036:靴箱のビラ
翌日、新聞部の緊急会議があった。全員が集ったことを確認して、南川愛華は一枚の紙片をひらひらさせて語りはじめた。
「菅谷幸史郎さんを中傷するビラが出まわっています。みなさんの靴箱にも、入っていたと思います。これは明らかに、対立候補の越川翔側がばらまいたものだと思います。許せません。菅谷さんは町の活性化に寄与できる高校を目指すと主張しています。これは新聞部の目指す方向と完全に一致しています。だから、私たちは力を合わせて、菅谷さんが生徒会長になれるように応援したいと思います」
ビラは恭二も見ている。菅谷幸史郎は共産思想を持ったアイヌである、と書いてあった。
「同じクラスの猪熊勇太くんが菅谷さんの推薦人代表だったのですが、野球部の顧問から運動部の推薦は越川だといわれて、推薦人を外されました」
詩織は、着席した愛華に向かっていった。
「知っているわ。だから菅谷さんは独りで演説して歩いているの」
「菅谷さんは勝てるかな?」
田村睦美が独り言のように呟いた。
「一年生では、学校のことはわからない。先生たちも、みんな越川を応援している。だから私たちが力を合わせて、菅谷さんを応援するの」
「おれたちもビラをまきますか?」
愛華の言葉を継いで、恭二がいった。
「ダメよ。ビラまきは校則違反なんだから」
愛華はきっぱりと拒絶してから、「明日から私が、推薦人の応援演説をします」といった。どよめきが起こった。愛華は続ける。
「みなさんは個別に、生徒を説得してください。ビラの件はみんな知っているんだから、それが校則違反だと伝えてください。そして菅谷さんの標茶町を元気にしたい、というメッセージを広げてください」
翌日、新聞部の緊急会議があった。全員が集ったことを確認して、南川愛華は一枚の紙片をひらひらさせて語りはじめた。
「菅谷幸史郎さんを中傷するビラが出まわっています。みなさんの靴箱にも、入っていたと思います。これは明らかに、対立候補の越川翔側がばらまいたものだと思います。許せません。菅谷さんは町の活性化に寄与できる高校を目指すと主張しています。これは新聞部の目指す方向と完全に一致しています。だから、私たちは力を合わせて、菅谷さんが生徒会長になれるように応援したいと思います」
ビラは恭二も見ている。菅谷幸史郎は共産思想を持ったアイヌである、と書いてあった。
「同じクラスの猪熊勇太くんが菅谷さんの推薦人代表だったのですが、野球部の顧問から運動部の推薦は越川だといわれて、推薦人を外されました」
詩織は、着席した愛華に向かっていった。
「知っているわ。だから菅谷さんは独りで演説して歩いているの」
「菅谷さんは勝てるかな?」
田村睦美が独り言のように呟いた。
「一年生では、学校のことはわからない。先生たちも、みんな越川を応援している。だから私たちが力を合わせて、菅谷さんを応援するの」
「おれたちもビラをまきますか?」
愛華の言葉を継いで、恭二がいった。
「ダメよ。ビラまきは校則違反なんだから」
愛華はきっぱりと拒絶してから、「明日から私が、推薦人の応援演説をします」といった。どよめきが起こった。愛華は続ける。
「みなさんは個別に、生徒を説得してください。ビラの件はみんな知っているんだから、それが校則違反だと伝えてください。そして菅谷さんの標茶町を元気にしたい、というメッセージを広げてください」