monologue
夜明けに向けて
 



かぐや姫伝説と共通するバイオテクノロジーの話は「記紀」に記された日本神話において見出すことができる。
「于時伊弉諾尊恨之曰。唯以一兒替我愛之妹者乎。則匍匍頭邊、匍匐脚邊、而哭泣流涕焉。其涙堕而爲神。是即畝丘樹下所居之神。號啼澤女命。遂拔所帶十握劔斬軻遇突智爲三段。(日本書紀原文)」という部分で語られていた。

日本神話ではイザナギイザナミの国生み子生みの作業の最後にイザナミは火神軻遇突智(かぐつち)を生み陰部(ホト)を火傷して黄泉に赴くことになる。
この火神の名前をバイオの方面から見れば軻遇突智とはRNAの四塩基CAGU(カグ)ツチなのである。
ツチとは生物の体の生成原料を指すことば。
イザナミはあらゆる生物に肉体を与えるために四塩基のツチを遺して黄泉に去った。
イザナギは「唯、一児を以て、我が愛しき妹に替へつるかな」といって泣き十握(とつか)の剣で軻遇突智(かぐつち)を三段(みまた)に斬る。
この部分はわが子に対する残酷で奇矯な振る舞いのようにドラマチックに書かれているが実はイザナギはイザナミの提供した原料を前にしてバイオ・テクノロジーに腕を揮ったということを伝えているのである。
これは四つの塩基、A(adenine)アデニン、U(uracil)ウラシル、
G(guanine)グアニン 、C(cytosine)シトシンを三つずつの単位(トリプレット)に「十握(とつか)の剣(制限酵素)できったということである。
遺伝暗号の一つの配列(コドン)を神とみなして斬った刀の血から八神が化成(な)る、と表現し、斬られた軻遇突智の体からもう八神がなった、と八で括って表現する。 八かける八で塩基配列の総数、六十四種類のことを示唆している。ありとあらゆる生物はこの暗号の組み合わせによってできあがった。
ワトソンとクリックによってDNAの構造が解明されるまでただの神話や伝承と思われてきた物語がバイオテクノロジーの発達によってやっと本来の意味を伝えることになった。
かぐや姫伝説の「かぐ」はすでに日本神話で火神軻遇突智(かぐつち)の「CAGUかぐ」として過去、現在、未来の時空を超える存在によって使用されていたのである。
fumio

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