「王者」の伝説2
「王者(チャンピオン)」の名を掲げながら「週刊少年チャンピオン」は1969年の創刊当時、少年マンガ誌の中で圧倒的に弱者であった。
怒れる編集長
「壁村耐三氏登場!」
サンデーやマガジンから完全に見下されていたジャンプを38万部から6年後には250万部までに押し上げた伝説の編集長だ。
秋田書店創業者と同郷のよしみで入社、トイレ掃除から雑用までこなす、たたき上げの氏は思い切った策を連発した。
まず最初にほとんどの連載を1話完結・読み切りにした。
いつどこから読んでも楽しめるスピード感で読者を引きつけた。
氏の次に行なったのは巨匠・手塚治虫氏の再生だ。
当時の巨匠は虫プロの倒産で多額の借金を背負い、時代からも取り残されていた。
氏は長身で気性も激しく古武士の様な風貌で袖を通さずコートを羽織り誰かれ構わず怒鳴った。
氏の妻が家の電話で怒り狂っているのを目撃する。
「刺すぞ」
相手は締切りに遅れた巨匠・手塚治虫氏だ。
と、新聞の記事だ。
ブラックジャック登場
今更申し述べる事の必要もない巨匠の最高傑作のひとつである。
限られたページ数の中でひとつひとつのエピソードが珠玉であり真似ができない。
最後のネームがいい。
「ブラック・ジャック
日本人である以外
素性も名前もわからない、だがその天才的な手術の腕は神業とさえ言われている
この謎の医者は今日も何処かでメスを持ち
奇跡を生んでいるはずである」
偉大な短篇である。