21世紀航海図;歴史は何も教えてくれない。ただ学ばない者を罰するだけ。

個人の時代だからこそ、個人を活かす「組織」が栄え、個人を伸ばす「組織」が潤う。人を活かす「組織」の時代。

リーマン・ブラザーズ破綻

2008年11月30日 11時48分45秒 | Weblog
 リーマン・ブラザーズは1850年に創業した老舗金融機関だった。1850年と言えば、日本に黒船のペリー提督来航する1年前である。1929年の世界恐慌をも生き残り、昨年までは業績を拡大させ続けていた企業であった。この大企業が、住宅市場の崩壊、金融危機を受け、60兆円以上の損失をだして倒産した。
 アジア部門は野村HDが買い取ることが決まり、他の事業も買い取り企業が決まった。そのため、この倒産で大量の失業者が出る恐れはないが、事業を買い取った側の企業が大問題を抱える心配はある。つまり、野村HDがアジア部門の買収を通して、巨額の赤字に陥る可能性があるのだ。
 何と言っても、リーマン社員の給与は巨額に上る。そして、「独立して仕事ができる」と言うよりも「暴走する」社員と言うイメージがある。リーマンの日本法人は、元・丸紅社員による単純な詐欺行為にも引っ掛かり、巨額の損失を出した。確認の電話を一本するだけで防げた単純な詐欺である。リーマンの日本法人の経営・運営能力に問題があるのは間違いない。野村HDは、リーマン社員の自尊心・独立性を損なうことなく、業務管理を強化していくことができるのだろうか?


また、このリーマンの倒産を受けて、投資資金がリスク回避に動いている。「新しい投資先」として商品以上は高い注目を集め、高い利回りを保証してきた。だが、リスク回避から商品市場から資金が流出し、WTI原油価格は下落が進んでいる。一方、金市場は「有事の金」として注目を集め、価格が下落していない。

そして、市場から流動性の消滅している。不信感から、短期金利が急上昇している。しかし、資金が枯渇しているわけではない。いまだに資金は余っている。そのため、長期金利は下落が進んでいる。短期と長期の債券金利のバランスが完全に崩れている。


他方、日経平均株価とニューヨーク株価のバランスも崩れた。
 サブプライム・バブル崩壊の影響を直接受け倒産企業が続出しているアメリカと違い、日本経済への悪影響は限られている。米自動車メーカー・ビッグ3(GM/Ford/クライスラー)は「倒産」の危機にさらされているが、日本の自動車メーカー・ビッグ3(トヨタ・ホンダ・日産)は最悪の場合でも60%の減益にとどまっている。つまり、まだ黒字経営を続けているわけだし、手元資金も積み上がっている。
銀行・金融部門でも同じだ。金融危機を受け減益発表をする銀行は増えているが、軒並み赤字発表をしている海外の金融機関に比べれば、財務健全性はかなり高い。
 アメリカ企業で黒字倒産するところは少ない。それは、ほとんどのアメリカ企業が収益を上げていないからだ。それに比べれば、黒字倒産が多い日本の経済の健全性はかなり高いと言える。日本で黒字倒産が数多く起きるのは、一概に日本の「金融機関」が無能だからだ。規制で競争から保護されているために、切磋琢磨を怠っている日本の金融機関は使い物にならなくなっている。日本の金融行政はおかしい。海外の金融機関で日本で初めて、銀行免許を取得したアメリカの金融機関は倒産しかかっている。免許を与えてる審査機関の能力が疑わしい以上、免許を受けている金融機関の能力も疑わしいとしか言いようがない。
 とりあえず、日本の製造業の世界的競争力がかなり高い。ニューヨーク・ダウ平均株価$8000に対して、日経平均株価は1万円程度が適当であると思う。


 原油価格の下落を受けて、資産国政府系ファンドの資金繰りにも不安があるようだが、心配するような問題は全くない。ソ連崩壊前後の教訓から、ロシア政府は原油価格が$30まで下落しても良いように、積み立てを続けてきた。中東の政府も石油収入の減少で「産業構造の改革」への投資を減らしているが、通常の運営資金には問題がない。「産業構造改革投資」とは数10年後、原油が枯渇した後でも経済成長が続けられるように、IT産業や観光業を育成するための投資である。
 一方、為替市場を固定化させるために市場介入を行って、100兆円以上の外貨準備がある中国は、株価下落後の割安感を受け、資金運営投資を積極化さている。ロシアや中東の政府系ファンドも、先進的技術を持つ企業を欧米で買い漁り、経済成長を加速させるために、株価が割安な今、投資を積極化させる可能性がある。


欧米は金融自由化が進むうちに、金融業界で過当競争が起きていた。無理な貸し付けが横行し、住宅バブルを引き起こしたのも、サブプライム市場が拡大したのも、金融業の過当競争が原因だった。この金融危機で過当競争状態が合併・買収を通して、解消されていくだろう。すでにアメリカの銀行ランキングのトップ10のほとんどは入れ替わった。

 今から、生き残った金融機関側の収益性の回復・急成長が期待される。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。