034:生徒会長選挙
六月になった。高校生活に慣れてきたとき、生徒会長選挙の候補者募集が行われた。例年なら学校側が推薦する誰かが、生徒会長に就任する。しかし今年ばかりは違った。
何と一年生の菅谷幸史郎(こうしろう)が、名乗りを上げたのである。対立候補は学校側推薦の二年生・越川翔だった。彼は標茶町町長・越川常太郎の孫である。
学校側は菅谷幸史郎に、立候補の撤回を求めた。一年生では校内のことが、わからない。だから立候補を、取り下げるように。表向きは、そのように説得された。しかし菅谷には、学校側の底意が見えていた。彼は頑として、説得を聞き入れなかった。
昼休みの恭二のクラスにも、生徒会長候補の菅谷は、たすきをかけてやってきた。
「生徒会長に立候補しました、菅谷幸史郎です。四年ばかり、土木作業員をやっていました。理由は高校へ進学する、お金がなかったからです。やっと資金が貯まったので、標茶高校を受験しました。無試験でしたが、合格しました。私は標茶中学の卒業生ですが、日本一雄大な標茶高校に憧れていました。
今回生徒会長に立候補させていただいたのは、標茶高校を名実ともに日本一の高校にしたいからです。そのためには、勉強もクラブ活動も、そして何より標茶高校のみなさんが、町の活性化に貢献できるような学園を目指さなければなりません。どうか、みなさんの清き一票を、おっさん、菅谷幸史郎へとお願いします。私なら、できます」
大きな拍手が、巻き起こった。恭二は彩乃さんのことを、思い出していた。働きながら、定時制高校に通っている。彼女も、兄も、何と強い自分を持っているのだろう。
菅谷は標茶町の活性化のために、といった。恭二の心のなかで、また新たなうねりが起こった。標茶町のために、自分ができる何か。まだ磨りガラス越しにしか見えないが、おぼろげながらやるべきことが、見えてきたような気がする。
六月になった。高校生活に慣れてきたとき、生徒会長選挙の候補者募集が行われた。例年なら学校側が推薦する誰かが、生徒会長に就任する。しかし今年ばかりは違った。
何と一年生の菅谷幸史郎(こうしろう)が、名乗りを上げたのである。対立候補は学校側推薦の二年生・越川翔だった。彼は標茶町町長・越川常太郎の孫である。
学校側は菅谷幸史郎に、立候補の撤回を求めた。一年生では校内のことが、わからない。だから立候補を、取り下げるように。表向きは、そのように説得された。しかし菅谷には、学校側の底意が見えていた。彼は頑として、説得を聞き入れなかった。
昼休みの恭二のクラスにも、生徒会長候補の菅谷は、たすきをかけてやってきた。
「生徒会長に立候補しました、菅谷幸史郎です。四年ばかり、土木作業員をやっていました。理由は高校へ進学する、お金がなかったからです。やっと資金が貯まったので、標茶高校を受験しました。無試験でしたが、合格しました。私は標茶中学の卒業生ですが、日本一雄大な標茶高校に憧れていました。
今回生徒会長に立候補させていただいたのは、標茶高校を名実ともに日本一の高校にしたいからです。そのためには、勉強もクラブ活動も、そして何より標茶高校のみなさんが、町の活性化に貢献できるような学園を目指さなければなりません。どうか、みなさんの清き一票を、おっさん、菅谷幸史郎へとお願いします。私なら、できます」
大きな拍手が、巻き起こった。恭二は彩乃さんのことを、思い出していた。働きながら、定時制高校に通っている。彼女も、兄も、何と強い自分を持っているのだろう。
菅谷は標茶町の活性化のために、といった。恭二の心のなかで、また新たなうねりが起こった。標茶町のために、自分ができる何か。まだ磨りガラス越しにしか見えないが、おぼろげながらやるべきことが、見えてきたような気がする。