相模原市から「たんたんと」と題した小冊子が届いた。著者は鍼灸(しんきゅう)師の山本裕子さん(47)。ほぼ全盲と強い難聴に加え、100万人に1人ともされる難病を昨年患った。
4年前、部活動のクライミングを演題に、全国盲学校弁論大会に出場。難聴が悪化した2年前には逆境で強まった家族の絆を描き、世界点字作文コンクールの国内最優秀賞に。
前向きに生きる彼女に、難病という新たな困難が加わった。20編の詩や散文には、闘病への決意と不安がのぞく。「希望の羽」と題した詩では「しんどいと希望の翼の羽がしょぼんと閉じてしまう」「それを一枚一枚広げ続けるのが私のお仕事 夜な夜な延々延々広げ続ける」とつづる。
相模原市の障害者施設殺傷事件から3カ月。彼女のメールにはこうある。「障害者だって懸命に生きている。私の夢も人生を笑顔で生き切ること。病気の不安が分かる車椅子の鍼灸師の存在価値もあるはず」。先ごろ退院し、仕事再開へ動き出した。
毎日新聞 2016年10月30日