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Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ジョナサン・ハーヴェイの音楽

2010年09月03日 | 音楽
 毎年恒例のサントリー芸術財団主催の「サマーフェスティヴァル2010」。今年のテーマ作曲家は1939年生まれのイギリスの作曲家ジョナサン・ハーヴェイだった。その最終日のオーケストラ・コンサートをきいた。指揮は沼尻竜典さん、演奏は東京フィルハーモニー交響楽団。プログラムは次のとおりだった。

(1)ジョナサン・ハーヴェイ:ボディ・マンダラ(2006年)
(2)リヒャルト・ワーグナー:聖金曜日の音楽 ~舞台神聖祝典劇「パルジファル」から
(3)エクトル・パラ:カルスト=クロマⅡ(2006年)
(4)ジョナサン・ハーヴェイ:80ブレス・フォー・トウキョウ(2010年)

 「ボディ・マンダラ」はチベット仏教の儀式が基礎になっているそうだ。チベットホルン(ドゥンチェンという名前らしい)の響きをトロンボーンが模して、粗野で威圧的なリズムを続ける。途中からヴァイオリンなどの高音の音型が繰り返され、その背後ではチベットシンバルが喧しく鳴らされる。オーケストラにはヴィオラが欠けている。そのためにどこか空洞感がある。

 プログラム構成はハーヴェイ自身による。ワーグナーもハーヴェイの選曲だ。向井大策さん執筆のプログラム・ノートに興味深いことが書いてあった。「ワーグナーは、インドを舞台に不可触の娘プラクリティがブッダに帰依するまでを描いた楽劇《勝利者たちDie Sieger》の構想を長年温めていた。この構想が実現することはなかったが、《パルジファル》の創作にも影響を与えたとされている。」
 ジョナサン・ハーヴェイは、「プラクリティの物語にワーグナー自身の私生活を織り込みながら展開する《ワーグナーの夢》」Wagner Dreamというオペラを作曲したそうだ(2006年)。どういうオペラなのだろう。

 次のエクトル・パラも、ハーヴェイと同様、私にとっては未知の作曲家だった。1976年生まれのスペインの作曲家で、ハーヴェイにも師事したとのこと。ただ作風は相当ちがう。ハーヴェイの作品は感覚的に洗練されているが、パラの作品は構築的な感じがした。短い曲。もっと展開してほしかった。

 「80ブレス」は今回の委嘱作。80はオーケストラの各奏者を意味しているようだ。ヴァイオリンやフルートの高音で始まり、デジタル的な美しい音響が続く。突然トロンボーンのソロが入ってきて破調をきたし、そのまま終わる。前半の呼吸のリズムは「聖金曜日の音楽」に遠くこだまするものがあった。沼尻竜典さん指揮の東京フィルの演奏もクリアーで美しかった。
(2010.8.30.サントリーホール)
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