垣谷美雨(カキヤミユ)さんは、身近な社会問題を題材にした小説を何冊も発表している私の好きな作家さんの一人です。先日図書館へ出掛けた時、彼女の作品で「うちの父が運転をやめません」という本を見つけたので、さっそく借りて読んでみました。
2年前に高齢の元高級官僚が、池袋で親子を死亡させる交通事故を起こして高齢者運転が問題になりましたが、これは正に高齢者運転の問題点を提議した社会派小説です
小説の主人公、猪狩雅志は東京近郊に住む中年サラリーマンで、妻と一人息子の3人暮らしをしている。彼の目下の悩みは、田舎の実家で暮らす高齢の父親が車の運転をやめない事だ。実家は過疎地で公共の交通機関は殆ど無いに等しく、車が無ければ通院や買い物など日常生活に支障をきたすので、止めろとは強く言えない。
と言ってローンが残るマンション暮らしなので、家族で実家へ引っ越す事もできない。彼の取った最後の決断は、仕事を早期退職して単身で実家の両親と一緒に暮らす事だった。
実家へ戻っていろいろな紆余曲折はあったけれど、彼は軽トラックでの移動販売で地域の住民に貢献するという新たな仕事に生き甲斐を見出す。そんな息子を見て、父親も車の運転を止める決断をする。・・というハッピーエンドの物語です。
垣谷ワールド全開で、読み応えある面白い小説でした。読み終わって、これは自分の問題でもあるなと思った。昔に比べれば私の視力や反射神経、状況判断力が衰えているのは薄々気付いている。
取り返しのつかない交通事故を起こす前に、免許証を返納した方が無難なのは分っちゃいるが、車は行きたい時に行きたい場所へ私を連れて行ってくれる魔法の杖のようなありがたい存在だし、それに運転するのは本当に楽しい。
まだ大丈夫(実はこれが一番怪しいのだが)と自分じゃ思っているので、今のところ車の止め時は判断がつかない。まだ現役で車を運転中の某先輩を道しるべにして、あの人が止めたら俺も何て考えているのだが。