◇視覚障害者の就労を圧迫
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師のいわゆる「三療」は、江戸時代から視覚障害者の就労先として定着してきた。しかし、90年代後半以降、はり・きゅう師の養成学校が新増設されると、「聖域」だった職種に晴眼者(目の見える人)が相次いで進出。数少ない視覚障害者の就労を圧迫している。厚生労働省は「(晴眼者の)職業選択の自由もあり規制できない」としているが、専門家は「患者の需要を増やす努力が必要だ」と指摘する。視覚障害者の就労の現状を取材した。
JR上盛岡駅前にある盛岡盲人ホーム(盛岡市本町通3)では、はり師などの国家資格を持つ視覚障害者12人が治療をしながら、技術などの向上に励んでいる。その一人、県視覚障害者福祉協会理事長も務める小島伸公(のぶただ)さん(68)は「ここ数年、患者が2~3割減っている」と嘆く。知り合いの個人開業者に至っては5割減だという。
以前は診療所の整形外科や、併設する老人介護施設の機能訓練指導員としての働き口もあった。だが、今はほとんどない。晴眼者の雇用が増えることもあって、職を失ってホームに移った人が4人いるという。小島さんは「私たちにはハンディがある。晴眼者が業界に増えた影響は計り知れない」と話す。
「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」(略称・あはき法)の第19条は、「視覚障害者の生計維持が困難になると判断される場合は、晴眼者のあん摩マッサージ指圧師養成学校の認定、承認をしないことができる」と定めている。養成学校の許認可権を持つ厚生省(現厚労省)は、この条文を根拠に新規参入を規制してきた。
だが、福岡市内の接骨師養成施設の設立を巡る厚生省の不認定処分に対し、福岡地裁は98年、「新規参入を制限する処分は独占禁止法違反にあたる」として、処分取り消しを命じた。厚生省は控訴を断念。この判決以降、養成学校設置が事実上規制緩和され、県内でも盛岡に2校設置された。
これにより、晴眼者が業界に増えてきた。財団法人「東洋療法研修試験財団」(東京都港区)によると、はり師、きゅう師両試験の合格者数は02年度を境に増加。これまで2000人台前半で推移していたのが、07年度にははり師で4347人、きゅう師で4344人といずれも過去最高となった。特に視覚障害者が年々減少するのに対し、晴眼者の増加が目立った。
視覚障害者団体などは、あはき法第19条にはり師ときゅう師も加える法改正を厚労省や国会に求めている。厚労省医事課は「晴眼者にも職業選択の自由がある。視覚障害者団体と養成学校側の合意がないと難しい」と話す。
筑波技術短大視覚部(茨城県つくば市)の藤井亮輔准教授(鍼灸(しんきゅう)学専攻)は「はりやきゅうの治療で保険を適用するには医師の同意書が必要だ。これを保険証1枚で適用できるようにするだけでも患者の需要を増やすことができる」と指摘する。小島さんは「私たちは仕事が限られており、職業選択の自由がない。それを分かってほしい」と訴える。
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師のいわゆる「三療」は、江戸時代から視覚障害者の就労先として定着してきた。しかし、90年代後半以降、はり・きゅう師の養成学校が新増設されると、「聖域」だった職種に晴眼者(目の見える人)が相次いで進出。数少ない視覚障害者の就労を圧迫している。厚生労働省は「(晴眼者の)職業選択の自由もあり規制できない」としているが、専門家は「患者の需要を増やす努力が必要だ」と指摘する。視覚障害者の就労の現状を取材した。
JR上盛岡駅前にある盛岡盲人ホーム(盛岡市本町通3)では、はり師などの国家資格を持つ視覚障害者12人が治療をしながら、技術などの向上に励んでいる。その一人、県視覚障害者福祉協会理事長も務める小島伸公(のぶただ)さん(68)は「ここ数年、患者が2~3割減っている」と嘆く。知り合いの個人開業者に至っては5割減だという。
以前は診療所の整形外科や、併設する老人介護施設の機能訓練指導員としての働き口もあった。だが、今はほとんどない。晴眼者の雇用が増えることもあって、職を失ってホームに移った人が4人いるという。小島さんは「私たちにはハンディがある。晴眼者が業界に増えた影響は計り知れない」と話す。
「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」(略称・あはき法)の第19条は、「視覚障害者の生計維持が困難になると判断される場合は、晴眼者のあん摩マッサージ指圧師養成学校の認定、承認をしないことができる」と定めている。養成学校の許認可権を持つ厚生省(現厚労省)は、この条文を根拠に新規参入を規制してきた。
だが、福岡市内の接骨師養成施設の設立を巡る厚生省の不認定処分に対し、福岡地裁は98年、「新規参入を制限する処分は独占禁止法違反にあたる」として、処分取り消しを命じた。厚生省は控訴を断念。この判決以降、養成学校設置が事実上規制緩和され、県内でも盛岡に2校設置された。
これにより、晴眼者が業界に増えてきた。財団法人「東洋療法研修試験財団」(東京都港区)によると、はり師、きゅう師両試験の合格者数は02年度を境に増加。これまで2000人台前半で推移していたのが、07年度にははり師で4347人、きゅう師で4344人といずれも過去最高となった。特に視覚障害者が年々減少するのに対し、晴眼者の増加が目立った。
視覚障害者団体などは、あはき法第19条にはり師ときゅう師も加える法改正を厚労省や国会に求めている。厚労省医事課は「晴眼者にも職業選択の自由がある。視覚障害者団体と養成学校側の合意がないと難しい」と話す。
筑波技術短大視覚部(茨城県つくば市)の藤井亮輔准教授(鍼灸(しんきゅう)学専攻)は「はりやきゅうの治療で保険を適用するには医師の同意書が必要だ。これを保険証1枚で適用できるようにするだけでも患者の需要を増やすことができる」と指摘する。小島さんは「私たちは仕事が限られており、職業選択の自由がない。それを分かってほしい」と訴える。