アーバンライフの愉しみ

北海道札幌近郊の暮らしの様子をお伝えしています。

伏せられた過去~角田光代著「ツリーハウス」

2015年04月21日 | 読書三昧
「後悔したって、もし、なんてないんだよ。」

大陸からの引揚者で、場末の東京で食堂を営なむ庶民の三代にわたる物語。産経新聞2008年10月~2009年9月連載、470頁の大作。



物語~戦後の混乱期、満州から命からがら引き上げ、新宿西口近くに根をはり、親子三代にわたり営業を続けてきた「翡翠飯店」。創業者の祖父母には、子供や孫たちに話すことのできない過去があった・・・。

今の一見平和だが不気味な世の中に退屈せず、決して飲み込まれてはいけないと、命がけの逃避行を経験した祖母は言いたかったのではないか。

特に、満州開拓団から脱走し中国人に身をやつして逃げ延びた夫(祖父)とともに暮らし、そして故国への引き上げまでの苦難を語った根なし草の夫婦の物語が胸をえぐる。

満州、ソ連軍の侵攻、強制収容所、食料不足、子供の死、引き上げ船、闇市、引揚者間の絆等々、ひとつひとつのフレーズが物語る戦後の(親世代の)苦労を(戦後70年に生きる)私たちは決して忘れてはなるまい。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
« 公園の街 | トップ | やっとつながりました »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
何とかして読みたい! ()
2015-04-21 17:26:48
エゾフクロウさんの書評を読むたびに「読みたい!」と思いつつ、ネット検索しては申し込み段階で挫折、お客様が来て中断して挫折、等々…中々落ち着いて読書環境までたどり着けずにいますが、また何とかして読みたい本リストに加えさせて頂きます…(^^;)
返信する
空さん (エゾフクロウ)
2015-04-22 18:39:42
こんにちは。

この角田さんのご本は、真の意味で小説らしい小説と
言えましょう。

ご一読をおすすめいたします。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。