漫画/ハリソンさんはカノ紳士 Mr.Harrison is THE GENTLEMAN ― フランス通過編 ―(前半)

18世紀欧州が舞台の歴史ロマン。アヴィニヨンの薬屋小町クレールとハリソン&マルセル主従との運命の出会い。

ここだけの秘密(19/19) 当人達の知らぬ所で

2008年12月30日 22時45分50秒 | 第11話/ここだけの秘密

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17・18世紀の上流社会で踊られていたダンスを復元した公演を見に行ったり、講習に参加したりした事があるのですが、
何か「水鳥が水面上では優雅に浮かんでいても、実は足をせわしなくバタバタさせているのに似ている。」
といった印象を受けたのでした。

 ハリソンさんとランズバーグ夫人は、そういったダンスのステップは全く踏んでいません。
かといって、下々の人々が祭や酒場や空き地や家の庭で、
フィドルだのパイプだのの伴奏で踊ってるような踊り方でもありませんでした。
音楽には合っていて、現代の人が見たとしたら不自然には見えないような踊り方なのですが、
1765年の10月22日頃にはさぞかし奇異に見えた事でしょう。

 来年は第12~15話分がアップの予定です。
ハリソンさんとマルセル、ウォルポールさんとデュポン先生を除いて、
去年までに登場した人達は一旦舞台裏へと下がり、ガラリと新しい人達に入れ替わっていただきます。


1コマ目の右下に本当にちょこっとだけウォルポールさんがいるけど、
「嫉妬で炎上」って感じじゃないんじゃない?

普通は、この後ウォルポールさんのアップになって、
イライラしているって事と、そこから導き出された決意が心の声として書かれるもんだよ。

それから、昔のマンガならば、バックと人物の目で炎が燃え盛っている。

私が若い頃に人気があった方の「巨人の星」が代表ね。
そういえば、ウォルポールさんって、花形満みたいなモンよね。
でも、ハリソンさんは…。

星飛雄馬のような根性は…あったらこんな事してねぇ筈。

来年はアップできるギリギリの「際どい表現」が出て来るかもしれないとの事じゃ。

扱っている内容が内容だからね。
いつかは出るだろうと思ってるよ。



それでも作者は、「トリシャン」に関係した作品の作者・発言をした全て人々の中で、
最も上品にやってのけるという自信があるのでした。( ← それって、全然自慢にならないのでは…?)

 第12話では、ウォルポールさんが主人公のハリソンさんを差し置いて、
デュポン先生と「ハリソンさんの生い立ちやトリシャン疑惑」についてを話しまくります。

〈次回の更新は1月3・4日の予定。「今までのあらすじ」&「2009年度計画」&「第12話予告編」となります。〉



ここだけの秘密(18/19) 楽しんでダ~ンス!

2008年12月28日 16時46分05秒 | 第11話/ここだけの秘密

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昨日、ママンが「ハリソンさんは、ヅラから解いたリボンをポケットにしまっている。」と言っていましたが、
正解は、「帽子に縛り付けて、パンパグラスの穂を挿せるようにしていた。」でした。

 昨日のページでは、ハリソンさんとランズバーグ夫人は、フランス語で楽団員と話をしています。
( 前にも書きましたが、ゴシック体の文字はフランス語、正楷書体が英語です。)
だから楽団員は現地の人達です。

 18世紀のフランスでは、イタリア音楽とフランス音楽界との摩擦が起こります。
50年代から60年代前半では、フランス音楽界大御所のシャン・フィリップ・ラモー(1683-1764)さんがフランス音楽派の旗頭、
イタリア音楽派は第9話に出て来た「ヌーヴェル・エロイーズ」作者であるジャン・ジャック・ルソーさんが、
音楽の才能もあって先鋒でした。
ルソーさん、いろんな人と仲悪いんだね~。
ヴォルテールさんとかヒュームさんとか…ウォルポールさんからも嫌われて第10話にあったように意地悪されているし。

 その後もモーツァルトさんが、雇用主の大司教様がウザったいってんで、パリに転職活動に出ていた頃にも、
今度はフルートを吹く人には憧れの曲の一つである「精霊の踊り」の作曲者、
クリストフ・ヴィリバルド・グルック(1714-87)さん(王妃のアントワネット様にオーストリアから呼ばれていたらしい。
「ベルばら」第1巻の最初の方に出て来る、アントワネット様のピアノ教師はこの人です。)
とイタリア人のニコロ・ピッチーニ(1728-1800)さんとの対立があったようです。

 英国ではグレート・ヘンデルどんが、英語の歌詞で歌われる「メサイア」などの宗教曲を作り、確固たる地位を築く以前は、
イタリア風のオペラを作りまくっては、反対派の人達の壮絶な苛め工作に遭っていて、
イタリア・オペラ企業は2度も破産してしまったようです。
イタリア音楽は欧州各国で熱狂的に迎えられると同時に、拒絶反応もまた相当激しかったという事なんでしょう。

 まぁ、でも、この漫画の楽団員さん達は、頼まれた仕事だからと、
この際イタリア音楽に対する個人的好き嫌いは出さずに割り切ってやってるんでしょう。
フランス音楽界では両国の音楽を融合させようという動きもあったようですし。
フランソワ・クープラン(1668-1733)さんは、昨日も出て来たコレルリさんを称える曲を作っています。

 ハリソンさんは第4話で、本場のイタリア音楽を聴ける事を楽しみにしていたのに、
「小賢し男」の余計な自慢話のせいで、ガックリしてしまったというエピソードの持ち主で、
現代だったら凄い値段だと思われる、クレモナ製のヴァイオリンも持っているのでした~。


あら、そうだったの。
確かに帽子に白い線が一つ加わっているわね。

俺、ダンスっていうと、
今だに辛い思い出がある…。

えっ、なぁに。
オバさんに話してごらん。

小学6年生の時に、運動会のフォーク・ダンスの練習で、
本当は好きだった女の子に、「こいつとは踊りたくない。」
とか大声で言って嫌われてしまった…。

ガキね~。
 
思春期少年の見栄じゃな。


中学校も高校も一緒で、それから誤解を解こうとがんばったけど、
6年間1度も同じクラスにもなれなかったし、
大廊下とかで俺の姿を見ただけで、顔を引きつらせてコソコソと避けてた。
高校卒業してから1度見かけたけど、夫婦で2歳くらいの子供と手をつないで歩いていた。

悲恋だわ~。

その時その時に素直になれなかったら、恋愛は終わりだって
いつも覚悟してないとダメなんだよ!

年取ったらね、既婚・未婚問わず生活に精一杯で、
疲れてて恋愛する気も無くなるもんなんだから、

できる時に、自分の気持ちに素直になってしておくもんよ。
これから気を付けるのね。

はいっ!

パンディ、いい返事してるッ。

わしの辺まで来ると、もう動けるだけでありがたいという所じゃからな。
人生の「春の祭」「夏の祭」「秋の祭」「冬の祭」それぞれその時に心を入れて楽しんでおかんと。
人生の秋に入った者が後から後悔して、「春の祭」「夏の祭」をしようとしても、
ぴったりと合った時期の何倍も苦労をして行わなくてはならないのじゃ。



ハリソンさん、これから「トリストラム・シャンディ」の読者達によって、ひどい目に遭わされる事になって行くのですが、
その前の楽しいひと時といった所でしょうか。

今日の続きはあさって30日。



ここだけの秘密(17/19) いざ、ダンスホールへ!

2008年12月27日 13時39分42秒 | 第11話/ここだけの秘密

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これから2人が踊ろうとしている曲なんですが、
アルカンジェロ・コレルリ(1653-1713)というイタリアの作曲家の作品6-4を、
時代に合うように編曲した物で、そこからの第3楽章アレグロ-アレグロです。
「アレグロ」は演奏時の速度指定という訳で、そもそも踊り用に作られた音楽ではありません。

 合奏協奏曲は18世紀の前半に栄えた曲種で、複数の楽器奏者が独奏部を受け持ち、
弦楽オーケストラとの音量と音質の対比を聴いて楽しむという、バロック音楽特有の曲種で、
その後このジャンルは廃れてしまいました。

 コレルリさん、17世紀後半と18世紀の初期が活躍の舞台となった作曲家ですが、
「トリストラム・シャンディ」に出て来る、「リラブレロ」の作曲者、
「英国のモーツァルト」ことヘンリー・パーセル(1659-95)さんと並んで、
18世紀後半の英国でも、音楽会のロビーに楽聖・巨匠の一人としての肖像画が飾られるくらいの尊敬を受けていたようです。

 作者、ローマに行った時に、パンティオンに居ながらコレルリさんのお墓がある事に気付かず、
手を合わせる事ができませんでした。
そういう訳だから、ヴァイオリンの腕前があまり上達せず、
挙句は病気から来る激痛で楽器を構える事もできなくなって、
教室もやめてしまいました。

 ヴァイオリン音楽の功労者らしく、教則本にもコレルリさんの曲は載っていました。
曲の中で一番高い音、一番右側の弦を小指を伸ばして「ド」の音を押さえなくてはならなかったのですが、なかなか届かず、
先生から、「手がどんな格好になってもいいから、ともかくは押さえられるように。」と言われました。
でも、模範演奏する先生の指を見ると、やっぱり音大出てて、学生コンクールでも優勝してて、
劇場付属の交響楽団の1st ヴァイオリン弾いてるだけあって、すごくきれいな指の伸ばし方をして、楽々音を出していました。


ハリソンさん、また髪型変わってるー。
リボンはポケットにでもしまってあるのね。

昔のヴァイオリンは、漫画の中の楽団員が持っているような、
顎当てが付いていない形だったそうじゃ。
今でもアイルランドの伝統音楽などでは、顎当てが付いていないヴァイオリンを
「フィドル」と呼んで弾いているそうじゃ。

英語で fiddlestick って、
「へっ、くっだらねー!」とかいう意味だってさ。
「トリストラム・シャンディ」の中でも、ウォドマンのオバちゃんが、
9巻でトゥビーのオヤジの言い草に対して叫んでいた。

基本的には同じ楽器の筈なのに、
ヴァイオリンだと尊敬されて、フィドルだと差別されているようじゃの。

ヴァイオリンだとしかめっ面で難しい曲を弾いて、
フィドルだと「楽しければいいじゃん。」って感じなのね、きっと。
結局何でも真面目そうに見える方がいい扱いを受けるものだしね。

 それはそうと、明日は Shall we ダンス?だよ ♪



今見てみると、楽団員の手が不自然に見えかねません。
ヴァイオリンは左手で持つものですが、楽団員の皆様は右手を添えていたり、掴んでいたりします。
曲の合間に楽器に付いた、松脂粉を布で拭いていたり、ねじを締めて調弦
(実は左手でもできるのですが…。)していたとでも思っていて下さい。

今日の続きは明日。






 


 
 


ここだけの秘密(16/19) 二人ハ何処デ何シテル?

2008年12月21日 10時38分17秒 | 第11話/ここだけの秘密

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親睦会が2時間半くらいだとして、第10話でハリソンさんがウォルポールさん&ヒューム氏と別れるまでが到着から25分くらい、
ランズバーグ夫人と人工池に着くまでが30分くらい、帰りにまた寄り道や、植物観察や話をしながら30分くらいかけて帰ったとすると、
散会までの20分くらいを引いたら池の畔では45分くらい居た事になります。

 …という事は、作者はそこで2人のしていた事について、何でもかんでも全部は描いていない、
省略している所があるという事になりますが、他には何をしていたのでしょうか?
ちょっと想像してみて下さい。

 ジョージさんの妹のナンナ姫は、世話好きのウォルポールさんが子供代わりに後見している、
ウォルポールさんの曾祖父母を高祖父母とする分家の跡取り息子と、この親睦会でお見合いをしましたが、
うまくまとまりそうな模様です。

 ハリソンさん、ハッキリと表現していませんが、ウォルポールさんの事を雅やかだと憧れる一方、下世話でウザいとも思っています。
これからウォルポールさんが、ブリングストン家の人々とハリソンさんとの親密さを引っかき回すような事をして来ますが、
ハリソンさんは自分の矛盾した感情とどのように対峙した上でウォルポールさんと対決し、決着を付けるのでしょうか?


何が「ちょっと想像してみて下さい」だよ!
思わせぶりな事言いやがって。
どうせ女社長が「令嬢テレジア」みてぇに、
素ッ裸の上に着ているドレスをいきなり脱ぎ出すなんてマネはしてねぇんだろうよさ!

まあね。
「あらいいのよ、私は何も身につけなくても。私自身が宝石だもの。」 (フラワーコミックス・スペシャル第5巻85・86ページより引用。句読点は読みやすさを考慮して加えた。)
なんてランズバーグ夫人のキャラではないもんね。

何でお外Hの展開になるんだかが分んない。

最初っからそれを主題と標榜している話なら、そうなっても致し方あるまいが、
この話のこの場ででそういう展開が出て来たとしたら、相当調子っぱずれとなるの。

「トリストラム・シャンディ」4巻の25章で言ってるのの逆パターンって事ですか?
〈 話の他の部分と比べると会話の内容・様式がひどく低い所にあるので、
そのために他の所の価値までがひどく低下してしまう 〉って事か?

1曲の歌を口ずさむように始終調子が合っているのが大事で、
それが合っていれば、人がそれを高いと思おうが低いと思おうがどうでもいい。」って所を言っておるのじゃ。


来週は第11話完結で、2008年アップ分が終了。
ハリソンさんとランズバーグ夫人が「規則に従わない自分勝手流創作ダンス」を踊り出し、
会場の人達が唖然。
〈次回の更新は12月27・28・30日の予定〉







 


ここだけの秘密(15/19) パンパスグラスなんぢゃない?

2008年12月20日 21時39分47秒 | 第11話/ここだけの秘密

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作者は南フランスのアルルでパンパスグラスを見かけました。
日本でも秋から初冬にかけて見かける美しい穂草で、シロガネヨシとか西洋ススキとかとも呼ばれています。
原産地はアルゼンチンやブラジル南部のパンパ(大草原)なのだそうですが、
18世紀の中頃までに、スペインやポルトガル経由で、本当にフランスの帰化植物となっていたのかは定かではありません。

 アルルでは他に、「可愛そうなマリー」さん(「トリストラム・シャンディ」&「センティメンタル・ジャーニィ」の中で「狂女マライア」と呼ばれている若い女性。)
が今にも出て来そうな、いとロマンテイックなポプラの木立も見かけました。


アラベラって人、ハリソンさんの元カノなのかな?

それっぽいわね。
ハリソンさんって、頭も品もいい女の人が好きみたいよね。
アラベラって人もそんな感じなんじゃないの?

ローレンス・スターンも「青鞜派系」の女性が好みだったらしいの~。

俺は今年芸能界で人気をさらった、スザンヌとかのおバカ系の方が大好きだ!
綾瀬はるかとかの天然系も大好きだ!!

それにしても、 ハリソンさんって、今の所はいい人にしか見えないんだけど。
この外見からは、心の中に怒りが充満しているなんてとっても思えないな。

男性ホルモン値が、定期的に医者へ行って補充してもらった方が良さげなくらい、
極端に低そうだよな。

でも、そういう所が周りの主婦達に人気みたいって感じなんでしょ?
前に「自分のダンナより大好き!」って平気で言っちゃう人もいるって、
作者さんが書いていたもんね。


明日はブリングストン伯爵家のメンバーが、ハリソンさんとランズバーグ夫人のフェイドアウトに気付きます。


ここだけの秘密(14/19) この落とし前はどう付ける?

2008年12月14日 11時39分49秒 | 第11話/ここだけの秘密

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デュポン先生は、第7話中の「ハリソンさんのトリシャン愛憎の物語が幕を開く」の回で、
〈 トリストラム・シャンディ氏が本当の生涯を書いていないのでは? 〉という疑いを持っています。
シャンディ氏は出生の折に、主治医による分娩鉗子の使用ミスが原因で鼻が潰れてしまい、
5歳の時には女中のウッカリに叔父&his召使いの趣味への異常なまでの傾倒ぶりが重なって、
不幸な事故に遭い、21世紀に至るまで、読者に同情される所か、ひどい笑われ者になり続けているのでした。

 …ところが見ての通りで、ハリソンさんときたら、どっちかっちゅーと鼻筋が通っていて、
トリシャンの話から想像される容姿全体の醜さとは程遠い、高身長・金髪・青い目の美紳士なのでした。
不幸な事故の影響を臭わせる言動も、今の所はしていないのではと思われますが、
事故がホントかウソかをめぐって、ハリソンさんにトンデモない罠をしかけようとする御連中がイタリアで現れ、
ナポリの幻惑の城の中と、復活祭前後のローマ市中で大騒動が繰り広げられるのでした。


「トリストラム・シャンディ」読んでて、「俺はそこまでひどくないからな。」
― って、見下せるから楽しいとか好きだとか思って読んでいる人がいたとしたら、
その人こそサイアクだわ~。

魔法の鏡にその人の心の姿が映ればいいのに。
きっとシャンディさんよりずっと酷くてビックリだと思うよ。

昔も今もコワい医療ミス。今なら損害賠償モン。
新聞・雑誌・ネットにもいろいろ書かれて病院の方も潰れる。

分娩鉗子は使用するタイミングが決まっているんじゃが、
スロップ医師は自分の能力を誇示するために、違う箇所で使ってしまったのではないのかの?
手順を守れば、ちゃんと頭の両耳がある方を挟めるような設計になっている筈なのじゃが…。

会社でも時々見かける、「能力を過信するオヤジの失敗はすげっコワ!」だぜ。

昔も今もとんでもないお医者さんがいたのね。
私が娘を産んだ時のお医者さんはいい人で良かったわ。


親睦会会場では、ハリソンさんとランズバーグ夫人の2人がいない事に気が付く人がいます。
ハリソンさんはランズバーグ夫人へと会場に戻ってある事をしようと持ちかけるのでした。
〈 次回の更新予定は12月20・21日 〉


ここだけの秘密(13/19) 嘘つきは作家の始まり

2008年12月13日 14時56分44秒 | 第11話/ここだけの秘密
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自分の半生が人並みの幸せにすら恵まれていないと、
人の輪の中に入って気付いた時、人はどうするものなのでしょうか?

 ある人は人の輪から遠ざかり、
「せめて今後は自分で自分を幸せにして行こう、他者の価値観などアウト・オブ・眼中で、自分の楽しいと思う事をして残りの人生を過ごそう。」
― と決心し、実行するのでしょう。

 ある人は、人の輪に残るのですが、
人並みの幸せに恵まれた人々との格差で自分が惨めにならないために、
必死で差を埋める作り話の台本を考え、それをやめようと思うきっかけに出会えない限り、残りの生涯中、演じ続けるのでしょう。

 その作り話も2通りあるのですが、
ハリソンさんの場合のように、最初っから「こいつらとの付き合い自体がフィクションなんだから、これでいいんだ。」と割り切り、
奇を衒う話を作っては、派手なパフォーマンス付きで、聞かれなくても自ら進んで話してしまう場合と、
ランズバーグ夫人の場合のように、普通の人生はどのようなものなのかと、本を読んだり、他者の話を聞いたり、周囲の人を観察したりして、
わざわざ想像した上で、いかにもそれらしく頭の中で再構成して、
人に聞かれれば話すというだけに留めなくてはならない場合とがあります。



でも、わたしがそんな事してたら、きっと友達できないよ~。

でも、結婚はできるのよね~。
ウサちんも年取ったら理由が分ると思うけど!

そうでなかったら、詐欺を働くヤツラなんて存在できないはずだ!!

 既婚者の100パーセントが、「程度はいろいろあるんだろうけど、結婚詐欺の前科者」と断言していいわ。
「だまくらかしているのは相手もお互い様」という事で、大方の人が法には訴えないだけね。

結局の所、未婚の後期独身者らは、
「正直過ぎた」のが独り身である事の最大の原因なのかもしれん。

 そう考えると、ウォルポールさんはある意味カワイイのかもしれないという事ね!

そう考えると、ハリソンは同情の余地無くカワイく無さげと思えるような過去展開がアリげ…。



ハリソンさんの波乱の過去を知ったら、↑上の4名も、閲覧者の方々もどう思う事でしょう?
「全てお前の弱さが悪いんだろうが!」とイライラするのでしょうか?
今日の続きは明日。





ここだけの秘密(12/19) 辻褄合わせの超絶技巧

2008年12月07日 18時51分32秒 | 第11話/ここだけの秘密

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昨日の話の続きですが、「トリストラム・シャンディ」の1760年代当時の評判は、ハリソンさんが言っているような感じでした。

 「ライオネスのトリストラムの話」なんですが、ランズバーグ夫人はコーンウォール王家の末裔なので、
ご先祖様のお家騒動のお話なのかもしれません。
― と言っても、伝説の時代の話なので、本当にそんな事があったのか、
今となっては(18世紀中頃当時でも)誰も分りませんが。

 ライオネスのトリストラムは、母親の胎内にいる時に父親を殺害され、
母親も出産直後に死亡したという事情から「悲しみの子」という意味の名前が付けられたようです。
(父親が女性の妖精に誘拐され、母親が捜索中に産気付き、出産直後に死亡したという説もアリ。)
イケメンで何でもかんでもできるヤツで、親代わりの伯父さんである当時のコーンウォール王にも、
かのアーサー王にも信頼されていたようなのですが、一方ではパッとしない人々の妬みの的にもなりやすく、
そういった人達に伯父さんのお妃様との不倫を暴かれて追放刑となります。
ブルターニュ王の娘と逆玉結婚して、少しは運が持ち直したかに見えたのですが、
最後は妻にも過去の不倫がバレて、妻の嫉妬から出た嘘がもとで命を落としてしまうのでした。

 どうも中世起源のこの話から、「トリストラム」という名前は出て来て、
この話が大流行した中世では、「パーシー」だの「オーリー」だの、
ライオネスのトリストラム以上に武勇の誉れ高い騎士道物語の主人公は他にいくらでもいるのに、
この名前を息子に付ける親達の数が突出して多かったようなのでした。

 キリスト教国では、聖人名か、昔からある名前を洗礼時に付けるようです。
ローマ式定書では、異教の英雄や偶像神の名前は用いないようにと司祭に指示しているとの事です。
…どうも「トリストラム」という名は、さらに時代を遡って大元が古代の聖人名だったという物ではないようです。

 聖人名ではなくても、キリスト教にちなんだ名なら付けても全く問題ナシのようで、
イエス・キリスト様の受難にちなんだDolores(悲しみ)という名前もあるようです。
年末の日本で、最近は第9のように頻繁に演奏されるようになって来た、
グレート・ヘンデルどん作曲の「メサイア」でもイエス様の事は、
「悲しみの人 ( ただし英語は a man of sorrows ) で…」と歌われていますしね。
「トリストラム」という名もそのお仲間なんだって事ならば、クリスチャンとして逆に名誉ですらあるんしょうが…。

 ウォルター・シャンディさん、「トリシャン」の話の中では具体的に、
なぜ「トリストラム」の名を最悪の名と嫌うのかが書かれていません。
ウォルターさんが少なくとも「トリストラム・ド・ライオネスの生涯と意見」を知っていたというのならば、
この名前の絶滅を目論んだとしても、作者には何とか理解やら納得やらができるのですが。


「アマンドゥスとアマンダ」の話を「トリストラム・シャンディ」で読んでみたけど、
離れ離れになった2人が、めぐりめぐって最後にリヨンの城門で出会った時、
アマンドゥス : 「運命って信じる?」
アマンダ : 「信じる!」

― とかとも、言ったのかしらね?

瑛太さんと蒼井優ちゃんのCMみたい!

昨日の話の続きで、「ハリソンとシャンディは双子説」はどうだろか?
こっちは「アダプテーション」みてぇだ!

「古畑任三郎」の最終話「ラスト・ダンス」のもみじ・かえで双子姉妹みたいなのかもよ。
もしくは双子の兄だか弟だかが、「犬上家の一族」の助清みたいな感じに顔がなってしまってて、
文才があって世間の人気者になりたいのに人前に出られなくて、
「なんで俺がこんなで、お前がこうなんだ!」とか言って、
ハリソンさんをマネージャーにして苛めながらこき使っているとか…。

しかし、ホラー的な展開だとすると…「もしかしたらコレなのでは?」
― というのをわしは今思い付いたぞ。

え゛っ…何?



来週はハリソンさんが「自分の生涯の不幸」について、大雑把に語ります。
〈次回の更新は12月131・14日の予定〉












 







ここだけの秘密(11/19) 平仄(ひょうそく)整合の魔術

2008年12月06日 14時49分54秒 | 第11話/ここだけの秘密
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― そして、今日の副々題は「こんなにアッサリ認めていいのか?」です。


 えーっ、でも「登場人物紹介」では、ハリソンさんとシャンディさんの誕生日が違ってたよー。
誕生日が違うと運命も違うんだよ。

誕生日ぐらい変えたってどうって事ないわよ!
どうせ「何日」程度の事でしょ!
たかが2週間くらいじゃない。
私なんて、「年単位」でしている事あるから!!

…この点について、僕のコメントは控えさせていただきます。

しかし、作者は第7話の最後のページで、「お迎えが来る」と言っておったぞ。
「お迎え」と言ったらもう〈アレ〉しかないではないか!

イヤだわ、縁起でもない!

あれだな、マーティン・ローソンのトリストラム・シャンディ
やって来て、「よくも俺を騙(かた)ったな~!」
― ってハリソンがブッ殺される
んだ。
絶対そうだぜ!

何かこっちの、ローソンさんが描いた方の絵の人、妖怪みたいだよね。

「 ♪ きっと来る~ ♪ 」とか言ってっけど、
まさかTVはないだろうし、ゴテゴテ模様の金ピカ額に入って
飾ってある絵の中からでも出て来んのかな?

18世紀にTVは、カサノバ殿の頭の中にしかなかったのじゃろうな。

なーに、この絵っ?!
「ゲゲゲの鬼太郎」みたいな漫画描いたらゼッタイ受けるわよ!
まだ描いてないのかしら?描いてないなら描けばいいのにィ~!!


マーティン・ローソン作「漫画版トリストラム・シャンディ」について詳しくお知りになりたい方は、
サイト検索するか、作者みたいに下記のメモ書きを持って、洋書の輸入をしてくれる書店に頼んで入手にトライしてみて下さい。
もちろんご自分で欧米行って買って下さってもいいんですけどね。
前にも書きましたが、値段は¥4980(平成15年当時)でした。
高っ!美術書かよ!?


Publisher : Overlook Press
ISBN : 0879517689
“ The Life and Opinions of Tristram Shandy , Gentleman ”
by Martin Rowson

 …ところで、ランズバーグ夫人、「トリストラム・シャンディ」を読んだ事が
あるんでしょうか?18世紀当時は女子が読むべきではない本でしたのに。
今日の続きは明日。