漫画/ハリソンさんはカノ紳士 Mr.Harrison is THE GENTLEMAN ― フランス通過編 ―(前半)

18世紀欧州が舞台の歴史ロマン。アヴィニヨンの薬屋小町クレールとハリソン&マルセル主従との運命の出会い。

標的(5/16) 躱(か)わせ、ハリソン!

2008年05月06日 09時57分12秒 | 第8話/標的

 作者の持っているイタリア語版「オトラントの城」
(英語版ではペンギン・クラシックスの「三つのゴシック小説」)
に載っている、初版のタイトルページにはこうあって、

THE CASTLE of OTRANT, A STORY.
Translated by WILLIAM MARSHAL, Gent.
From the Original ITALIAN of
ONUPHRIO MURALTO,
CANON of the Church of St.NICHOLAS at OTRANTO.

イタリア人のオヌフリオ・ムラールトさんが書いた原作を、
英国人のウィリアム・マーシャル氏が翻訳したという
設定にしてあるのでした。

 さすがのウォルポール氏も、
中世の城で跡取り息子が婚礼の当日に悲惨な死を遂げ、
その後も城内では、花嫁とその家族と謎の美青年を巻き込み、
君主権を巡ってのホラーな事件が続発!
― なんていう内容に気後れがしたらしく、
翻訳物を装って偽名を使っての出版でした。

 でも、意外にもヒットしてしまい、
「こーゆー事書くのは、絶対あの人しかいない!」
と作者がバレバレになってしまうと、
2版目には「そうです。自分が書きました!」
と堂々と名乗り、創作の動機などをあれやこれやと
述べているのでした。

ハリソン、身を翻して避けちゃったよなー。決定的な所を。

タイトルの「カノ紳士」って、トリストラム・シャンディさんの事なのかしら?

ゴスヲタオヤジはハリソンがシャンディなのかもしれないと思ったらしいようだけどな。
まあ、ハリソンも服装センスが悪いし、トロいし、複雑でズッコケた性格だけど、
決め手となるような証拠は、俺の見る所では今の所何もないぜ。

もしかしたらウォルポールさん、自分も最初は嘘ついていたから、
「蛇の道は蛇」でそう思ったのかも。
「オトラントの城」って、中世が舞台で、超自然な物が出て来るようだけど、
ストーリィそのものは現代のTVでやってる「サスペンス系2時間ドラマ」とか、「金田一物」みたいな感じよね。

それにしても、ウォルポール殿、オヌフリオ・ムラールトは「高く壁を巡らす一狂人」という意味らしいが、
そのような名では、トリストラム・シャンディよりもさらに嘘っぽくて作り物っぽい名で、
バレ易かったのではないのかのう。


 ― タイトルの意味は第4(最終)部の最終話にならないと分らないでしょうね!


次回は伯父ハリソンと甥ジョージとの、
ウォルポール氏が心中で嫉妬してしまうようなやり取り。
〈次回の更新は5月10・11日の予定〉