約30年間で作った身体障害者向けの服は1千着以上。体の46カ所を測る独自の製図法で、どんな体形にもなじむ着心地の良さを追求してきた。大分市のアトリエには、既製服が合わずに悩む人たちが全国から訪れる。「まるで着ていないみたいに体がラク」。目を輝かせる姿を見るのが励みだ。
子どものころから服が大好きだった。服飾の専門学校を卒業後、仏有名ブランドを経て独立。障害者の服作りは、30歳過ぎ、骨形成不全症で体全体にゆがみがある知人から頼まれたことがきっかけだった。手間も時間もかかる。でも「服職人なら何でも作れなければ」。のめり込んだ。
曲がった背骨が服でつっぱる、息が苦しい、着るときに痛みがある――。悩みを聞き取り、製図法を10年ほどかけて完成させた。2011年末に開いたアトリエの名は「服は着る薬」。手がけた服を身につけた人たちが笑顔を向ける写真集をこのほど出版。型紙や制作過程の写真も惜しみなく紹介した。
医療との連携にも乗り出している。今年3月、作業療法士と組み、服の採寸に必要な箇所を骨や筋肉の名称に置き換えて解説した教科書を完成させた。将来、作業療法士が測った数値をデザイナーに送れば、どこでも服を作ることができる仕組みづくりを目指す。「誰もが体に合った服を普通に手に入れられるようにしたい」
服飾デザイナーの鶴丸礼子さん
朝日新聞 2017年5月9日
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