漫画/ハリソンさんはカノ紳士 Mr.Harrison is THE GENTLEMAN ― フランス通過編 ―(前半)

18世紀欧州が舞台の歴史ロマン。アヴィニヨンの薬屋小町クレールとハリソン&マルセル主従との運命の出会い。

なぐさめと励まし(13/13) 'Tis so 大切な言葉 ―

2008年08月16日 10時30分07秒 | 第9話/なぐさめと励まし

 ハリソンさんの旅行の目的がここで明らかになった訳ですが ― 。

 18世紀当時は、英国の裕福な家のお坊ちゃま達が、
社会勉強のためにヨーロッパ大陸を旅行するというのが流行していました。
「グランド・ツアー」といって、フランスを通過してイタリアへと向かう方々が多かったようです。


 確か日本でも1990年代前半くらいに「自分探しの旅」とか言って、
世界各地を旅行している20代の女の子達が大勢いたわね。
バブルの名残で彼女達はまだお金があったから…。
「悠久のインドへ行って、目からウロコが落ちた。」とか…。
その人達今頃どうしているのかしら?

「自分探し」自体は今でもしている輩はいるようじゃがの~。
外国へ行くまではしているのかどうか?

金ナシ暇ナシ一緒に行ける人ナシの世の中だもんな~。
俺も…こんな世の中もーやだ!

いろんな所で、ハリソンさんとトロワさんみたいな
話ができるようになるといいと思うな。
「そうだね。」って本当に大切な言葉だよ。

今の世の中、上手く行かない事の話をすると見下してバカにした上で、
自分のシナリオ通りに動かそうと企む人が多いわね。
励ませば太鼓持ち扱いで、下に見て軽く扱う人も増えて来たわよね。

反対に、いきなりキレる人もいるみたい。
「優越感持ってるんだろっ!」とか言って…。

格差社会の悪影響じゃな!
心の世界でも格差社会が作られようとしている。

でも、バカにする方、キレた方=身分が高い
なんてちゃんちゃら可笑しいわ!

ボクの今までの発言はバカにしているからじゃありません。
「突っ込みは、より深く理解をしたいという欲求および努力から。」
つまり、「愛から」なのです。
誤解のないように!



明日は料理&エッセイ「マカロン作り大失敗記」です。

 第10話は9月からの開始です。
パリ滞在英国人の親睦会で、ハリソンさんが哲学者のヒュームさんと
会ってある提案をし、やぶ蛇になりそうになったという話。

なぐさめと励まし(12/13) ヤング&エリート読むべからず

2008年08月10日 10時37分03秒 | 第9話/なぐさめと励まし

 作者も基本的にはハリソンさんの意見に賛成ですな。
自分は頭脳明晰、もしくはそうだと思い込みたい気持ち満々で、
出世欲や性欲も強い若い男子が世界のどこかに仮に一人いたとして、
ある時そいつが「トリストラム・シャンディ」を読んで、その表面的な世界観にハマったら最後、
その後の人生はきっとロクな事がないでしょうな。


18世紀に読書を楽しめた人達なんて限られていたそうじゃ。
当時の英国の一般労働者の年収は25ポンドくらい。
1ポンド=20シリングで、
25 × 20=500シリング。1ヶ月では小数点以下切り上げで42シリング。
小説の平均的金額は1冊2~3シリング。
「トリストラム・シャンディ」の12折版の小型本2巻分で5シリング。
つまり…大雑把な所で1冊あたり、現代日本の労働者では1日分の給料くらいって所じゃろうか。
1冊5~6000円以上もする本を、今だって一般の労働者は気安く買うもんかね?

おじいちゃん。わたし…その計算聞いてて頭痛ーい。

私は1冊1000円以上の本は、絶対図書館で借りて済ませるわ。
小説が1冊5~6000円は高過ぎるわね。
「令嬢テレジア」は1冊5~600円くらいだから買うけど。
つまり、18世紀当時の主たる書籍購入者はおセレブな階級の人達って事よね?

俺、分かんね。テレジアって実の伯父さんとあんな事しちゃってて大丈夫なんですか?
「君が大好きなことをしてあげよう。」(昨日に同じく第1巻より引用。句点は追加。)
― だって、ううぇえええ~っ!!!すげっ!すげーよっ!!

ハッ、そういえば…近親相姦!マックス伯父さんってとんでもない世間知らずなのかしら~?
韓国ドラマや昔の山口百恵&三浦友和の「赤いシリーズ」みたいな重さが全然なかったから、さらっと通過しちゃってたわっ!!

 「トリストラム・シャンデイ」の愛読者って、昔から性格悪い人が多いのかしら?

俺読破してみたけど、どっちかつーと社会的には評価の低そーなヤツらばっかり出て来てるぜ!
そーいったヤツらの「負け組の遠吠え」大全的な話ってトコっぽかった。

でも、ハリソンさんも作者さんも、「いい所もある」
みたいな事言ってるわよね。



 …いい所をこれから掬(救)い上げて行けたらいいのですが。
ハリソンさんや作者が長所と捉えている箇所に対して、ケツがムズムズしてムカついている人もいるのでしょうな…。
はっきりと表明している方々もいますし。

〈次回の更新予定は8月16日〉




なぐさめと励まし(11/13) 何ゆえに…書かれ、読まれ、訳されるのか?

2008年08月09日 15時34分18秒 | 第9話/なぐさめと励まし

ハリソンさんが「トリストラム・シャンディ」を読んだ理由は、
第7話第8話にありますが、デュポン先生が全訳に挑戦して、
ハリソンさんが3コマ目で言っているような活動をしているのは何ゆえなのでしょうか?

 デュポン先生も、いずれはシャンディ氏が誰なのか、
自伝小説の執筆の真の動機は何なのかをウォルポールさんの策略から知ってしまい、
失望する事になるのですが…。


ウサちんよ~。第9話も来週の土曜日が最終で、
第10話ではゴスヲタオヤジが華麗にカムバックして来るらしいぜ。

ホント?
もっと18世紀っぽい感じの、お城や宮殿やお屋敷でのパーティとか
舞踏会とかの場面
ってのがこの話では出て来ないのかしら?
何か登場人物が「ホテル」とか「カフェ」とか「アパート」とか、
今と大して変わらない場所で語り合いばっかりしてる。
そーゆう点でこの話変わってるよ~!!

ルソーさんの書いた話はへ理屈やお説教が多いって、
第9話の間中、非難の槍玉に上がり続けていたけど、
「ハリソンさんはカノ紳士」は議論のシーンがやたらと多いわよね~。

ルソー殿に限らず、18世紀の書き物は全般的に理屈っぽかったり、
著者や登場人物が説教していたり、議論の場面が多かったりするのじゃ。
作者はその雰囲気を真似ているのじゃろ。
「描いて論ぜず」はもう少し後の時代に
なってからの事なのじゃ。

18世紀を舞台にした話といったら、
私はコレが最高傑作だと思うわっ!!

「欲望の聖女(セイント)令嬢テレジア」
うわあぁぁぁっ!!タイトルからしてずげっ!!
「いい…わ、素敵よピエール、最高だわ!」(小学館フラワーコミックス・スペシャル第1巻より引用。句読点は読みやすさを考慮しての物。)
― って、ママン!俺の事言えないじゃないですか~!?
これ凄杉ですよ!スケベ度が高い男程ドン引きする確立が高いくらい凄杉ですよ!!

タッキーちゃんが、「ズバリ言うわよ!」でインリン様のM字開脚のグラビア見てホン投げちゃった時みたいねっ♪
私はね~、もうこういう年だし、そんな場面はどうでもよくって、
あの抑圧の時代にありながら、テレジアさんが陽気でおおらかで度胸満々でしたたかに生きられたって所が素敵で大好きなのよ~!
「私はロベスピエールを断頭台に送った女。」
なーんて、綺麗な顔で微笑みながら、さらりと言ってのけちゃってるんだもの。

ホントに凄いわ!
もっと大勢の人にこういう女性もいたって知ってほしくて、私もデュポン先生みたいに啓蒙活動しているのよっ!!

どーやって買ったんですか?

「どーやった」 ― って?
普通によく行く本屋で、本体+消費税を出して1巻ずつ買ったわよ。



少なくとも第1部「フランス通過編」では議論の場面が多いでしょうな。
その後は議論の場面が徐々に減って行って、
最後は普通の物語進行っぽくなって行くんじゃないかと…予想しているのですが。
今日の続きは明日。


なぐさめと励まし(10/13) 爺婆は歴史物でも書いていやがれ!

2008年08月03日 19時31分14秒 | 第9話/なぐさめと励まし

 ハリソンさんの感想 ( 実際には全然感想になっていないんだけど… )
に対するルソーさんへの弁護をしておきます。
「ヌーヴェル・エロイーズ」を書こうとする前にルソーさん、
自分が恋愛しているお年頃じゃない事は百も承知でした。
今まで恋愛で満たされたとは言えず、満たされたい欲求を抑圧するのは
耐えられないと葛藤していました。

 ルソーさんが選んだのは、自作の物語の中で恋愛の夢を叶えるという事でした。
やがて自分の描いたジュリさんを現実の女性へと投影するといった事にもなるのですが、
件の女性との関係は創作の肥やしの範囲内に留まり、
「ヌーヴェル・エロイーズ」は激愛の物語から、しだいに人としての徳を描く物語へと変貌を遂げ、
「恋人」「妻」それぞれの時代の理想の女性として描かれて来たジュリさんは、
最後に母としての理想の姿をもって、作中の多くの登場人物に
惜しまれ、さらにはもっと大勢の老若男女の読者らに惜しまれ、涙を誘いつつ、
その短い生涯を終えるのでした。



俺ダメ。再度挑戦してみたけど、飛ばし読みして、
「二人がどこでHしたか」 なんて場面ばっかり探しちゃってるよ~っ!

この子ったらも~!
中学生の時には国語辞典の中にすら、
いやらしい単語を探してしまっていた
子だったんじゃないの?

実は…そうです。え゛?
…男子ってみんなそうなんじゃないの?
ちなみに第1部の書簡54・55 (サン・プルーよりジュリへ) にありました!

ハリソンさんの話の切り替え方は、昔の女子中学生の手紙みたい。
ウサちん、今の若い女の子はメールで By the way, なんて書くのかしら?

どーかな?
わたしはモードの切り替えがめんどいからやってないけど…。

こいつら今なら絶対メールのやり取りをしょんがらしょっ中しまくってるな。
そしてそれを書籍化したら、これがホントの「ケータイ小説」だっての !

わしゃ、「年寄りの社会科見学」のつもりで、
書店へと行って勇気をふりしぼって、
近頃隆盛を極めている「ケータイ小説」とやらを拝見してみたが、
目がテンになったわい !

私は昨日の夜から始まったTVドラマの「恋空」は好きになれそうだわ !
主役の女の子は、ガッキーちゃんの映画が大ヒットでプレッシャーがあると
思うけどがんばってほしいわ~。



 来週は、「英語の会」でデュポン先生が全訳に挑戦している
英国の人気小説「トリストラム・シャンディ」の一部を朗読した話。

〈次回の更新は8月9・10日の予定〉




なぐさめと励まし(9/13) マリアンヌさんのモテたい理由

2008年08月02日 15時56分29秒 | 第9話/なぐさめと励まし

 ハリソンさん、本当に時々いい事言うんですよ。
だからお願いしますぜ。その時には心の耳を澄ませてちゃんと聞いてやっておくんなせぇ!
作者も去年は、自分で描いた主人公に対して、悪口や貶めるような事を散々言っていましたけど、
それじゃあいけないとモーレツに反省しましたわい。

 今週中思ったんですけど、
ルソーさん、「エミール」の中で、「女性の方が身分の高い結婚は道理に反して良くない。」
― ってな事を言っています。
その理由とは、「家族が社会とつながるのは家長を通してであって、家族の身分を決めるのは家長自身の身分だ。
自分より身分の低い女性と結婚すれば、自分の身分を落とさずに妻の身分を高めるが、
逆の場合は自分の地位は高まらずに妻の身分を低める。
妻は夫に従うというのが自然の秩序だ。」
― との事だそうです。

 「エミール」の方が「ヌーヴェル・エロイーズ」よりも後に書かれた物なのですが、
平民の家庭教師サン・プルーまたはS.G(本名のイニシャル)さんと男爵令嬢ジュリ・デタンジュさんが上手くいかなかったという事と、
こーいった所でルソーさんの思想が連続していたという事なんでしょうか?
そして時代は下って、アンドレ・マスト・ダイで、オスカル様も後を追うようにバスティーユ攻撃で殺されなければならなかったのでしょうか?

 身分が社会によって作られて、それがまずいのでなくしてしまい平等になればいいんだ!
…そういう世界となれば、この2カップルは上手く行ったんでしょうか?

 作者にはむしろ、そんな大げさでスケールの大きい問題ではなくて、
ただ単に性格の相性の問題だったと思うのですが…。
サン・プルーさんとジュリさんでは、六占星術の土星人と火星人みたいに、
屁理屈こね合い説教し合って、家事が進まない「非前進的相性」だろうし、
オスカル様とアンドレさんでは、オスカル様の貴族で軍人だという事を除いても、元々のプライドが高過ぎる。
かの池田理代子大先生ですら、フランス大革命を乗り越えた後の、
二人の具体的かつ円満な夫婦生活が想像できなかったからなのでは?
― と、恐れ多くも思ってしまうのでした。




第6話「カフェ・ブルトン」の予告編や今日のハリソン殿のセリフにあるように、
18世紀のカフェは男性が占拠している場所だったんじゃの。

18世紀パリにもカフェ難民がいたという話も…あった。
人生の一発逆転を狙う、今時のプレカリアート男子にとっても、
ルソーの話は納得いかないアリガタメイワクなお説教だろうぜ!
「こっちはそんな事言ってる場合じゃねぇんだよっ!!
逆於玉様っつー最後の希望のともしびを消すなーっ!!!」


18世紀のカフェって、今みたいに若い女の子がお洒落に食事してお喋りする場所じゃないのね。
…マリアンヌさんの気持ち、まだ20代だし分らなくはないんだけどね。

わたしの周りでは、女2以上で男1を取り合っているパターンが多いんだけどな…。

そして…それを横目にあぶれる非モテ男が多数。
「そんな事してないで、俺っちらのトコへ来りゃあいいのに!」
― だって。


ルソーさんの本当の敵は、頭脳明晰で論が立つ人達ではなくって、
案外ハリソンさんやウォルポールさんみたいな、カンが鋭いセンチメンタリスト系の人達なのかもしれない。
今日の続きは明日。