漫画/ハリソンさんはカノ紳士 Mr.Harrison is THE GENTLEMAN ― フランス通過編 ―(前半)

18世紀欧州が舞台の歴史ロマン。アヴィニヨンの薬屋小町クレールとハリソン&マルセル主従との運命の出会い。

はぢめてのブチ切れ(8/10) 今、日本でやったら逮捕されます!

2007年10月28日 13時53分37秒 | 第5話/はぢめてのブチ切れ

 ・・・軽犯罪法か各条例に引っかかるのではないかと。
L .スターンの小説では、壺を使うのも省略して、いきなり上下スライド式の窓から放水して、
ギョチーヌの刑に遭った、まさに名前通りの「可愛そうな子」がいましたけどね。
ちなみにギョチーヌは1792年3月に革命期フランスで完成しましたが、
それ以前の約30年間にそういった物を、この小説のエピソードから誰も考え付けなかったんですかね?
まあ、当時の犯罪人に対しては、今みたいに人道的に扱おうなんて考えは、とんとなかったようですけどね。


 ハリソンさんは今までを見ての通り、インテリで氏育ちも良いのですが、トロくさいとナメられがちな傾向があるようです。
第2話の英国ホテルの経営者デサン氏や第4話のコザカシヲトコ(仮名)の態度にも何となくそれが出ています。
「おめぇみたいなヤツは四の五の言わずにオレ様の言う事を聞いてりゃあいいんだョ!」 
―みたいなトコですかね。


 どちらもハリソンさんよりずっと賤しい出自なんですが、
ハリソンさんよりずっとお金持ちです。だからハリソンさんはハッキリとした形では抵抗しません。
でも抵抗しない事で、自分のそういう精神的世界が、金銭的世界や出自の賤しさを補うために
即席で身に付けた知識&情報の世界よりも上品で優位だという価値感を、控えめに表現してはいます。
でも、マー坊は明らかに出自も財産も自分より下で、狭い地域の暮らししか知らないし、
自分からお給料をもらう立場です。
そういうヤツにまで、注意力散漫でトロくさいとバカにされて、
「助けてやってる」とこれから扱われるんぢゃあたまらないってんで、カチン☆と来たんですわな。

 しかし・・・腐ってもやっぱり英国紳士の一人、それをストレートに表す訳にも行かないんで、
ハリソンさん的歪んだ方向性で放射させてしまいました。
しかもこれは、端から見られる行動のトロさとは反対に、脳内処理と神経系統への命令の伝達は、すごい高速で行われています。
―だから他者にはハリソンさんの奇矯さが理解不能となります。

これから何度も、こういったハリソンさんの困った言動が出現します。
ハリソンさんの「改心」については、それを描く時まで作者&閲覧者の方々が生きていれば、
―日の目を見る事もあるかもしれませんが。



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トロワ火山噴火の兆しが・・・次回は遂にマー坊がハリソンの言動にブチ切れます!
〈次回の更新は11月3・4日です。〉




はぢめてのブチ切れ(7/10) 天(あめ)より降りたる金色(こんじき)の・・・

2007年10月27日 21時40分54秒 | 第5話/はぢめてのブチ切れ

 ―何だか物々しい古風なタイトル。
別に「危機一髪!」でいいぢゃないか
―と思ってはみましたが。
・・・でも、家にある渡辺一夫さん訳の「ガルガンチュワ物語」(岩波文庫)に合わせてみたものですから。

 また宗教音楽のタイトルを思わせるような雰囲気もあって、実はどういう事かと分れば、
実に不謹慎なタイトルでもあるのですが。

 ともあれ、当時は「水に注意!」と言ってから、窓の下へとある物を撒きました。
マー坊のおかげでハリソンさんは被害をまぬがれましたが、
この被害には、はヴォルテール(1694-1778)作の哲学小説の主人公、
カンディードさんもオランダで(注意なしでいきなり罰として)遭っています。


 ところで、ハリソンさんがマー坊に助けてもらっているのに、
「マー坊に対してちょっとカチン☆と来ている。」
―と書いたら、「何でなんだョ!?」と信じがたいですか?
共感や感情移入のしにくい、いわゆる「キラワレる主人公」を作者が書くのも、
受け手が理解と受容するのも難しい所なんですわな。
ある程度の人生経験も必要ですし。
・・・それもあって年齢制限みたいな事も書いてあるんですが。



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その後、ハリソンがとった奇矯な言動とは・・・?今日の続きは明日。





はぢめてのブチ切れ(6/10) ・・・そしてまたもや転調!

2007年10月21日 10時46分29秒 | 第5話/はぢめてのブチ切れ

 ハリソンさんも、険悪な雰囲気は早いトコ終わらせたいと思ったのか、
突然調性を短調から長調へとスッパリと切り替えてしまいました。

 ・・・まあ、でもハリソンさんが若い頃にリアルタイムで好き好んで聴いていた音楽といえば、
今で言う所の「バロック音楽」ですから、
感受性の強さから、その形式の影響を受けているのかもしれません。
ヴィヴァルディ(1678-1741)やアルビノーニ(1671-1751)などのイタリア系コンチェルトを何曲か聴くと、
どんな感じか分かりやすいかもしれません。当時の英国ではイタリア系音楽が受けていました。


 若くなくなってからは、今で言う所の「前古典派音楽」を聴いているので、
「バロック音楽的明暗対比感情表現」を引きずりつつ、時代の最先端である
「前古典派音楽的多感表現」をも身に付けてしまっているのかもしれません。
大バッハ様の次男坊、カール・フィリップ・エマヌエル(1714-88)が「多感表現」にかけては第一人者だったらしいです。


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この後、遂にハリソン&マー坊主従に珍事が襲います!
**** なので、一応ご警告をしておきます。
( * 印はカタカナ4文字・英語では12文字ですが、中高生向きの辞書には載っていない単語です。)


〈次回の更新は10月27・28日です。〉




はぢめてのブチ切れ(5/10) 憂い顔の奇士

2007年10月20日 15時04分23秒 | 第5話/はぢめてのブチ切れ

 ハリソンさんは、ドン・キホーテの別名「憂い顔の騎士」ならぬ、「憂い顔の奇士」です。
時タマこういう表情をしては、婦女子や青モノ男子を困惑させるのが実に上手なのですが、
自分の「目力」に自信があって、確信犯的にやっているという訳ではないようです。
そう言ゃあ、L.スターンの小説「トリストラム・シャンディ」で、
「目力」を利用して確信犯的行動をとった、スゴい名前のオバさんがいたっけな。


 後は、涙を湛えた目で相手をぢっと見て黙らせるのも上手そうです。
・・・まだそうシーンは描いていませんが。
←これらの絵文字ぢゃあ、そういう微妙な表現ができませんがな~っ。


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・・・今日の続きは明日。


はぢめてのブチ切れ(4/10) バツイチ野郎ハリソン  

2007年10月14日 17時58分49秒 | 第5話/はぢめてのブチ切れ

 18世紀頃の英国でも、離婚する事はできたようですが、
超上流階級の人々が大金と引き換えにできる、法律に則った離婚と、
下流の人々が行っていた、何種類かの驚異的方法があったようです。

 そのどちらにも属さない、金や名誉が中途半端・・・いや、ほどほどにあるくらいの階層の人々にとっての離婚は、
―たとえ気持ちはやる気満々でも―実行はできませんでした。

 それではどうしていたかというと、
「別居して配偶者が死ぬのを待つ」しかありませんでした。

 相手が亡くなった後、再婚したければ、もしくは再婚するしかなければ―しても良し、
年金や分与・相続・私有財産等があって、生活に困るという事はないので、
後の人生は、心が通わず、運を吸い取り、
言葉尻を捕らえては足を引っ張るかもしれない異性とはもう関わらずに、
―自由気ままに暮らしたければそれも良し。―といったものでした。

 マー坊のセリフ、失礼無礼極まりないのですが、
同感だと思った人も結構いらっしゃるのかもしれません。
ニャッ。

 ハリソンさん、もうこの世に血の繋がった人は誰もいないようですね。
もしかしたら「年が離れていて、亡くなったお兄さんがいる。」―と思った人がいらっしゃるかもしれませんが・・・一人っ子だったんです。

 ところで、上記の下流の人々が行っていた「驚異的離婚の方法」ですが、
逃亡や重婚の他に、「妻売り」なんてのもあったそうです。
人の集まる所へと、夫が妻の首に縄をかけて引っ張って行って、競売にかけたようですな。
今なら3つとも「犯罪」だヮーな。

 でも、人生はどう転ぶか分からないものです。
貴族に落札されて、後に正式な妻となり、社交界に君臨したスゴイ女性もいたそうです。
・・・つくづく不運な元ダンナ、ご苦労サマですな。


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〈次回の更新は10月20・21日です。〉

はぢめてのブチ切れ(3/10) 妃殿下とちい姫と冬忍ぶ未亡人 

2007年10月13日 15時13分19秒 | 第5話/はぢめてのブチ切れ

 ハリソンさんとブリングストン卿の話にもあるように、
この後三人の貴婦人が登場します。初登場は第6話になります。

 この貴婦人達の心の動きが、ハリソンさんの将来の運命に対して、重大な影響を及ぼしていく事になります。


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はぢめてのブチ切れ(2/10) ・・・そしてマルセル君は魚飯屋王子!?

2007年10月07日 10時31分14秒 | 第5話/はぢめてのブチ切れ

 マー坊って料理人なのでしょうか?
出身地は港町なので、魚関係の職業の人も多かったんでしょう。
・・・どうやら兵隊さんからの転職だったんではないようですね。


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〈次回の更新は10月13.14日の予定です。〉

  

はぢめてのブチ切れ(1/10) 英国青年貴族、ブリングストン伯爵様御登場

2007年10月06日 19時00分54秒 | 第5話/はぢめてのブチ切れ

 今まで物語の舞台背景や参考資料について、色々長々とお話して来ましたが、
一応これだけは必要かな―といった所は前回まででお話できましたので、
第5話からは、通常の漫画がある回の作者のお話は、少し控えめに
するようにします。

 それというのも、これ以上作者が饒舌を続けてしまうと、今後の物語の展開内容に
関わる重要事項をウッカリ喋ってしまいかねないからなのです。

 ただ「ここは説明の必要がある。」と判断した箇所は大いに喋りますし、
「作者の喋りがあった方が受けがいいんでねェの?!」という事が判明した場合は、
お喋りの復活を検討します。


 現時点では、これからの長文お喋りは、各話の最後に来る「○○&エッセイ」の回でしようかと考えています。
今まで漫画よりお喋りの方に期待していた方がいらっしゃったら、
その回まで封印してしまう事になってしまいますが、どうかお待ちください。


〈今回の内容に関するお喋りです〉
 18世紀のパリには、すでにカフェがあったんですね~。
ブリングストン卿は、ハリソンさんのどういった甥っ子さんなんでしょうね?



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〈次回の更新は10月7日です。〉