山本藤光の文庫で読む500+α

著書「仕事と日常を磨く人間力マネジメント」の読書ナビ

018:打ちこむべきもの

2019-05-11 | 小説「町おこしの賦」
018:打ちこむべきもの
釧路から札幌までは、特急電車で四時間半。前後になっている指定席を回して、四人は向かい合わせに座っている。電車が発車する前に、詩織は赤いかばんからおにぎりを取り出し、みんなに配った。塩鮭の入ったおにぎりをほおばりながら、勇太は思い出したようにいう。
「おれたちの名前が載ったあの新聞、切り取ってお袋が神棚に置いた。無試験だったから、照れくさかったよ」
「あら、勇太は試験があった方がよかったの?」
 理佐がまぜかえす。猪熊くんの呼称は勇太くんになり、いつの間にか勇太に変わっている。呼称の進化は恋の進度と、併走しているのかもしれない。恭二は、そんなことを考えていた。

「さっき塘路から乗った、あの美人は誰?」
ペットボトルのお茶を飲んでから、勇太は尋ねた。
「うちの兄貴の元カノ。今は働きながら、湖陵の定時制に通っているんだって」
「あの人のお兄さんは、今度標茶高校の一年になるんだよ。四年間働いて、高校進学を実現させたんだって」
「すごい人がいるんだね、何て名前?」
「お兄さんの名前は、聞かなかった。彼女の名前は、菅谷彩乃さん。うちの兄貴によろしく伝えてくれっていわれた」

車掌が検札にやってきた。一度途切れた話を、恭二はふたたび引き戻す。
「兄貴がいってたけど、ここ十年ほど北大へは誰も入っていない。だからうちの兄貴や理佐のお姉さんは、学校の希望の星なんだそうだ」
「理佐のお姉さん、顔がよくて、頭もいいって評判だよね」
 詩織の言葉に理佐は一瞬笑みを浮かべ、すぐに眉間にしわを寄せた。
「そこまでは間違いないんだけど、一本気で猪突猛進タイプだから、いつもハラハラさせられている」
「理佐のお姉さんは新聞部だよね。私、新聞部に入ろうと思っている」
「新学期からは、部長になるっていっていた」
「わあ、すごい。恭二もやっぱり新聞部だね」
「おれはごめんだ。なんだか湿っぽくて暗い感じがするから、詩織一人で入ればいい」
「野球に代わるものを、早く見つけろよな。何か打ちこむべきものがなけりゃ、恭二は腐り果ててしまうから」
 勇太がいった。これは本音である。恭二の怠け癖については、勇太がいちばんよく知っている。車内放送が、「間もなく札幌」と告げた。四人の気持ちを映したのか、車窓の風景が急に華やいだものになった。

080cut:SSTの新たなる役割

2019-05-11 | 完全版シナリオ「ビリーの挑戦」
080cut:SSTの新たなる役割
――Scene12:SSTプロジェクトの役割
影野小枝 SSTプロジェクトは、残すところあと3カ月になりました。毎月開催されるSST会議には、社長や経営陣も参加します。初めてSST会議に出席したとき、現場発の生の声を聞いて、社長はこんなことをいっています。当時を再現してみます。
社長 私はずっときれいな話ばかりしか、耳にしていなかった。SSTメンバーが現場からあげてくれた、山のような課題を克服しなければ、業績は上がらないと実感した。今後とも課題と合わせて、改善点の提案を続けてもらいたい。次回の会議からは、取締役会議のメンバーにも参加を呼びかける。
漆原 SSTの任務に、新たなミッションが追加された瞬間でした。会社の経営陣に提案できるようになったのですから。これでSSTのステージは、間違いなく1つ上がりました。
磯貝 私も社長の言葉に感動しました。単なるMRのレベルアップ部隊が、現場発の提案を会社の中枢に向けて提案することを求められたのです。

『ユリイカ』は橋本治追悼特集

2019-05-11 | 妙に知(明日)の日記
『ユリイカ』は橋本治追悼特集
■雑誌『ユリイカ』(青土社)2019年5月号は、橋本治の追悼特集になっています。まるごと一冊が橋本治を取り上げており、とても内容豊富なものでした。まだ拾い読みの段階ですが、ぜひいすべてを読んでみたいと思います。■北朝鮮の挑発がまた始まりました。自分の存在をアピールするために、いたずらっこがやっていた行為と似ています。もっとも、この例は小学校のときの教室でのことですが。
山本藤光2019.05.11