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著書「仕事と日常を磨く人間力マネジメント」の読書ナビ

036:靴箱のビラ

2019-05-29 | 小説「町おこしの賦」
036:靴箱のビラ
 翌日、新聞部の緊急会議があった。全員が集ったことを確認して、南川愛華は一枚の紙片をひらひらさせて語りはじめた。
「菅谷幸史郎さんを中傷するビラが出まわっています。みなさんの靴箱にも、入っていたと思います。これは明らかに、対立候補の越川翔側がばらまいたものだと思います。許せません。菅谷さんは町の活性化に寄与できる高校を目指すと主張しています。これは新聞部の目指す方向と完全に一致しています。だから、私たちは力を合わせて、菅谷さんが生徒会長になれるように応援したいと思います」
 ビラは恭二も見ている。菅谷幸史郎は共産思想を持ったアイヌである、と書いてあった。
「同じクラスの猪熊勇太くんが菅谷さんの推薦人代表だったのですが、野球部の顧問から運動部の推薦は越川だといわれて、推薦人を外されました」
 詩織は、着席した愛華に向かっていった。
「知っているわ。だから菅谷さんは独りで演説して歩いているの」
「菅谷さんは勝てるかな?」
 田村睦美が独り言のように呟いた。
「一年生では、学校のことはわからない。先生たちも、みんな越川を応援している。だから私たちが力を合わせて、菅谷さんを応援するの」
「おれたちもビラをまきますか?」
 愛華の言葉を継いで、恭二がいった。
「ダメよ。ビラまきは校則違反なんだから」
 愛華はきっぱりと拒絶してから、「明日から私が、推薦人の応援演説をします」といった。どよめきが起こった。愛華は続ける。
「みなさんは個別に、生徒を説得してください。ビラの件はみんな知っているんだから、それが校則違反だと伝えてください。そして菅谷さんの標茶町を元気にしたい、というメッセージを広げてください」

097cut:漆原と新谷の居酒屋

2019-05-29 | 完全版シナリオ「ビリーの挑戦」
097cut:漆原と新谷の居酒屋
――Scene15:R製薬の危機
影野小枝 いつもの居酒屋です。漆原さんと新谷さんがすごいピッチで、お酒を飲んでいます。
新谷 まさに青天のへきれきというやつだ。
漆原 ずっと親方白十字っていっていたのに。
新谷 スイスがC社を傘下に入れて、あおりでR製薬の名前が吹き飛んでしまった。日本でいちばん古い外資だったのに。
漆原 おまけに統合推進本部のこっちの責任者が、森永タヌキときている。もう終わりだな。
新谷 きみは派手にやったから、彼のさじ加減でポンだろうな。
漆原 覚悟しているさ。
新谷 支店長たちも動揺している。
漆原 1支店に2人の支店長はいらない。
新谷 昨年が創立70周年だった。寿命だったのかな。
漆原 日本の実績ではC社にかなわないし、存続会社がそうなるのは仕方がないかもしれない。
新谷 おれは内資はイヤだ。
漆原 辞めるしかないようだな。
影野小枝 寂しいお酒になりました。急にお酒のピッチが落ちて、ため息ばかりの席になっています。

橋本治『負けない力』出た

2019-05-29 | 妙に知(明日)の日記
橋本治『負けない力』出た
■トランプさんへの「おもてなし」が過剰すぎると批判がでているようです。私はそうは思いません。おもてなしに過剰という言葉はあてはまりません。しかし誰かを犠牲にしてまで、その人をもてなすのはどうかと思います。相撲の升席の件です。■二、三日文体をかえてみました。スッキリこないので、元に戻しています。慣れない文体をあやつると、思考が錯乱してしまいます。■朝日文庫の橋本治『負けない力』が1年ぶりに書店にならびました。帯には「ロングベストセラー『知性の顛覆(てんぷく)』(補:朝日新書)につながる一冊」とあります。こちらは入手が難しいので、『負けない力』をぜひ読んでみてください。
山本藤光2019.05.29