ひまわり博士のウンチク

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「金儲け」という仕事はない

2006年12月11日 | 社会・経済
 今日、さる人の招待を受けてごちそうになりました。4時間近くも話し込んでしまいましたが、その中で昔から若い人たちによく言っていて、最近ちょっと忘れていたことを思い出しました。

 それは「金儲け」という仕事はないということです。
 こういうと、ほとんどの人は「その意見はおかしい」といいます。だって、お金を儲けるために仕事をしているのですから」というわけです。
 そのとおりです。でも、お金儲けそのものは仕事ではありません。
 お金というものは、何か仕事をした結果手に入るもので、お金儲け自体が仕事になるわけはない、という持論をずっと持っていました。
 ところが、その持論を崩されるようなことが、最近起きてしまいましたね。
 今日は、そのことについて書いてみようと思います。
 
 ホリエモンや村上ファンドのような人や組織は、なんら生産的な仕事はしていません。また、社会貢献もありません。それなのに、お金が儲かる。どうしてそのようなことが成り立つのか、という話の前に、資本主義経済の一部を説明しておかなければなりません。
 これから申し上げることは、経済の初歩中の初歩で、もしかすると、「そんなこたあ知ってらあ」という人のほうが多いかも知れません。そういう人は、読み流していただいて結構です。


お金の代わりをするものがある
 
 世の中に流通しているお金、この総金額はほとんど変わりません。ですから、たくさん持っている人が増えれば、その分だけ貧乏な人が増えるはずなのです。
 ところが、景気がよくなるとお金持ちが増え、貧乏な人は少なくなります。流通しているお金は変わらないのに、お金持ちが増えるというのはとても不思議なことですね。
 景気が悪くなると、その反対になります。まるで、世の中のお金が増えたり減ったりしているみたいです。

 実は、お金は「増えたり減ったり」しているのです。しかし、お札や硬貨は増えも減りもしませんから、正確にいうと、お金の代わりをするものが、その価値を高めたり下げたりしている、ということです。
 その、お金の代わりをするものが、株や不動産などに代表される、「相場」が変動するものです。
 銀行等は、不動産や株券を担保にお金を融資してくれますが、担保がどのくらいの価値があるかで融資金が決まります。
 たとえば、自分が昔、1千万円で買った不動産が、今1億円で売ることができるまで価値が上がっていれば、銀行は1億円近くを融資してくれます。つまり、ただ不動産をもっていただけで、9千万円儲かったことになります。
 売ってしまえば現金が入りますが、銀行からの融資というかたちをとると、必ずしも現金が手許に入るとは限りません。ほとんどが帳簿上の処理、つまり、何がしかが預金通帳に記載されて「あなたはこれだけお金を持っていますよ」という、保証が与えられるだけです。
 つまり、実際には現金で持っていなくても、「持っていることになる」のです。そのために、ないはずのお金が世の中に流通しているのと同じことになり、まるでお金の量が増えたようになるのです。


剰余価値が増えるとますます景気が向上する

 景気がよくなると、人々はどんどん買い物をしてたくさんお金を使います。当然、製品を作っているメーカーの経営者は、儲かって笑いがとまらなくなります。
 しかし、ものを買ってくれる人の中には、自分の会社で働いているようなサラリーマンなども含まれています。つまり、従業員であると同時に、お客さまでもあるわけです。

 会社が儲かるのは、従業員に払う給料や製造原価などの経費よりも高いお金で市場に売ることによるものです。
 たとえば、単価あたりの材料費・設備費20円、従業員の給料分30円、合計50円で作ったものを100円で売ることで、会社は50円の利益が得られるわけです。しかしよく考えれば、材料費・設備費20円を買価100円から引いた80円分を作り出しているのは従業員なのですが、経営者は30円しか給料を払わないことで利益を上げているわけですね。
 単純に考えると、従業員は50円儲け損なっている、ということになります。もちろん事はもっと複雑で、こんなに単純ではありませんが、「労働力の価値」よりも安い賃金を払い、その差額が経営者の利益になっているということは覚えておきましょう。
 このことの善し悪しは別な次元の話なのでここでは扱いません。

 で、従業員の労働力によって作り出された価値と、従業員に給料として支払われる差額を、経済用語で「余剰価値」といいます。
 ものがどんどん高く売れて、余剰価値が増えると、会社はさらに利益を上げようとして、人々にもっとものを買わせようとします。従業員はお客さまでもあるのですから、そのために、儲かったお金の中から今までより多いボーナスを従業員に支払います。そのお金で、人々はもっとたくさんのものを大金をはたいて買います。
 そうして使われたお金は、さらに莫大な利益となって経営者の懐に戻ってきます。ますます剰余価値は増え、景気はうなぎ上りによくなっていきます。


バブル経済へ

 莫大な利益を得た経営者は、そのお金を元手に、株や不動産に投資します。お金を儲けたたくさんの人や会社が株や不動産を買おうとすれば、それらはどんどん値上がりしてお金の代わりになりますから、まるで世の中にはますますお金が増えたようになります。
 こうして、景気は際限なく膨らみます。これがバブルといわれる現象です。

 バブル経済はやがてはじけて、そのあおりの大不況が訪れるわけですが、その仕組みは話が長くなりますので(すでに長いですが)ここでは割愛します。


実質を伴わない虚業

 一部の人、つまりお金儲けだけに命をかけている人たちが、実に不思議な仕事を思い付きました。
 ものを作ったり、人々の役に立てるという社会貢献は一切抜きにして、最初からお金の代わりをするものを右から左に動かすことで、儲けようとするのです。
 株や不動産の相場が変動するのは、たくさんの人が買ったり手放したりすることによるのですが、それを自分の利益になるように操作するのです。
 これはとても複雑な部分があるので、極わかりやすいところだけを申し上げます。

 お金の代わりをするのは株や不動産だけでなく、会社そのものもそうなります。ある会社を、安い値段で買ってしまいます。そうしておいて、買い取った会社があたかも業績を上げているように、話題に乗せたり評判を上げたり、また決算や売り上げ報告を操作して株価を釣り上げ、会社そのものの価値を高くしていきます。

 帳簿には上がりませんが、この会社は実際よりも多くの価値が生まれているようだ、とみなされるのを「含み益」、あるいは「含み資産」といいます。
 たとえば、1億円で買った会社が、業績がよくなったということで、会社の含み資産が10億円になったとすると、その会社を持っている人は、買ったときの1億円が10億円に化けたことになります。
 ほんとうに業績が上がっていれば問題ないのですが、実際にはそれほど根拠がないのに価値を上げようとすれば、株価操作や粉飾決算などで偽りの価値を生み出すしかありません。
 それは犯罪です。
 また、株価が上がることを、一般には公開されていないのに事前に知っていて、それによって内部の人間だけが儲けることは、「インサイダー取引」といって犯罪です。

 お金を動かすことだけで利益を上げようとすれば、結局は違法行為に手を染めることにならざるを得ません。
 どんなに工夫しようとも、「お金儲けという仕事」は存在し得ない、ということなのです。

 お金とは、社会の利益になることをした結果手に入るものであって、お金儲けそのものを目的とすれば、だんだん周囲が見えなくなって、いつの間にかしてはならないことをやってしまう、ということなのですね。

 覚えておきましょう「お金儲け」という仕事はありません。

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