と中小企業である。従ってその中には、事務員の全く存在しない零細顧問先もあり、そのほとんどの事務を税理士事務所で行っていることも少なくない。

 過去に私が担当していたあるおそば屋さんも、そんな零細顧問先の一つだった。まず月初になったら、ビニール袋に入った雑多なレシートと請求書類を回収するところから始る。それを事務所に持ち帰って、伝票起票するのであるが、この中には家庭で購入したスーパーのレシートも沢山混入しているので、それらしきものをピックアップして集計する。そしてその合計額を、とりあえず事業主に対する仮払金として処理しておくのである。

 売上はそのほとんどが現金なので、レジシートを集計した合計額をその日の売上高とし、たまにある掛売りについては、入金時にレジ入力してもらい、入金時に売上として処理した。
 一方仕入れのほうは、現金だけではなく掛けが多いため、業者の請求書に基づいて毎月買掛金を計上し、発生主義で仕入れ計上を行っていた。
 また毎月末従業員数(家族従業員を含む)に、平均的な賄い金額(仕入原価額)と営業日数を乗じた金額を、「賄費」として「仕入高」より振り替え、税務署が着目する売上利益率が適正になるよう調整処理を怠らなかった。

 ビニール袋に入ったレシート類の支払いは、ほとんどが現金であったが、当座預金から支払われるものも混在している。これを見分けるのは、小切手帳の耳と銀行が発行する当座照合表を見るしかない。この作業が結構面倒で時間も掛かったのだが、重要な作業なので仕方がないのだ。

 こうして現金と預金を分離して会計伝票を作成して行くのである。預金のほうは通帳や残高証明書などがあるので、隠し預金がない限りは、基本的に記帳漏れは発生しない。だが現金のほうは、顧問先で「現金出納帳」を記帳していないため、当然ながら真の残高は全くの不明だ。場合によってはもの凄い金額が残高になったり、マイナスの残高になったりする。
 このときは、過剰残高なら事業主に対する仮払金とし出金伝票を切り、逆にマイナスの場合は、事業主からの仮払金の返済または仮受金として入金伝票を作成する。これで現金残高は常に適正な金額となるのである。そしてもし期末になってもこの仮払金や仮受金の残高が一定額以上残っていれば、事業主に対する貸付金、または借入金に振り替えて所定の利息を設定することになる。

 まあこんな調整を行いながら、税理士達は伝票を作り、帳簿を作り、試算表を作り、なんとか決算書を創って、最終的には税務申告書を作成する訳である。いずれにせよ、誰が考えたのか分からないが、書籍には絶対に書いていない決算書の創り方を実行しているのである。

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不祥事と苦いあと始末

2013-01-10 10:58:33 | たそがれ経理マン編

  経理マン生活約40年。当然いろいろな事があったが、いつまでも心に引っ掛かっている事件が2つある。どちらも不正に絡む問題で、仕事とはいえ私の指摘により、二つの命がこの世から消滅してしまったのだ

 ひとつはある地方の弱小営業所での話である。そこには所長と事務の女性の二人しかいなかった。所長は出張が多いため、女性が銀行印を預かり、現預金は彼女の思うままだったのである。始めのうちは、数千円をチョイ借りして、数日後に返金していたらしい。そのうち数千円が数万円となり、返金時期もズレズレになってしまったらしい。
 決算期末を過ぎても、この営業所から銀行の残高証明書が送られてこない。余りに遅いので、私の部下にそのことを促してみた。ところが気の弱い部下は、その弱小営業所の女性事務員が怖くて督促出来ない様子。
 仕方がないので、当時課長だった私が、直接電話して注意することにした。するとその女性事務員は、なんだかんだと言い訳ばかりする。腹が立ったので、明日所長が戻ったら電話するように命じて電話を切った。このときは、まさかこの女性事務員が会社の金を横領しているとは、つゆほども思っていなかったのである。

 翌日になっても所長から電話がないので、こちらから電話をかけると、すぐに所長が出た。かの女性事務員が無断欠勤しているというのだ。その時点でも、まだ誰もその女性事務員を疑っていなかった。だが翌日も無断欠勤が続き、どうやっても連絡がとれない。この段になって、とうとう銀行預金残高が、約1干万円不足していることが判明する。そして必死の探索が始まったのであった。
 しかしアパートにも実家にも友人のところにも、女性事務員の姿はなかったのである。私はすぐにその弱小営業所に飛び、帳簿類のチェックを行い、前後の状況を所長から聞きだした。所長の話しでは、最近になってその女性事務員に、妙な男からの電話が頻繁にあったという。山根という名前で東京からの遠距離電話らしいとのこと。

 婚期の遅れた女性事務員は、きっとこの男にそそのかされて、大金を貢いでしまったのだろう。当然警察にも届けたのだが、事件が発覚して2週間後に悲報が届いた。ある湖のほとりに佇むうらぶれたホテルの非常階段から、その女性事務員が飛び降り自殺をしたというのだ。
 私は愕然となり、自分のせいで彼女を死なせてしまったと思い、後悔の念が荒波のごとく押し寄せてきた。直接彼女に電話しないで、所長が戻ってから、所長に注意すればよかったのかもしれない。
 私と所長が率先して、始末書を提出したため、経理担当役員と人事担当役員も、始末書を書かざるを得なかった。管理不十分で、会社に1千万円の損失を与えてしまったのだから当然だろう。
 だが皮肉なことに、彼女の死によってそれらの始末書は、破棄されることになる。彼女自信が掛けていた生命保険金を、両親が損害賠償に当ててくれたからである。
 もし彼女が生きたまま逮捕されていたら、とても弁償出来ないし、両親にも返済能力はなかった。山根という男が手引きしたとしても、東京の人間では、なかなか見つからないだろう。
 例え見つけても、手元に金など持っているはずがない。多分バクチですっているか借金の返済にあてているのがオチである。
 それにしても、つまらない男の欲望のハケ口と、尊い命を引換えにした彼女の人生とは一体何だったのだろうか。あれから20年経った今でも、彼女の悲痛な叫びが耳から離れない。

 もうひとつの事件は、前述の横領事件から約10年後に起こった。今度の犯人もやはり従業員だが、50を過ぎた中年男性であった。今度は会社の金というよりは、全従業員からの預かり金といったほうが良いだろう。この不正についても、私が監事として監査を行い発見したのである。原因はやはりバクチの後始末のためだった。
 女性の場合と違うのは、自分自身のバクチが原因ということである。この男は社内でも有名になるほど、人の好い男であった。だから弱いくせに麻雀に誘われても断れない。
 こんな人間は勝負事には不向きだ。だから絶対勝てっこないのである。それで負け金を払うために、今度は競馬で大穴ばかりを狙う。やはり勝てないので、サラ金から金を借りる。そんな余裕のない状態では、ますます勝てない。それでまたサラ金へと悪循環が続く。

 それでつい自分が管理している他人の金に手をつけてしまった。最初はチョイ借りのつもりが、雪ダルマ方式に大きくなる。これもよくある動機である。このときは二度目なので、初めから彼を疑って、直接吐露させたのだが、またしても自殺するとは、全く考えてもいなかった。
 横領の事実が発覚した翌日、彼も前例の女性事務員同様、突然姿を消してしまったのである。あとで判ったのだが、親戚や友人を尋ねて歩いて無心して周ったらしい。だが誰も急に大金を貸してくれるはずがない。力つきた彼は、夜遅く自宅に帰って首を吊ったという。

 この話しをすること自体が辛いし、思い出すたびに気分が滅入ってしまうのだ。またこの後始末についての会社側の対応も楽しいものではなかった。だからこの話については、これで勘弁してもらいたい。
 事実は小説より奇なりとは、よく言ったものである。自殺に至るまでの二人の心情は、一体いかばかりであったろうか。仕事とはいえ、経理マンの辛く悲しい存在をつくづく再認識した出来事であった。もうこんな経験は二度としたくない。

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充実した仕事をやりたい

2013-01-07 16:24:09 | たそがれ経理マン編

 私が税理士事務所に勤務していた頃で、まだバブルも発生していなかった時代のことである。 当時はどこの税理士事務所でも、顧問先を一人で20社以上担当していても、給料はたった3万円程度だった。普通の企業に勤めれば、少なくとも10万円以上の給料が保障されていたのだが、個人経営で保守的な税理士事務所では、まだ徒弟制度が残っており、「仕事を教えてやっている」という考え方があったため、番頭さん以外は雀の涙のような給料だったのである。だから同じ事務所に3年以上留まっている人は少なく、素早く税理士資格を勝ちとって独立するか、税理士業を諦めて一般企業に再就職する者が多かった。
 私は後者のほうであり、結婚した途端に妻の給与の三分の一という状況に我慢出来なくなり、一般企業に再就職した。そして転職後の賞与を含めた年収は、税理士事務所時代の約5倍に跳ね上がったのである。現在はこれほどの格差はないと思うが、国際的な大手税理士法人でない限り、普通の税理士事務所が従業員に支払える給料には限界があることは確かであろう。

 ただ仕事というものは、給料の良し悪しだけで選択するものではない。金太郎飴のようなサラリーマン人生で一生を終わるより、どうせやるなら、自分の知識や判断を生かせる充実した仕事に携わりたいものである。またそう考える人も大勢いることだろう。私もそんな人間の一人だったのだが、結婚して子供が大きくなるにつれて、仕事の中味よりも安定的な収入の確保に心が傾いてしまった。それまで個人・零細・中小企業を渡り歩いていたのだが、あるとき偶然に上場企業に入社することが叶い、それ以来30年近く上場企業だけを三回渡り歩くことになった。
 また若い時に転職を重ねてきた小さな会社のうち5社が倒産している。一方上場会社のほうは、一時的には希望退職などがあり、かなり厳しい状況には陥ったものの、その後なんとか復調しているし、生涯給料等の比較では、小さな会社の3倍以上だったのではないかと思う。

 それでも私の生涯の中で、一番充実した仕事が出来たのは、零細企業の一人経理の時代だった。難しい法令に拘束されることも無く、会計監査はないし税務調査もほとんどない。ただ銀行取引だけには気を遣ったが、誰にもとやかく言われずに、自分流の経理をやり遂げたと確信している。もちろん経理・総務・人事・企画・業務進捗管理・営業までも進んで行い、会社にかなりの利益をもたらし、それでも残業ゼロを貫き通した。このときまだ20代、まさにスーパー経理マンだったと自負しても許して貰えるだろう。

 上場会社時代にも、将来いつかはまた小さい会社に復帰して、あの頃のように活躍したいと密かに計画していたのだが、長い上場会社暮らしの中で牙を抜かれ、年齢を重ねて体力が衰えていくうち、その願いは叶えられないまま引退してしまった。
 さてどのような基準で仕事や会社を選ぶのか・・・といっても、人にはそれぞれの事情があったり、タイミングや運といった予期せぬ出来事も起こる。だから真直ぐなレールを敷いたような人生はあり得ない。いずれにせよ、自分が歩いてきた道は自分の意志でもあり、かつ人知には計り知れない「何か」に導かれた運命なのかもしれない。だから決して、後悔だけはしないことにしている。それにしても、充実した仕事が出来るのは、能力的にも体力的にも、さらには家庭の事情においても若いときだけなのかもしれない。従って若い人たちには、今こそやりたい仕事にチャレンジしてみなさいとアドバイスしたいのである。

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リースバック取引の取扱いについて(2/2)

2013-01-04 11:44:20 | 達人経理マンへの道

前回からの続きである。

4.消費税法上の取扱い
 リース資産の所在地が国内にある場合には課税、海外の場合は不課税取引となる。但し資産の所在場所を変更した場合には、変更した契約書の中で所在場所を特定しない限り、当初の所在場所にて課税判定をすることになる。
 リース取引全般の実質的判定
(1)賃貸借取引に該当する場合(オペレーションリース等、総額300万円以下の少額リース含む)
 毎月の支払リース料を課税仕入とする
(2)売買取引に該当する場合 (総額300万円超の所有権移転外ファイナンス取引など)
 リース資産の引渡し時に課税仕入を行ったものとして取り扱う
 契約書で支払利子や保険料の額が明示してある場合を除き、利息相当額を支払利息と処理しても消費税上は課税仕入となる
(3)金融取引に該当する場合
 リース料相当額を借入元本返済と金利とに分類するため、元本相当は不課税・金利部分は非課税となる

5.外形標準課税上の取扱い
1)賃貸借取引に該当する場合(オペレーションリース等、総額300万円以下の少額リース含む)
 毎月の支払リース料が付加価値割の「賃借料」に該当する
(2)売買取引に該当する場合 (総額300万円超の所有権移転外ファイナンス取引など)
 利息相当額を支払利息と区分処理している場合には、その部分については付加価値割の「支払利息」となる
(3)金融取引に該当する場合
 リース料相当額中、金利相当部分は付加価値割の「支払利息」となる
※ 契約書に利息相当額の区分がない場合でも、会計処理において、合理的な見積もり金額により、リース資産の取得価額と利息相当額を区分し、会計処理に沿った法人税の取扱いにより利息相当額が区分され、損金の額又は益金の額に算入される場合には、支払利子又は受取利子に含める
※ リースバックの場合は、税務上金融取引に該当するか否かがポイントであり、判定後は上記(1)~(3)に従って判定する。

6.償却資産税上の取扱い
  原則として、申告義務は資産の所有者であるリース会社にある。ただし、それが実質的に割賦販売であると認められる場合(リース期間終了後に譲渡されることになっている場合など)は、実質的に「所有権留保付割賦販売」となり、(所有権移転リース契約等)は、ユーザー(買主)が申告を行う必要がある。

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