漫画/ハリソンさんはカノ紳士 Mr.Harrison is THE GENTLEMAN ― フランス通過編 ―(前半)

18世紀欧州が舞台の歴史ロマン。アヴィニヨンの薬屋小町クレールとハリソン&マルセル主従との運命の出会い。

第9話予告編おまけ

2008年06月30日 06時43分36秒 | その他
 トリストラム・シャンディ氏や、ホレイス・ウォルポール氏や、
その他の同業者達に埋もれてしまった冴えない作家のハリソンさんが、
最後の望みをかけて書こうとする作品とは―?

〈第9話の開始は7月6日(日)からです。〉

第9話登場人物紹介

2008年06月30日 06時42分55秒 | 第9話/なぐさめと励まし

 ただし、今回ウォルポール氏は、表舞台には出ません。
デュポン氏も漫画の中では、姿を現しません。

第9話/なぐさめと励まし 予告編

2008年06月30日 06時42分23秒 | 第9話/なぐさめと励まし

 18世紀欧米小説最大のヒット作は、
ジャン・ジャック・ルソー(1712-1778)の
「ヌーヴェル・エロイーズ」でした。

 1760年の年末に、オランダで印刷され、
61年の1月28日に発売されました。
英国のロンドンでも売られたのだそうです。

 スイスに住む男爵令嬢ジュリは、
家庭教師のサン・プルーと恋愛関係になり、
子供も授かりますが、
両親の反対で引き裂かれ、流産の後に、
父の友人で30歳近くも年上のロシア人貴族、
ヴォルマール男爵の妻となり、男の子が2人生まれます。

 世界旅行から帰ったサン・プルーは、ヴォルマール家に
迎えられ、子供達の教育係となります。
サン・プルーはヴォルマール氏と互いに尊敬し合いつつも、
ジュリへは未練があり、危険と背中合わせの生活でした。

 やがて、サン・プルーは恩人の英国人ボムストン卿の
イタリア行きに同行しますが、
その間に、ジュリは湖に落ちた子供を助けようとして
亡くなります。

 サン・プルーの元へは、愛の告白が
書かれたジュリの遺書が届くのでした。

 手紙形式で書かれたこの恋愛小説は、1761年から1800年までに、
約70版を重ねました。
英国では、当時増加して来た女流作家達にも大きな影響を与え、
ジェイン・オースティン(1775-1817)の6大恋愛小説へと繋がって行くのでした。

 マルセルは、カフェ・ブルトンが主催する「英語の会」へと、
ゲストとして招かれ、好意を持つマリアンヌに接近しますが、
彼女が大好きな「ヌーヴェル・エロイーズ」を知らなかったために、
連れなくされた上、彼女の取り巻き達にもバカにされてしまうのでした。





 

標的(16/16) ロックオンされちった…

2008年06月14日 12時57分42秒 | 第8話/標的

 あの~。
何かウォルポールさんについてのゴシップ系文章を書くと視聴率が上がるようなんですけどォ…。
もしかして、主人公のハリソンさんを差し置いて、
このお人悪紳士を気に入っていらっしゃるの方がチラホラといらっしゃるのでは?
…と、ちょっと意外な状況になってしまったのですが ― 。

 実を言うと、ウォルポールさんは最初、第8話だけの登場の予定だったのです。
ところが作者もこの人を描いている内に、あまりにイヤミ度抜群な外観と、
ちょっぴり可愛そうな心の生い立ち ― そんな光と影のコントラストに、
我ながら「よく、こんなヤツが描けたもんだ!」と感心してしまい、
本物語のレギュラーへと昇格させてしまったのでした。

 ウォルポールさん、お次の第9話の間は一旦引っ込んでいてもらって、
その間に、「エミール」&「♪ むーすーんでひーらーいーて ♪」の作者、
ジャン・ジャック・ルソーさん(1712-1778)にでも、裏で悪い事を企んでいてもらいましょうかね ― 。

 第10話には再び出ていただいて、第11話ではたった1コマだけ、それも隅っこに出て来るだけなのですが、
今年の最後のアップとなる第12話では、主人公のハリソンさんは全く出て来ないというのに、
この人は出ずっぱりで、今の所本物語で一番好感度が高いと思われる、デュポン先生を相手に、
あれやこれやと話しまくりという異例の内容になる予定なのでした。

 ヘラクラネウムというのは、イタリアのナポリにあるヴェスヴィオ火山が西暦79年に大噴火した時に、
有名なポンペイと一緒に火山灰に埋もれてしまった都市の名前です。
18世紀にこの2都市の発掘が開始されました。
ウォルポールさんは古代の遺跡にも興味を持っていたようです。
何でも、ローマのコロッセオの事も「買えるんなら買うんだけど。」
― なーんて、スゴイ事を言っていたそうですしね!

 それから、ウォルポールさんがハリソンさんに「時代の流れには敏感で…」
と言っていますが、ハリソンさんが水彩画を嗜んでいる事を指しています。
英国では1750年頃から水彩画が栄え始めたのだそうです。


ハリソン的には全然良くないんではないのかの~?
卑しくも この話の主役じゃぞ~。
悔しくはないのか?! 

確かにそうですわね。
ちょっと情けないかも ― 。
これからトリストラム・シャンディさんとの対決もありそうだというし、
このまま主役としての影が薄まりっぱなしで、
対決なんてできるのかしら?

ハ~イ、エヴリバーディ、気が付いてるかぁ~い!?
でも、ゴスヲタオヤジのヤツ、カッコイイ紳士といっても、
実はハリソンより背が低いんだぜ!

もしかしたら…170センチより
下っぽいけど…ハリソンさんがのっぽ過ぎるからいけないのっ!!

ハリソンさんは、一応「6尺近い大男」って所なのかしら?
ちゃんとすればこの人だって、
これからいくらでもカッコ良くなれるんじゃないの?!


明日はペロタン作曲「地上のすべての国々は」についての「古楽&エッセイ」。

 第9話は7月からの開始予定で、マリアンヌさんに撃沈されたマー坊と、
ウォルポール氏との出会いに打ち疲れたハリソンさんとが、帰宅してからの対話となります。


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「セレンディピティ物語 幸せを招(よ)ぶ三人の王子」
/エリザベス・ジャスミン・ホッジス著/よしだみどり訳・画 /藤原書店

ウォルポールさんが子供の頃に読んだ童話ってこれでーす。
この本は再話された物だけど、あなたの住んでる町の図書館にもあるかもよ!
「セレンディピティ」って言葉は、最近、科学や芸術の世界でとか以外に、
一般でもちょっとお洒落な言葉として使われるようになって来ているんですって。


 





標的(15/16) 独身貴族ですが、何か?

2008年06月08日 13時02分45秒 | 第8話/標的

 ウォルポールさん、芸術関係の情報交換的話はしていても、
自分個人の事を自ら話すのは、ここでしかやっていないんですわな~。
作者の話や、擬人化された動物達なのか動物化された人間達なのかの
4話者のゴシップ的会話によって、
受け手の方々は、何となくウォルポールさんがどういう人なんだかが
お分りになって来ているような気はしているのですが ― 。

 どーも、晩婚化は今の日本に限らないようで、
18世紀中頃の英国の上流階級の跡取り息子の初婚平均年齢は20代後半だったようですし、
兄弟が複数いた場合の下の子の初婚年齢は、30代前半が平均値だったようですな~。
また、財産相続の関係で結婚が不可能という人もいました。
(ウォルポールさんは官僚の仕事で得たお金があるので、チョンガーなのは他の理由からなのでしょうな。)

 しかし、ウォルポールさん、独身だとさらりと言ってのけているのは
さすがです。
ハリソンさんの方は、以前マー坊にバツイチだというのが知れた時には、
ちょっと引きつっちゃっていたようなのですが・・・。

 今時の若い方には、昨今の社会情勢からすると、
もしかしたら「独身貴族」という言葉が意味不明かもしれません。
「独身で自由に扱えるお金があって、勝手気ままな生活が許されている。」
という意味にでもしておいて下さい。
ウォルポールさん、もうジジイになってから本家を継いで貴族の位に就きますが、
今の所の身分は、たとえ裕福ではあっても平民です。

 一方ハリソンさん、話題にしている未亡人とその子供とは、
この物語の現時点1765年の10月16日(水)よりも3ヶ月ほど前に、
現代では「18世紀随一の超有名人へと上り詰めたある人」のお陰で、
結果として再会する事がかない、交流も復活しているのでした。



ゴスヲタオヤジ、もう、「生涯独身率」がかなり高いんじゃないのか?

こういう人って、どういう女性だと合いそうなのかしらねー?

美人過ぎたりセクシー過ぎたりしなくて、
性格は知的で落ち着いている感じ?
それからかなりいい家のお嬢様で…。
何か、今度はわたしが一緒にいるだけで自分が見下されているように感じて、
ムカムカして来るタイプ!

いやいや、ウサ、意外にこういう御仁はな、
お母さんソックリの派手過ぎでワガママで周囲の人を振り回すタイプに捕まる可能性が高いんじゃ。
恐らくそれを避けようと、強力に自己制御している内に「お婿に行き遅れた」んじゃろうて。

それと、あれだな!
奇人変人変態キャラの女が実はすごく合いそうなんじゃないか?
汚れまくった部屋で鍵盤楽器を弾いていて、
「ぎゃぼー」とか「はうーん」とか言っている、
地方のそんなにいい家の出でもない、悪い意味では身の程知らずだけど、
いい意味では物怖じしないで元気がいい、勘違い姫キャラ系の若い女。
「お手紙王子」に手紙を書いたんだけど、字がすげーヘタクソ☆
だって!

パンディ、「のだめちゃん系」って事ぉ?
あの時代にそんな子いるのかな~?

それっ!パンダッチ!!
私も娘とおととしの秋の月曜の夜9時からTVドラマを一緒に見てたわ!!!
ウォルポールさんも、人の世話が焼きたくてしょうがないみたいだから、
のだめちゃんみたいな手のかかる子に出会って、
千秋さんみたいになっちゃう展開も面白いんじゃない?!


第9話以降は、恋愛物の比重が増すので、
「それがなくてつまらなかった!」という方は、もうちょっとだけガマンして待ってて下さいね~。
反対に「恋愛物がキライぢゃ」という人にはどうしたらいいんやらや~って所なんですが!?

 次週は第8話完結編と古楽&エッセイです。
作者が聴いた衝撃の「ゴシック音楽」についての話をさせて下さい ― 。

〈次回の更新は14・15日の予定〉



 

 

標的(14/16) 男の子はお母さんに似て…

2008年06月07日 13時37分09秒 | 第8話/標的

 昔、イタリアのフィレンツェにフィリッポ・リッピ(1406-69)という、
カルミネ修道院の僧侶兼画家がいました。

 この人50代の時に、サンタ・マルゲリータ修道院所属で23歳のルクレツィアさんと駆け落ちしてしまいましたが、
描く絵があまりにステキなので、特別に許されて還俗し、正式に結婚したのでした。
ルクレツィアさんは、フィリッポさんが描いた聖母のモデルになっているのだそうです。
二人の間に、結婚する前に生まれちゃった息子のフィリッピーノさんも後に画家になったそうな。

 スターン聖下も、いろんな女性と浮名を流して、
(そー言えば聖下もリッピさんと同じ年の頃に、23歳の子持ち主婦に熱を上げていたんだっけな~!)
― 「卑猥の書」なんて言われている本も書いたりして、「破戒僧」呼ばわりされていたそうですが、
探せば歴史の中には、スターン聖下なんぞ、

「気恥ずかしいくらいの純情派」

なんじゃないかってゆー、スゴい聖職者がきっとまだまた沢山いるんですわなー!

 かの赤毛の司祭ヴィヴァルディも、ミサの途中で曲想が浮かぶと、
中断してどっかへ行っちゃったとかの奇行の持ち主だったっていうし、
女性関係の噂が、故郷にいられなくなった原因の一つになったらしいしな~。

 話は変わり、ハリソンさんの御母上のリジィさんはかなりキツい性格の人だったようですが、
こういう性格の女性にありがちな、「ギスギスして鶏ガラみたいな容姿」だったんでしょうか?
ハリソンさんも時々、「癇癪持ちなんぢゃないの?」
と思われる言動をしていますが、子供の頃に、こーゆー母親の側に居過ぎたのが原因なのでしょうか?

 ラファエロ・サンティ(1483-1520)は、聖母子の絵を沢山描いているので、
ハリソンさんの言っているのは、どの絵の聖母なのかは今の所特定できないのですが ― 。

 一方、ウォルポールさんの御母上のキャサリンさんも、
さすがは50近くになっても、うらやましい限りの容姿端麗なウォルポールさんを産んだだけある、
ブルネットの美女でしたが、こちらも夫の神経をすり減らすよーな、
スゴい性格の人だったようですな!


ウォルポールさん、お父さん以外の男性とお母さんとの間に生まれた子なんじゃないか?
― って、噂になっていたんだって。

確かにパッと見は「英国の〈逆〉田沼意次」に似てないよな。

ロバートさんはいかにも男臭いって感じの人よね。
でも、「結婚式で新郎新婦の写真を合成して、子供はどんな顔か?」
― みたいな感じで両親の肖像画を見てみると、
ウォルポールさんみたいな顔の子は絶対生まれて来そうに私には思えるけど。

ハリソンもそうだけど、ゴスヲタオヤジも
不自然なくらい「性のニオイ」がしないよな…。
何でなんだろうな?
作者の方針か?

パンディはウォルポールさんの事
「ゴスヲタオヤジ」って呼んでるけど、
わたしには「ヲタ臭」も「オヤジ臭」もしていない感じがするんだけど。
逆にお洒落な感じすらするんじゃないの?

何か、あの「苺ケ丘城主様」…とかよー、
「本当はツンデレ?」 ― みたいな妙に女受けしそうな所はないでもないよーな…。

あはっ、パンダッチったら、だから嫌いなんじゃないの?!

しかしキャサリン殿、
首相夫人だというのに・・・浪費だの、派手に遊び回ったりだの、果ては不倫疑惑だのと、
…昔の欧州の世間は大らかな所もあったんだの~。
現代日本なら、皇室バッシング記事がいらなくなるほど、女性週刊誌であれこれ言われるじゃろうて。
 夫側だって、政策が上手く行っていなければ最悪の場合は、内閣不信任案で総辞職。
その後は総選挙で、国民はせっかくの日曜日に投票所へ行くのが面倒で大迷惑!
― なんて事にもなるに違いあるまいに。


明日は、ウォルポールさん直々に個人情報を言っていただきます。
今日の続きは明日。






標的(13/16) カテゴリーは受け手次第

2008年06月01日 10時20分10秒 | 第8話/標的

 作者、またしても自分で描いておきながら、
ジョージさんのセリフに対して、
「(作者の画力の問題以外にも)直接的に訴えられないから、文を付けているのに、
それでも言いたい事が見る人に伝わってんのかどうか?」
― なんて思ってしまっていたのでした。

 宗教画が何を目的に描かれたのか自体は、昔は識字率も低かったでしょうし、
ジョージさんの言っている事でほぼ正解なのでしょう。
「古代の人々が、このような想像を絶する苦しみに耐え、勝利したのだから、
私達も日々の様々な苦しみを、修身して、神に祈り、
乗り越えて行こう。」
― と思わせる効果もあったのでしょう。

 でも、クリスチャンではない人には、ハリソンさんの言っている事も、
「全くその通りだ !」
― といった所ではないのでしょうか?

 ついでに「残虐の報い」というのは、
「小っちゃな頃から悪ガキ」(←チェッカーズの歌詞かよ?)だった男性が、
最後には悲惨な処刑で生涯を終えるという話で、
ウィリアム・ホガース(1697-1764)作の連作版画です。
ハリソンさんの言っているのは、その処刑シーンを描いた
ショッキングな一枚の事です。
ついでながらホガースさんは、「トリストラム・シャンディ」の挿絵も描いています。

 聖人の殉教図は、迫害した異教徒への憎悪を煽っていた事も
あったではないのでしょうか?
そして昨日の話のように、性的充足のために使用されていたのも事実のようです。

 まだ20代の頃、作者が居住地域の図書館に来ていた時に、
高校生くらいの男の子2人が、
「聖書ってエロイぜ!」
― って館内で言っていたのを聞いた事があります。

 書かれてから今まで、約二世紀半、
「トリストラム・シャンディ」は「卑猥の書」と呼ばれ、
「性文学」のカテゴリーへと入れられ、貶められていた事もあるようなのですが、
かの「聖書」でさえも、読む人によっては

「猥褻な物語の宝庫」

― と化してしまうのです。

 結局、書(描)く人の意図よりも、読む人達側の意図によって、
何を訴えたいのかが決められてしまう物なのでしょうか?



ふふっ!またまたジョージさん、優等生的答え方ね。

図書館には、実は公共施設に置いておくにしては、
とてつもなくエロい内容の本が、探せばザックザクあるぜ!

またそういう話へと持って行く訳ぇ~?

まあ、話させて下さいよ。ママン。
俺が行く図書館に、18世紀の作品では「ファニー・ヒル」があった。
購入の時、どうやって「選」に入ったんだろう?

あ、それ私も知ってる、新刊書の棚にあって、
少女小説みたいなキレイでカワイイカバー絵なのに、
中をチラッと見たら全然違うんで、借りるのやめた事がある~。

パンダニムスとウサニマは、
「本も見かけにはよらない事もある」という話をしとるのかの~?


次週は、この物語の今後の展開にとっては結構重要な、
ウォルポールさんの個人情報公開。
― っていうか、1・9・11ページの絵を気を付けてよーく見ると
「ああ、そーだよねー。」
― って簡単に分ってしまう程度の事なのですが。

〈次回の更新予定は6月7・8日〉