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ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

税と社会保障の一体改革:素案要旨

2012年01月07日 02時32分54秒 | 障害者の自立

 「税と社会保障の一体改革」素案の要旨は以下の通り。

<社会保障改革>

 【子ども・子育て】

・地域の実情に応じた保育の量的拡充、幼保一体化の機能強化などを行う子ども・子育て新システムを創設。

・恒久財源を得て早期に本格実施。それまでの間は13年度をめどに子ども・子育て会議(仮称)設置や国の基本指針策定など可能なものから段階実施。12年通常国会に法案提出。

 【医療・介護】

・高齢化が一段と進む25年にどこに住んでも適切な医療・介護が受けられる社会を実現。

・できる限り住み慣れた地域で在宅生活の継続を目指す地域包括ケアシステムの構築に取り組む。24時間対応の訪問サービスを充実。

・短時間労働者への被用者保険の適用を厚生年金の適用拡大にあわせ拡大。12年通常国会への法案提出を検討。

・高額療養費負担の年間上限導入などを財源確保の上で目指す。年収300万円以下程度の人に特に配慮する。

・高齢者医療の支援金を各被用者保険者の総報酬に応じた負担とする措置を検討。12年通常国会に後期高齢者医療制度廃止に向けた見直し法案提出。

・70歳以上75歳未満の患者負担見直しを世代間の公平を図る観点から検討。

・所得水準の高い国民健康保険組合への国庫補助を見直す。12年通常国会への法案提出を検討。

・65歳以上の介護保険料の低所得者軽減策を強化。12年通常国会への法案提出を検討。

・介護納付金の総報酬割の導入を検討。12年通常国会への法案提出を検討。

・医療・介護・保育などの自己負担合計額に上限を設ける「総合合算制度」を創設。15年度以降の導入検討。

 【年金】

 1新年金制度の創設

・「所得比例年金」と「最低保障年金」を組み合わせた一つの公的年金制度に全員が加入する新年金制度の創設実現に取り組む。

・所得比例年金(社会保険方式)は職種を問わず全員が同じ制度に加入し所得が同じなら同じ保険料、同じ給付。保険料は15%程度(老齢年金にかかる部分)。納付した保険料を記録上積み上げ、仮想の利回りを付し、合計額を年金支給開始時の平均余命などで割り毎年の年金額を算出。

・最低保障年金(税財源)は満額で7万円(現在価値)。生涯平均年収ベース(=保険料納付額)で一定の収入レベルを超えた点より徐々に減額、ある収入レベルで給付額はゼロ。全受給者が所得比例年金と最低保障年金の合算で概ね7万円以上を受給できる制度に。

・13年の国会に法案を提出。

 2現行制度の改善

・新年金制度の創設には一定の時間を要することなどから、新年金制度の方向性に沿い現行制度の改善を図る。

・消費税引き上げ後に消費税財源による国庫負担2分の1を恒久化。12年度の基礎年金国庫負担割合は歳出予算と「年金交付国債」(仮称)により2分の1を確保。必要な法案を12年通常国会に提出。

・13年度から消費税引き上げまでの取り扱いは引き続き検討。

・低所得者の老齢基礎年金や障害・遺族基礎年金に加算を実施。

・無年金者が納付した保険料に応じた年金を受給できるようにし、受給資格年数を現在の25年から10年に短縮。消費税引き上げ年度から実施。12年通常国会への法案提出を検討。

・高所得者の老齢基礎年金を調整する制度を創設。12年通常国会への法案提出を検討。

・マイナスの物価スライドを行わなかったことなどで2.5%本来より高い水準の年金額で支給している措置を12年度から3年間で解消、12年度は10月から実施。12年通常国会に法案提出。

・産休期間中の保険料負担を免除、将来の年金給付には反映させる。12年通常国会への法案提出を検討。

・厚生年金適用事業所の短時間労働者に厚生年金の適用を拡大。12年通常国会への法案提出を検討。第3号被保険者制度、配偶者控除の見直しとともに総合的な検討を行う。

・共済年金制度を厚生年金制度に合わせる方向を基本に被用者年金を一元化。公務員、私学教職員の保険料率や給付内容を民間サラリーマンと同一化する。12年通常国会への法案提出を検討。

・第3号被保険者制度は新しい年金制度の方向性(2分2乗)を踏まえ検討。

・マクロ経済スライドの適用について物価スライド特例分の解消状況も踏まえ検討。

・60代前半にかかる在職老齢年金制度について調整限度額を引き上げる見直しを検討。

・厚生年金の標準報酬の上限見直しを検討。

・支給開始年齢のあり方について中長期的課題として検討。

 【その他】

・無収入の高齢者世帯が発生しないよう継続雇用制度の基準に関する法制度を整備。

・生活保護基準、各種福祉手当は物価スライドなどの措置で消費税引き上げによる影響分を手当額に反映。

・生活困窮者対策と生活保護制度の見直しに総合的に取り組むための生活支援戦略を12年秋をめどに策定。

・日本発の革新的な医薬品・医療機器の創出などの拠点となる臨床研究中核病院(仮称)を創設。

<税制改革>

 【基本的方向性】

・今回の税制抜本改革の最大の柱は社会保障財源を確保するための消費税率引き上げ。幅広い国民が負担する消費税は高齢化社会における社会保障の安定財源としてふさわしい。

 【消費税】

・14年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる。

・食料品などに軽減税率を適用した場合、高額所得者ほど負担軽減額が大きくなること、課税ベースが大きく侵食されること、事業者の負担が増すことなどを踏まえ今回の改革では単一税率を維持。

・消費税収(国分)は全額社会保障4経費(年金、医療、介護、少子化対策)に充てることを明確にし社会保障目的税化。地方の消費税増収分も社会保障財源化する。

・事業者免税点制度、簡易課税制度は中小事業者の事務負担への配慮から制度を維持。(個々の取引の消費税額などを示す)インボイス(荷送り状)制度は導入しない。

・値札などの「総額表示」の義務付けは、維持を基本とする。

・引き上げ分の消費税収の地方分は消費税率換算で14年4月から0.92%分、15年10月から1.54%分とする。

・住宅取得については一時の税負担の増加による影響を平準化、緩和する観点から必要な措置について財源も含め総合的に検討する。

・社会保険診療は非課税。医療機関などが行う高額投資にかかる消費税負担に関し、新たに一定の基準に該当するものに対し、区分して手当てを行うことを検討。これにより医療機関などの仕入れにかかる消費税については診療報酬など医療保険制度で手当てする。

 【逆進性対策】

・所得の少ない家計ほど食料品向けを含めた消費支出の割合が高いため消費税負担率も高くなるという逆進性の問題も踏まえ、15年度以降の番号制度の本格稼働・定着後の実施を念頭に総合合算制度や給付付き税額控除など、再配分にかんする総合的な施策を導入。

・総合的な施策の実現までの間の暫定的、臨時的措置として、簡素な給付措置を実施。

 【景気弾力条項】

・法案成立後、引き上げにあたっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応できる仕組みを設ける。

・消費税率引き上げ実施前に「経済状況の好転」について、名目・実質成長率、物価動向など、種々の経済指標を確認し、経済状況などを総合的に勘案した上で、引き上げの停止を含め所要の措置を講ずるものとする規定を法案に盛り込む。

 【消費税以外の消費課税】

・酒税は類似する酒類間の税負担の公平性も踏まえ、消費税率の引き上げにあわせて見直しを行う方向で検討。

・地球温暖化対策税は12年度税制改正で引き続き実現を図る。

・自動車取得税および自動車重量税については、簡素化、負担の軽減、グリーン化の観点から見直しを行う。

 【個人所得税】

・15年分の所得税から、課税所得5000万円超について45%の税率を設ける。特に高い所得階層に一定の負担増を求めることにより累進性を高める。

 【金融所得課税】

・上場株式配当・譲渡所得にかかる10%軽減税率を14年1月から20%の本則税率とする。

 【相続税】

・相続税基礎控除のうち定額控除を現行の5000万円から3000万円に、法定相続人比例控除を現行の1人当たり1000万円から600万円に引き下げる。

・最高税率を現行の50%(3億円超)から55%(6億円超)へ引き上げ、2億円超にかかる税率も引き上げる。

・一体改革の中で実現を図る。

 【年金税制】

・年金受給者は給与所得者に比べ課税最低限が高いなど税制上優遇されている状況であり、世代間の公平性の確保も必要。年金収入に応じて控除額が増加していく現行の公的年金等控除の仕組みを見直すなど種々の方策を検討する必要がある。

 【地方税制】

・財源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系を構築。地方法人特別税および地方法人特別譲与税は、一体改革にあわせて抜本的に見直す。

 【改革スケジュール】

・本素案に沿った各税目の改正内容・時期を盛り込んだ法案を11年度中に提出する。

・50年以降、高齢化のピークを迎えることを考慮すれば今後も改革を進める必要がある。今回の改革に引き続き、少子高齢化、財政、経済の状況などを踏まえつつ次の改革を実施することとし、今後5年をめどに所要の法律上の措置を講じることを今回の改革法案の附則に明記する。

 【政治・行政改革】

・議員定数削減や公務員総人件費削減など自ら身を切る改革を実施した上で、税制抜本改革による消費税引き上げを実施すべき。

・衆議院議員定数を80削減する法案などを早期に国会提出。

・独立行政法人改革、公益法人改革、特別会計改革、国有資産見直しなどに向け行政構造改革実行法案(仮称)を早期に国会提出。閣議決定ベースで可能な改革は直ちに実行。

・給与臨時特例法案、国家公務員制度関連法案の早期成立を図る。


毎日新聞 2012年1月6日 21時33分

「トイレ貸します」店頭に共通マーク、利用気軽に 横浜

2012年01月07日 02時30分46秒 | 障害者の自立
 観光や買い物をする人が気兼ねなくトイレを借りられるよう、横浜市中区の横浜中華街や元町商店街などで飲食店やブティックの入り口に、誰でも利用できることを示す共通の「オープントイレマーク」を張るプロジェクトが始まった。

 気軽に店に入ってもらい、集客効果も上げようというアイデア。発案したNPO法人チェック(東京)代表の金子健二さん(31)は「1年後には全国500カ所以上に普及させるのが目標。開かれたトイレを増やしたい」と意気込んでいる。

 オープントイレマークは登山中に用を足すことを「花摘みに行く」と言うのにちなんで、淡い緑色の背景に白い花のデザイン。車いすやオストメイト(人工肛門保有者)対応などの多機能トイレがあれば表示する。

 金子さんは以前勤めていた旅行会社で障害者向けツアーを担当した時、車いすの人が使えるトイレを探すのに苦労した経験から、2007年に全国の多機能トイレ情報を発信するインターネットのサイトを立ち上げた。

 さらにIT機器に不慣れなお年寄りや外国人などでも一目で分かるようにと、横浜市の印刷会社と協力してマークを開発。11年11月中旬から横浜中華街の店や観光施設など9カ所に張られ、埼玉県や鹿児島県などの店でも使用が始まった。

 プロジェクトは1枚800円のマークを購入すれば、全国どこでも参加できる。問い合わせはチェック(電)080・4162・4550まで。〔共同〕

日本経済新聞 2012/1/6 10:36

保護入院の闇 悪用防ぐ改革を

2012年01月07日 02時23分55秒 | 障害者の自立
 医療保護入院の問題にふれる前に、精神科の入院制度について簡単にまとめておきたい。

 精神保健福祉法が定める精神科の入院制度は、3つに大別される。患者本人が入院に同意する「任意入院」、患者の保護者の同意で行う「医療保護入院」、都道府県知事の権限で行う「措置入院」だ。

 患者に治療の意志がある任意入院が、最も好ましい入院形態であることはいうまでもない。だが、統合失調症を初めて発症した患者は、自分が病気であることを自覚できず(病識がない)、入院を拒む例が少なくない。そこで、患者が入院に同意しない場合でも、保護者の同意で入院治療を行える医療保護入院制度が生まれた。

 ここでいう保護者とは、配偶者、親権者、扶養義務者、後見人または保佐人を指す。国の研究班が2007年度に行った調査では、実際に保護者を務めた人の内訳は、兄弟姉妹31%、両親26%、配偶者17%、子15%などとなっている。保護者を務められる人がいない場合は、市町村長が保護者になる。入院中に病状が改善し、本人の同意が得られるようになれば、任意入院に切り替える。

 最後が、いわゆる強制入院として知られる措置入院だ。精神疾患が悪化し、自分や他人を傷つける恐れがあると判断された患者を、都道府県知事が自らの権限で入院させる。治安維持的な側面を持ち、判断を誤ると人権を著しく侵害する恐れがあるため、通常は、精神保健指定医(一定以上の臨床経験があり、レポート提出で認定を受けた精神科医)が2人以上診察をし、入院が必要と認めてはじめて実行される。

 措置入院は、1991年(各年6月30日時点)には1万人を超えていたが、人権意識の高まりなどもあり、2007年には1849人となった。一方、医療保護入院は1998年には9万2千人だったが、以後増加が続き、2007年には12万人を超えた。このうち、統合失調症の患者は毎年約7万人。数を押し上げているのはアルツハイマー病などの認知症患者で、2007年には2万3千人となった。

◇          ◇

 医療保護入院制度の問題点は、国の検討会でも多く指摘されている。たとえば、「保護者の負担が大きすぎる」こと。病識のない患者は、入院させた保護者を恨み、退院後、関係が悪化するケースが目立つ。そのため、第三者機関を設けて入院の是非を判断する案なども出ている。ただ、費用や迅速性の問題などもあり、実現へのハードルは高い。

 保護者の選任が、比較的簡単な手続きで行われていることも、時に問題を生む。家庭裁判所が必要書類をもとに審判を行うが、ある精神保健指定医は「裁判所の審判はまさにザル。必要書類がそろっていれば認める」と指摘する。統合失調症の母親を医療保護入院させたことがある東京都の男性は「簡単に保護者になれることに驚いた。母親は特に病状が悪化したわけではなかったが、私が対応に疲れたので入れてしまった。入院をきっかけに症状が悪化し、今は後悔している」と話す。

 断っておかなければならないが、医療保護入院の多くは適正に行われているはずだ。この男性に悪意があったとも思えない。保護者の選任手続きを必要以上に複雑にして、対応に悩む家族をさらに追い込んではいけない。だが、今のままでは悪用も可能で、それが問題なのだ。

 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」は、次のような場合は保護者になれないと定めている。「当該精神障害者に対して訴訟をしている者、又はした者並びにその配偶者及び直系血族」。しかし、両者の複雑な関係性までは考慮されない。そのため精神科医が、悪用を止める防波堤にならなければならないが、十分な対応が行われているとは言いがたい。

 岡山県精神科医療センター理事長の中島豊爾さんはこう指摘する。「統合失調症や認知症の患者を入院させたいと来院する家族の中には、神経質過ぎる人や、患者よりもある意味で病的という人がいる。家族にカウンセリングなどを受けてもらい、状況が好転した例もある。患者だけでなく、家族の言動にも注意を払うことが重要で、精神科医の力量が問われる」

 国は、医療保護入院制度の見直しに向けた検討を進めている。よりよい制度にするためには、患者や家族、そしてタカオさんのような「被害者」が、もっと声を上げていく必要があるだろう。


 統合失調症の誤診やうつ病の過剰診断、尋常ではない多剤大量投薬、セカンドオピニオンを求めると怒り出す医師、患者の突然死や自殺の多発……。様々な問題が噴出する精神医療に、社会の厳しい目が向けられている。このコラムでは、紙面で取り上げ切れなかった話題により深く切り込み、精神医療の改善の道を探る。



(2012年1月6日 読売新聞)

柏から島根へ転居の主婦「3人の暮らし大切に」 長男「疎開」9カ月、夫が転職 /千葉

2012年01月07日 02時23分14秒 | 障害者の自立
 長男の誠君(4)を初めて連れて行く東京ディズニーランド(浦安市)。楽しみにしていたパレードが始まった約1分後だった。昨年3月11日午後2時46分。気持ち悪いほど大きな横揺れが突然始まり、長く続いた。

 柏市の主婦、美土路(みどろ)優子さん(34)と夫の賢(さとし)さん(34)、誠君が駐車場へ逃げると、液状化現象で深さ5センチぐらい冠水していて、靴がびしょぬれになった。午後4時に出発したが、道路は車であふれノロノロ運転。約20キロ先の自宅まで約10時間もかかった。

    □   □

 半年前の10月5日午後11時ごろ、自宅のふすまの向こうで聞いたことがないうめき声がした。先に寝ていた夫の顔が青紫色になっていた。心肺停止状態。あわてて心臓マッサージと人工呼吸をした。

 病院に運ばれた夫は3日間、生死の境をさまよった。病名は突発性心筋細動。意識は戻ったが、「障害が残る可能性がある」と医者に言われた。「寝たきりかな、車椅子かな」と覚悟した。

 夫は集中治療室に1カ月、一般病棟に2カ月入院した。車椅子生活から歩行練習へ。最初はよたよたしていた。心臓にペースメーカーを入れて身体障害者等級1級となり、8年働いた運送会社のドライバーを辞めた。同じ島根県出身の社長が、取引先の倉庫会社を紹介してくれた。ディズニーランドは転職前の最後の息抜きだった。

 夫は地震の5日後から新職場に出社した。テレビは東京電力福島第1原発事故のニュースばかり流していた。島根県安来(やすぎ)市の義母から電話が来た。「みんな関東から逃げて来てるよ。子供だけでも預かろうか」

 「そんなに危ないのかなあ」と思いつつ、震災から8日後、美土路さんは千葉市の実母に誠君を連れて行ってもらった。病み上がりの夫を一人にできない。誠君は「おじいちゃん家(ち)に遊びに行く」と、はしゃいでいた。親同伴なしの初めての「お泊まり」が9カ月も続くなんて、考えもしなかった。

    □   □

 5月中旬、東京大柏キャンパスの放射線量の高さがインターネット上で騒ぎになっていた。交流サイトで知り合った主婦と柏市議に相談に行くと、「代表者を決めて署名集めを」とアドバイスされた。少しでも早い方がいい。「じゃあ、私たちでいいです」と決断し、2人代表制の「柏の子どもたちを放射能汚染から守る会」ができた。ネットと口コミでつながり、市に計測と除染を求めた署名は2週間ちょっとで1万人を超えた。

 活動が盛り上がりを見せる一方で、中心メンバーは次々と西日本へ「母子疎開」し始めていた。要望書を出すたびに参加者は半分、また半分と減った。10月初旬、会の活動を休止した。

 誠君が待つ島根へは、寝台特急や夜行バスで夫と9カ月で5往復した。久しぶりに会う誠君は「柏に帰りたい」と言わなかった。「放射能あるんでしょ」。両親が柏に戻った夜、布団の中で声を殺して泣いていたと聞いた。戦時中の学童疎開みたいでかわいそう。島根県庁のUターン制度を利用し、夫は実家近くの運送会社で倉庫管理の仕事を見つけた。

 午後6時から朝まで夜勤し、残業も入れて給料はようやく柏時代とほぼ同額。でも、「正社員だし、子供を育てていくだけあればいいかな」と考えた。

    □   □

 昨年12月24日のクリスマスイブ、夫の実家に引っ越した。

 26日の初出勤の前、親子3人で五月人形の箱を開けた。一つは夫が生まれた時のもの。「倒れた夫を守って」と必死にお願いし、夫が復活したと思う。

 もう一つは疎開後に「誠にも要る」と千葉の実母が買ったもの。初めて見た息子は「お父さんのと同じ!」と声を弾ませた。

 外は大雪だった。慣れない田舎暮らし。放射能から逃げて来たのに、中国電力の島根原発まで25キロちょっと。不安は尽きないが、「やっと取り戻した3人の暮らしを大切にしたい」と美土路さんは願う。

毎日新聞 2012年1月6日 地方版

さまざまな障害 人生学ぶ

2012年01月07日 02時12分23秒 | 障害者の自立
 別府市鶴見の北地恵さんが生い立ちや闘病の記録をまとめた「私負けたくない 自分らしく生きるために」(文芸社、B5判・242ページ)を出版。1993年に最初の著書を刊行してから20年近くたち、現在の生活の様子や思いを加えた。脳性まひのため、手足が不自由な北地さんは、高校生のときに尿が出なくなる神経因性膀胱(ぼうこう)を発症。20代後半には、視力も失った。さまざまな障害があるが「これほど多くのことを学べる人生はない」と振り返っている。

 1歳8カ月で脳性まひと診断された北地さんは、高校3年の修学旅行最終日に、排尿が止まる苦しみに襲われた。さまざまな治療に挑戦しながら、約2年間入退院の日々を送り、膀胱ろうとなる手術を受けてからも10年以上腎盂(じんう)腎炎などを繰り返した。
 執筆を決めたのは「障害者といっても一人一人違う。私の気持ちや状況を知ってほしかった」との思いから。著書には闘病時の様子、将来や病への不安、病を理解されず心無い言葉を受けた経験なども記した。
 22歳のときに記した自分史の記録は、北九州市の「第1回自分史文学賞」で特別奨励賞を受賞。この作品が出版社の目に留まり、3年後の様子を加えた「私負けたくない 青春だもん」を出版した。
 今回の著書では、20年たった今を加筆。視力を失うと分かってから、点字や、放送大学で臨床心理学や幼児教育などを学んだこと、両親への感謝、人生に行き詰まりを感じている人へのメッセージを温かくつづった。
 「障害があっても思いは健常者と同じ。障害者への理解を深めてほしい」と訴える。病によって命の尊さや人の愛、情けを知った北地さん。現在、「話を聞くことで誰かの気持ちを楽にできたら」とカウンセリングに興味を示す。「精神的に自立した生活を送りたいと考えている。挑戦を続けたい」と笑顔を絶やさず、自分らしく生きている。県内の書店で取り扱っている。


生い立ちや闘病の記録をつづった本を出版した北地恵さん

大分合同新聞 [2012年01月06日 10:50]