山本藤光の文庫で読む500+α

著書「仕事と日常を磨く人間力マネジメント」の読書ナビ

029:新聞部への入部

2019-05-22 | 小説「町おこしの賦」
029:新聞部への入部
恭二は詩織の誘いもあり、新聞部への入部を決めている。新聞部は年に四回、ブランケット版の「標高新聞」を発行している。ブランケット版とは、朝日新聞などと同じサイズのことである。恭二は文章を書くのも、本を読むのも苦手だった。しかしこれといって入りたいクラブもないので、強引に誘う詩織にしたがったまでである。

新聞部は佐々木部長が卒業し、後任の部長として南川理佐の姉・愛華(あいか)が就任したばかりだった。愛華は二年生で、恭二の兄と同級生である。
「今年は瀬口恭二くん、藤野詩織さん、秋山可穂さんの三人が入部してくれました。佐々木先輩がいなくなったことだし、これからの標高新聞は、標茶町の活性化をテーマに、新たな紙面作りに挑戦します」
愛華は肩まで届いている髪を、かきあげてから続けた。目元は理佐とそっくりだった。
「これまで、学校内のニュース以外は書いてはいけない、というしばりがありました。しかしそれって、おかしいと思います。標高(しべこう)は標茶町という過疎化が進んでいる、貧乏な町にあります。だから私たちの若い力は、町の発展に必要なんです」
 過去のことはわからないまま、恭二は愛華の演説を心地よく聞いた。せっかくの地方再生予算を、とんでもないプロジェクトでムダにした大人たちが、許せなかった。めらめらと、闘志がわいてきた。

 最後に顧問の長島太郎先生が、あいさつに立った。長島は国語が専門で、教師になって二年目とまだ若い。
「私は南川の標茶町の発展にも寄与したい、という考えに賛成だ。この町は空気だけではなく、樹までも死んでいる。若い力で、死んだ町を活性化させる。それを標高新聞編集の中核にすえた新たな企画を、楽しみにしている」
恭二の胸のなかに、熱いものがストンと落ちた。


091cut:SSTアカデミー初日

2019-05-22 | 完全版シナリオ「ビリーの挑戦」
091cut:SSTアカデミー初日
――Scene14:SSTアカデミー
影野小枝 SSTアカデミーに選ばれた18人の営業リーダーが集まっています。みなさん不安そうですし、不満そうです。何でおれが苛酷な同行をしなければならないんだ、と顔に怒りが表れています。
漆原 みなさんには、同行の威力を実体験していただきます。もはや評価者ではない立場で、見知らぬMRと同行の毎日を過ごさなければなりません。これから紙を配りますので、自分の強みと弱みを書いてください。自分を知ることは、極めて大切ことですから、じっくりと自分を見つめ直してもらいたいと思います。
影野小枝 漆原さんが席をはずしたとたんに、桑田さんへの集中砲火がはじまりました。
富樫 2か月半も現場を離れて、うちの業績が落ちたらどう責任を取るんだ?
桑田 もしも業績が落ちたら、富樫さんが偉大だったことの証明になります。しかし落ちなかったら、どうしますか? つまり富樫さんがいなくてもいいという証になるんですよ。そこに今までのままで、のこのこと戻るんですか。
鈴木 2か月間同行して、MRのレベルが上がらなかったらどうなるんだい? 相手がお粗末で、伸びないってことだって考えられる。
桑田 みなさんの同行対象からは、P評価(最低評価)のMRは外してあります。つまり誰もが伸びる可能性があるMR、と理解してください。
富樫 冗談じゃない。やってられないよ、こんなこと。
桑田 あなたがいなくても、営業所の数字は落ちません。私が保証します。
富樫 何だって、お前少し天狗になっていないか。
佐藤 まあまあ、もめなさんな。私はSSTを受け入れて知っているけど、彼らのお陰でMRのレベルは格段に上がった。同行は本来、営業リーダーの仕事だろう。それを忙しさにかまけて、おれたちは満足な同行をしなかった。おれはSSTのようにはできないかもしれないが、MRのために全力を出そうと思っている。
影野小枝 佐藤さんが取りなしてくれなければ、どうなっていたのでしょう。

コレット『シェリ』新訳出た

2019-05-22 | 妙に知(明日)の日記
コレット『シェリ』新訳出た
■昨日の朝日新聞の記事です。ついに政府は重い腰を上げました。――韓国大法院(最高裁)が日本企業に元徴用工らへの賠償を命じた判決をめぐり、日本政府は20日、日韓請求権協定に基づいて、第三国を交えた仲裁手続きに入ることを韓国政府に要請した。――おそらく韓国は応じないでしょうから、日本単独での仲裁手続きとなるでしょう。■コレット『シェリ』は、河野万里子訳で光文社古典新訳文庫の仲間入りをしました。コレットは『青い麦』(光文社古典新訳文庫、河野万里子訳)を「山本藤光の文庫で読む500+α」で紹介しています。すばらしい訳文でしたので、本書を読むのは楽しみです。
山本藤光2019.05.22