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新国立劇場の「ワルキューレ」

2021-03-24 16:16:30 | オペラ
3月23日(火)の昼に、新国立劇場でワーグナーのオペラ「ワルキューレ」を見る。当初予定されていたキャストはほぼ全滅で、ほぼ全員が変更されている。コロナ禍のためだとは言え、こうまでキャストが変わると、文句を言うよりもあきれるしかない。主要キャスト6人のうち、予定通りというのはフリッカ役の藤村実穂子だけで、他は全員変更。外国からこれなくなったこともあり、外国人はヴォータン役のクプファー=ラデツキーだけで、あとは全員日本人。ワーグナーの歌をどこまで日本人が頑張れるのかが試されたが、おおむね女性陣は健闘したが、男性陣は弱かった。特に、主役ともいえるジークムントは、1幕と2幕を違う人が歌うという変則的なキャスティングだった。

キャストだけでなく、指揮もワーグナーの得意な全音楽監督飯森氏が入院して手術を受けたということで、現音楽監督の大野和士が代理で振ったが、最終日の23日は大野氏の予定もつかないということで、城谷正博の指揮だった。

演出は再演であり、新たにコメントするものではないが、好きになれない部分はあるとしても、それほどわかりにくくもなく、平均的な出来。ただし、2幕の照明はずっと逆光線が続いて、演技者の顔や表情が見にくいのは問題だと思う。

1幕は村上敏明がジークムントをうたったが、調子が悪かったのかどうか、ちっとも声が出ていないし、最後のほうはエネルギー切れなのか、歌うのも苦しそうだった。これでは2幕も歌うのは無理として芸術監督が2幕を秋谷直之にしたのはわかるが、いっそ1幕から秋谷に歌わせたほうがよかったのではないかと思わせる出来だった。それに対してジーグリンデ役の小林厚子はよく声が出ていて、これならば日本人のワーグナーを聞いてもよいと思わせるものだった。

2幕はヴォータン役のラデツキーと妻フリッカ役の藤村が安定していて安心して聞け、ブリュンヒルデ役の池田香織も頑張ったので、聞きごたえはあったが、よく聞いているとヴォータンの説明がくどくどと長く延々と続くので、聞いているだけで疲れた。こういうところがワーグナーの文学趣味で、まるで台詞劇のように長く独白的なセリフを続けるので、まるで寺子屋の野辺の送りを見ているような気分となった。

3幕の最初はワルキューレの騎行で、オーケストラの聞かせどころのはずだが、東京交響楽団では荷が重く、迫力が感じられない演奏となった。ワーグナーはオーケストラで聞かせるような部分が多いので、もっとしっかりとしたオーケストラにしないと面白くない。しかし、芝居としてはヴォータンの悩める姿がよく出ていて面白くはあった。

1幕が65分、休憩40分、2幕は95分で休憩35分、3幕は75分で、午後2時に始まって、終了は5時20分ごろ。50パーセント収容だが、センター席の前方に集中して着席しているので、結構疲れた。若い頃には朝から夜まで「仮名手本忠臣蔵」の通しを見ても平気だったのに、歳を重ねて体力が低下して、腰が痛くなった。

家に帰って軽い食事。サラダ、オリーブを乗せたブルスケッタ、キャビア(の偽物)、イワシのオーヴン焼きなど。飲み物はCAVA。

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