漫画/ハリソンさんはカノ紳士 Mr.Harrison is THE GENTLEMAN ― フランス通過編 ―(前半)

18世紀欧州が舞台の歴史ロマン。アヴィニヨンの薬屋小町クレールとハリソン&マルセル主従との運命の出会い。

彼は欲求不満の憂さ晴らしに本を書いた

2010年03月27日 22時56分38秒 | 第15話/トリシャン・コード

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* * * この物語は、基本的にはフィクションです。 * * *



 今話の表紙の絵で、ハリソンさんの肩へと、
鬼太郎の目玉親父の如くつかまっている小人さん、

いったい何だろうと思った方いらっしゃいますか?
絵のタッチはむしろムーミン谷の住人っぽいのですが。

 この小人さんは、ホマンキュラスさんといって、
トリストラム・シャンディ氏の話によると、
まずは父親から母親の胎内に産み付けられ、
動物精気と一緒に子宮内に辿り着き、
9か月後の出産日に、赤ん坊の姿で母親の体から出て来る
という事なのだそうです。

 ― で、昨日書いた、シャンディ氏の母親の質問のせいで、
父親の集中力が途切れて動物精気が分散し、
胎児に悪影響を及ぼしてしまい、その不運を引きずったまま、
1718年の11月5日にこの世へと生まれ出たシャンディ氏は、
状況を立て直す事もできずに、悲劇の生涯を送って来てしまったらしいのです。

 シャンディ氏の、そのぬらりくらりしてハッキリしない、
フレディ君の言う所の、オール・ジャンル曖昧なのがために、
他者を振り回してしまい、面白がらせる一方で相当の怒りを招いてしまう、
不安定な評価を獲得してしまう性格
も、動物精気が霧散したのが元凶という事なんでしょうが、
ハリソンさんの意見はちょっと違うようなのでした。

 つまり、彼の人生の中で、彼の話をきちんと聞いてくれた人が今まで一人もおらず、
一方的に自分の話をしたり、言いがかりを付けて来る人ばかりだったのではないのか?

と言っているのでした 。

 フレディ君まだ若いし、能天気みたいですからね。
それに、面倒焼きたがり屋のウォルポールさんが遠い親戚だって事が分かって以来、
出世街道まっしぐらって感じですし ― 。

 まあ、そういった境遇から、ハリソンさんと解釈が分かれて行ってしまうんでしょうけど、
フレディ君、かなり後になりますが、自分の思い描くシャンディ氏の姿を、
ハリソンさんへとトンデモない方法で強硬に押し付けてしまう事になります。
ウォルポールさん&副社長様を喜ばそうという気持ちもあったんですけどね…。


 〈 次回の更新は4月2 ( 金 ) ・ 3 ( 土 ) の予定。 〉

先週の更新予告見たら、次回は4月の3・4日と書いてあったのですが、
勘違いしていました。
昨日と今日が正しい日付です。


 
 

 

それで、どこが愉快だったの?

2010年03月26日 21時18分15秒 | 第15話/トリシャン・コード

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 トリストラム・シャンディさんが実際に書いた本の出だしの英文と
作者の訳文なんですが…。


I wish either my father or my mother, or indeed both of them,
as they were in duty both equally bound to it,
had minded what they were about when they begot me;
had they duly consider'd how much depended upon what they were then doing;

 私は自分の父か母か、それとも本当の所はどちらもなのですが、
こういった場合には双方相等しくそうする義務があったというのに、
二方が私をこしらえるという一事を成していた最中に、
その時のやり方次第でもうどうにでもなるというのをきちんと考慮して、
気を配っていてくれたらよかったのにと、
今更ながら思うのです。


 …だそうです。
で、それがどういう事なのかという細かい説明が後に続き、
そして、こしらえ時に、母親が父親に発した無思慮なセリフ。


Pray my dear, have you not forgot to wind up the clock?

ねえ、時計のねじを巻くのを忘れてない?


 それに対する父親。
叫びつつも声をひそめつつといったビミョーな発声法で。


Good God !
Did ever woman, since the creation of the world, interrupt a man
with such a silly question?

おぉいっ!
天地創造以来、こんなにもバカな質問で男の邪魔をした女が未だかってあったか?


そしたら、シャンディ氏の話を聞いていたオッサンかオニータンが、


Pray, what was your father saying?

おいおい、君のお父さん何て言ってたんだい?


― と、食い付いて来るのですが、シャンディ氏、繰り返しづらい内容なので、


―― Nothing.

別に、何もありません。


…とか、現代日本の某人気若手女優様みたいな事を言って〆てしまうのでした。


 今日の続きは明日。











 

 

誰にでもコンプレックスはある…

2010年03月21日 11時04分19秒 | 第15話/トリシャン・コード

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 ウォルポールさん、第8話 「 標的 」 の初っパナっから、
「 トリストラム・シャンディ 」 の悪口バキューン!
― で、

「 小説ではありませんね。 」
「 単なる作文です。 」
「 日常の出来事とその感想を細々綴っても退屈なだけ。 」

…なんて言っていました。

 それで、ハリソンさんが擁護するような事を言って、
ウォルポールさんからシャンディ氏との関係を怪しまれて
しまうのでしたが ―― 。

 人が一生かかって努力した果てに、
もしかしたら到達できるかもしれない境遇に、
最初っからいるウォルポールさんにも、
トリストラム・シャンディさんの気持ちは分からない
かもしれませんな ―― 。

 でも、その一方で、シャンディさんの方でも、
ウォルポールさんのコンプレックスをつっ突くような事を、
実はズケズケと書いていたりしたのでした。


 〈 次回の更新は4月2 ( 金 ) ・ 3 ( 土 ) 日の予定 〉


おセレブ様には分からない?

2010年03月20日 15時35分56秒 | 第15話/トリシャン・コード

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 ♪ …この涙、やぶさかでない~ ♪
― って、とんねるずさんが昔歌ってたTVドラマの替え歌かよ?
…トリストラム・シャンディさんも、
1760年代でこそ、自称ボンビー色モノ作家なのですが、
元はといえば、一応おセレブ様だったんですけどね。

 「 戦後 」 とありますが、1763年に終結した7年戦争の事です。
フレディ君、1764年の春からこっちに来ていて、
帰国後は、副社長の側近となって、ロンドンで働くようです。

 絶対ウォルポールさんのコネだね!

 ホレイス・マン英国公使という人は、
フィレンツェに1738年から30年近くも赴任していて、
旅行で来る英国のおセレブな方々へと、
一流のおもてなしをしている評判の方なのでした。

 ウォルポールさんも若い頃、イタリアへと旅行した時に、
この人のお世話になって、以後も交流が続いているのでした。

 公使様、たとえいい人ではあっても、
所詮は従う人より、従える人の方が多かった高位の人、
外交官としての仕事をサクサクさばくための
言語&行動様式を身に付けて生きて来た人だったから、
トリストラム・シャンディさんが何を言いたいのかが
分からなかったのでしょうか?

 それに対してフレディ君、
変に怒っていない所からすると、
本当にトリシャンの事が大好きなんでしょうね。

 トリシャン自身がそれをどう思うのかは別として ― 。

 フレディ君、ウォルポールさんの華麗な人脈を天真爛漫に語っていますが、
貴族の位の継承権を持っている現職タレント国会議員と、
優良企業とはいえ、ただのサラリーマンとの格差が痛々しい
と、
作者は思ったりもしてしまうのです…。


 今日の続きは明日。


 

 


何がキミをそこまで熱くさせたのか?

2010年03月14日 10時31分36秒 | 第15話/トリシャン・コード

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 昨日、クラヴァット ( 現代ではネクタイ・スカーフに相応 )
の結び方という話が出て来ましたが、
ハリソンさんの結び方は、「 トリプルテイル 」 という名です。
してみたいお姫様&お嬢様方は、
最寄りの図書館か書店でお調べ下さいませ。

 フレディ君、ウォルポールさんの別荘、
苺ヶ丘城へとお泊りで行った時に、
「 トリストラム・シャンディ 」 を紹介されたらしいのですが ― 。

 ウォルポールさんがある紳士に送った手紙によると、

Warburton, however, not content with this,
recommended the book to the bench of bishops and told them 
Mr. Shandy, the authour, was the English Rabelais
― they had never head of such a writer.

 ウォーバートン主教という人が、
「 作者のシャンディ氏は英国のラブレーだ。 」
― と、絶賛していたという事が書かれています。

 他にも、この人を始め、シャンディ氏に褒美をやりたいという人が
いるという話に至っては、
「 今までこんな事あり得なかったのに。 」
― と、ウォルポールさんが呆れ返っているという内容なのでした。

 By the way, これと同じ手紙には、
こんな事も書かれていて、これは前にも英文&訳文は出て来ましたが、

… but in recompense makes 
one yawn for two hours.

 …1回大あくびをしたら、顎が外れて2時間治らなかったと解釈してもOK?

 作者、基本的にはズボラなもんで、
…思うんですけど、ゴシック調の家の中なんて、
掃除が大変なだけじゃないのか?!
そんからロココ調の家具だって、作者には1個だけ家にあるけど、
引き出しがすぐにつっかかって、しょっ中蝋燭塗らなくちゃいけなくて、
ひっじょーに使いにくいぞ~。


 〈 次回の更新は、3月20 ( 土 ) ・ 21 ( 日 ) 日の予定。 〉


 



 

親子でミーハーしちょりますゥ

2010年03月13日 15時35分30秒 | 第15話/トリシャン・コード

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* * * この物語は、基本的にはフィクションです。 * * *



 えー、作者の話の中には、 「 カストリ 」 、 「 独身貴族 」 etc.
昭和の香りが漂う言葉が時折出て来ますが、
若ェ衆の方々、 「 ミーハー 」 って何だか分かりますか~?
一応書いておきますと、 「 流行に影響されやすい人達の事 」
なのでした。

 この物語の元になっている、
「 トリストラム・シャンディ 」 には、
何かに異様にこだわる人達が何人も出て来ます。

 こちらの話でも、そういう人達が、
…というか、主要登場人物ではハリソンさんを除いてほぼ全員
何らかのこだわりを主張しているようなのでした。

 その中でも現段階では、
ウォルポールさんのゴシック・オタッキーぶりが一番細かく描かれている
ような気がするのですが、
よく考えてみたら、作者自身が絵の勉強していた時に、
自然と中世美術に沢山ふれていて、
比較的分かりやすく描き易い世界だからなんでしょうね。

 And,さすがはそのウォルポールさんと同じ血縁だけあって、
フレディ君、ウォルポールさんと双璧を成すような、
「 トリシャン 」 へのこだわりっぷりを、
これからたっぷりと見せてくれるかもしれませんな。

 フレディ君のセリフに出て来る、
カツラやらメガネやらアクセサリーやら、
クラヴァット ( スカーフ ) の結び方やら、
マスコミでのオッサン達の風刺やら、
そんなのどこ吹く風で情報交換する主婦達やら、
7・8年くらい前にどこかで聞いたお話みたいなんですが…。

 まあ…ユージン様がお姉さんの原案を元に書いた
「 めぐり逢う魂 」 は、 「 18世紀英国版 冬のソナタ 」
ですからね!

 作者の勤務先のあるパート主婦の方は、
「 冬ソナ 」 の関連本を買いに行くため、
上司に 「 用事がある 」 と、ウソこいて早退してしまいました。
( そりゃ、彼女にとっては大事な用事だったのかもしれんが…。


 今日の続きは明日。

 

 

美形なれど性格悪し…

2010年03月07日 19時51分49秒 | 第15話/トリシャン・コード

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* * * この物語は、基本的にはフィクションです。 * * *



 王皇の宮中から、政財界から、芸術・芸能界から、学校から、
地方の中小企業に至るまで、

「 こいつ、確かにいい所もあるけど、悪い所も相当な物だよな! 」

― ってな人じゃないと、その世界で純粋に必要な才能がいくらあっても、
長くは生き残れない。
― と、いうのが現時点での作者の世の中に対しての
感想の一つなのでした。

 この物語の中で、文筆業に関わる3名、

 ハリソンさん ( ノヴェライズ作家&トリストラム・シャンディの創作にも何らかの形で関与している? )

 ウォルポールさん ( ゴシック作家・書簡によるトレンド情報発信者 )

 ソーホーさん ( 恋愛小説家 )

…性格の良い所と悪い所が極端な形で混在しています。

 特に、ユージン様ことソーホーさん、

① 英国文壇の征夷大将軍J ****** 氏に直江状送って怒らせている。

② J ****** 氏やウォルポールさんも属している有名な 「 青鞜会 」 を初めとする、
いかなる文学サークルからも孤立している。

③ 奇麗な顔して毒舌吐いて人気の一方、標的にされた人達からは憎まれている。

④ 第14話で、将来総理大臣に返り咲く人の姪子さんと結婚して、
お姉さんとはユニット解消で仲直りか?

― ってな所でまた話がペンディングしちゃってますが、
これらのエピだけでも、十分性格悪過ぎだってば…。

 フレディ君がまだ個人的には、ソーホーさんに不快感を持ってはいませんが、
ママのマライアさんがファンらしいのと、
ウォルポールさんには愛されたいというのとで、

フレディ君困っちゃ~う!

― って感じにもなって行きそうですな~。
今の所。


 〈 次回の更新は、3月13 ( 土 ) ・ 14 ( 日 ) の予定 〉


ウダツの上がらない僕

2010年03月06日 13時58分40秒 | 第15話/トリシャン・コード

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* * * この物語は、基本的にはフィクションです。 * * *



 ソーホーさんについては、
第14話の始めの方にあるのですが、
世間からはライバルと思われている、
トリストラム・シャンディ氏に会いたいとはっきり言っていて、
お姉さんのアラベラさんを怒らせています。

 同じく第14話の終わりの方では、
ハリソンさんが書店で、「 トリシャン ⑤ ⑥ 」
の販売状況が思わしくないという説明を受け、
契約打ち切りの可能性を宣告されています。

 ソーホーさんもいずれはハリソンさんと直接絡んで来る予定です。
早ければ本話から3話くらい後に。

 ハリソンさんがもし本当にトリシャンだったのなら、
ハリソンさん側に付いて、ホリー・ウォルポール兄貴&フレディ君との戦いに、
「 拙者、助太刀致す! 」 ― とか言って、
自分と境遇が似ているけれどもビミョーに違う、
ウォルポール兄貴の方に特にイラつき、
バチバチとやってくれるかもしれませんな。

 まあ、でも果たしてハリソンさんが本当にトリシャンなのか…?
―― 実は全然別の、誰も予測できないような、
トンデモ・ラスボス・キャラなのかもしれないですしね!


 今日の続きは明日。