【シリーズ:反日騒動2005(13下)】
(「上」の続き)
中国国内メディアは今回のヨーカ堂襲撃事件を報道していません(私の見落としかも知れませんけど)。「新華網」などは、
●歴史歪曲に抗議、湖南省長沙のスーパーが日本製品を全て撤去
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/03/content_2779719.htm
●「日本の常任理事国入り反対」に1万人署名の横断幕、河北省保定から北京へ
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/03/content_2779252.htm
●日本で研修中の中国人女性、日本人男性の同僚に殴打され告訴
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/03/content_2780196.htm
……など、逆に署名運動を支援するばかりか日貨排斥を煽り、また反日感情を高めんとするかのような記事を出してきています。
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政府、すなわち胡錦涛政権からの事件に関する意思表示もありません。
ちなみに、日貨排斥事件が起きて以来、胡錦涛政権は4回にわたりメッセージを発信しています。いずれも署名運動を肯定する一方で「日貨排斥は好ましくない」と冷静な対応を求めた趣旨のものです。重複を恐れずに並べてみますと、
(1)胡錦涛の広報紙たる『中国青年報』が掲載した記事。
●民族主義の興奮に民主の理性を覆い隠させてはならない
http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-03/29/content_1058075.htm
(2)3月31日に行われた外交部報道官による記者会見。
●日貨排斥事件に外交部「経済貿易問題を政治化することは望まない」
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-03/31/content_2769866.htm
(3)外交部報道官会見から日貨排斥などに関する部分だけ抽出し強調したバージョン。
●中国外交部報道官「中日間の経済貿易問題の政治化は望まない」
http://news.sohu.com/20050401/n224964208.shtml
(1)と(2)の間には『南方都市報』による記事があります。
●「日本の常任理事国入り」反対という激情には理性的な状況把握が必要だ
http://www.southcn.com/news/international/zhuanti/permanant/topnews/200503300310.htm
この記事も前に紹介しましたが、日本の常任理事国入りの可能性は高いとして糞青に「心の準備」を促し、一方で大々的な署名活動が政府の外交上の選択肢を減らしている可能性があると指摘したものです。……ただ、これは転載状況などからみても政府が書かせた記事というより、『南方都市報』独自の分析ではないかと思います。
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胡錦涛政権が行った現時点で最も新しい意思表示については、当ブログではまだ紹介していなかったと思います。
(4)外交のベテランによる最も踏み込んだ内容のメッセージ。
●呉建民氏「網民による日本の『常任入り反対』運動は理解できるが理性的な対応も必要」
http://www.chinanews.com.cn/news/2005/2005-04-01/26/558074.shtml
国連ジュネーブ事務所中国代表、駐仏中国大使などを歴任した呉建民氏が4月1日、取材に応じて語った内容が記事となって中国新聞社から配信されています。標題にある「網民」とはネットユーザーのことです。同氏は、
「国際社会の立場からみれば、日本が『国連のために何事かをなしたい』という意思表示をする姿勢は理解できる」
と述べ、
「中国の『網民』が日本の常任理事国入りに反対する心情は理解している。だが長期的にみて、根本的な国益に立った判断が行われることを国民は理性的に受け止めなければならない」
として、日本の常連理事国入りに中国政府が反対しない可能性が低くない(むしろ高い)ことを示唆しています。同時に日中両国が経済面で緊密な関係にあることを具体的な数字を挙げて示し、
「これは『相互依存』とさえ言っていいものだ」
としたことで、日貨排斥に否定的な姿勢であることも明確にしているのです。
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上の呉建民氏の発言、内容的には『南方都市報』の記事と似ている部分があります。が、政府関係者の口からその言葉が出たということは、大きな意味を持つものといえます。
ただ、この記事がなぜかあまり大手メディアには出てきません。「新波網」などには転載され、その「日本の常任理事国入り反対特集」ページにも登場しているのですが、「新華網」と「人民網」では見当たらないのです(少なくとも私の目に届く場所にはありませんでした)。そのことから、胡錦涛政権内部ないしは党上層部において、対日強硬論が台頭している可能性を指摘することもできなくはありません。
一方で、外交部報道官の会見に加え、呉建民氏も外交関係者であることを考えるとき、胡錦涛政権は目下のところこの問題を「対日外交」の枠内と位置付け、その線で処理していこうとしていることがわかります。一昨年末、秋口に起きた日本人による珠海集団買春事件や西安の一件でネット世論がヒートアップしていた際に、
「行き過ぎた民族主義はいけない」
と、それをたしなめる談話を発表したのが楊振亜・元駐日大使、これまた外交関係者です。何を当たり前のことを、と言われるかも知れませんが、これはひとつの目安だと思うのです。仮に今回のヨーカ堂襲撃事件のようなプチ都市暴動もしくは本格的な都市暴動が各地で続発するようになっても、やはり止め男は外交関係者でしょうか。
私は温家宝あたりが出てきて、テレビ演説で切々と訴える(またウソ泣きするかどうかは別として)のではないかと思うのです。温家宝が出てくれば、胡錦涛政権による事件の位置付けが対日外交から国内問題へと変化したことを示すことになります。そうなったときには、もはや中国は容易ならぬ情勢になっていることでしょう。
以前にも書きましたが、現在のように全国各地で署名運動が展開される、つまり一方向にエネルギーが集束している状況は、中共にとって鉾先がいつ自分に向けられるかわからない、といったある種の恐怖感を伴うものだと思います。ただ、目下のところは珍獣・糞青・大学生が運動の主体(主力は生活を背負っていない連中)であり、各々の間に有機的な連携が成立している訳でもありません。だから怖さを感じつつも、まだ安心していられる。外交関係者が出てきているうちは、胡錦涛政権にはまだ余裕があるということです。
ところが、「反日」「愛国」という可燃度の高いテーマに民衆(市民や出稼ぎ農民)が引き寄せられると、今回の事件のようになってしまいます。来るところまで来てしまった観のある社会状況に民衆が不満を爆発させた、といったところでしょう。これは当然ながら日中関係とは全く別物です。
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「反日」で若い世代が燃えるのも、民衆が引き寄せられてしまうのも、結局は「支那人」生来の性質であり、またその性質を江沢民以来の「愛国主義教育」「反日キャンペーン」が丹念に育て上げ、磨き上げてきたのですから、自業自得という他はありません。
引き寄せられた民衆が暴徒になってしまうのは、二十余年来の改革・開放によって歪んだ部分が放置されてきたことによるものですから、これも自業自得です。「反日」署名運動を発端に起きてしまった成都のヨーカ堂襲撃事件は、その点において非常に象徴的だと思います。
エスカレートする一方の署名運動や日貨排斥を手をつかねて眺めていれば、同じような事件が間違いなくまた起きるでしょう。「珍獣使い」で当面の対日外交を乗り切ろうとしていた胡錦涛政権ですが、どうやら調教は道半ばで失敗したようです。コントロールし切れなくなる前に手を打たなかったことで、いまいきなり剣が峰に立たされてしまっている。そういう印象です。
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【関連記事】ここまでの流れを把握したい方は御参照下さい(余り役に立たないと思いますけど)。
珍獣使い1――ネット世論。(2005/03/18)
珍獣使い2――野放しから檻に入れるまで。(2005/03/19)
新華社が糞青になっちゃいました。(2005/03/29)
いまさら手遅れでは?(2005/03/30)
日本製品の販売拒否、ビール以外にも拡大。(2005/03/31)
日貨排斥で綱引き?糞青に「心の準備」を促す記事も。(2005/04/01)
【狂犬病に】署名運動全国に広がる【御注意を】(2005/04/02)
反日署名速報:成都では大学生が暴徒化!?(2005/04/03)
成都・ヨーカ堂襲撃事件(上)(2005/04/03)
→反日騒動2005(14上)へ
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WSJの社説に「The Genie Is Out of the Chinese Bottle」
ってタイトルで書かれるわ
いよいよ鍍金が剥がれ始めてきてる今日この頃…
No more U.N. food aid for China
http://www.cnn.com/2005/WORLD/asiapcf/03/31/china.foodaid.ap/
いやあ正直もう止まっていたと思っていたんですが…
でもこれからは、軍事費へ回す闇金調達も大変になるでしょうね
http://news.sina.com.cn/c/2005-04-04/06016276994.shtml
http://www.sankei.co.jp/news/050403/kok079.htm
実力行使もやってるようです。保釣の掲示板で当該ニュースをざっと探したのですが、見つかりませんでした。見落としがあるかもしれませんが。
後、大学が動いているとなると、組織作りがかなり進んで来てると考えるべきでしょうな
後は資金と力(軍)を付けさせてやれば面白い事になるでしょうな、、
外務省の谷内正太郎事務次官は四日午後、中国の王毅駐日大使を都内の外務省麻布台別館に呼び、中国の成都と深センで反日を叫ぶデモ隊が日系スーパーの窓ガラスなどを割った事件について「強い関心と憂慮を表明する。在留邦人の安全と日本企業の営業の確保に向け協力を求める」と、中国政府の有効な対応を求めた。
大使は、「中国政府が国民と一体となってとか、後ろで何かやっているということは全くない」と中国政府の関与を否定。事件の背景には、日本の国連安全保障理事会常任理事国入りへの反対があると説明する一方、「日本人を含む外国人の安全や外国企業の正常な営業活動は中国の法律に基づき保護される」と答えた。
これに関連し小泉純一郎首相は首相官邸で記者団に対し「中国の日本企業、日本人の活動が自由にできるように配慮してほしい」と、中国政府に配慮を要請した。
また谷内次官は四日夕の記者会見で「安保理改革と暴力行為は何の関係もない。許されないことだ」と非難する一方、「先方の警備当局が一生懸命にやっていることは承知している」と述べた。(共同)
食糧援助ってまだやっていたんですね。私は昨年で打ち切られたのかと思いました。
『WSJ』の社説はいい感じです(笑)。これから先は蟻地獄、足掻けば足掻くほど落ちていく……。
この文章は重視していいものだと思います。『中国青年報』発でもあります。内容からみて、胡錦涛も煽り過ぎたことを後悔し始めているように思います。しかもこれ、実質的に日本の常任理事国入りを否定していないんですよね。すでに「新華網」他に転載されてもいます。深センと成都の件で中共もビビッているのかも知れませんね(笑)。
声明などが出ているかどうか、私も探してみます。香港あたりの報道だと「またお前か」とか言われて袋叩きに遭ったようですね。天罰(笑)。
とりあえず「なんちゃって民間組織」の街頭活動を禁止しないと、また同じような事件が続発するでしょうね。それに踏み切れるかどうかが命運を分けると思います。
大学生はたぶん学生会のような御用組織が音頭をとっているのだと思います。上から「やれ」と言われたからやっているのではないでしょうか。つまり党の息がかかっているという訳で、その点では「なんちゃって民間組織」と同じです。
でも、これが学生会のような枠をとっぱずした自発的な動きになり、そういう連中が異なる大学同士で連携し始めたら面白くなるでしょうね。
日本政府の対応は悪くないと思います。外務省も危険情報を出しましたね。あとはマスコミが危険情報が出たことをガンガン流してほしいところですが……無理なのでしょうか。
王毅はこれまたいい味だしてますね。相変わらず喋り過ぎてもいます(笑)。こういうキャラがいまの駐日大使だというのも、天命なのかも知れません(笑)。
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