Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

都響の9月定期(Bシリーズ)

2010年09月25日 | 音楽
 都響の9月定期(Bシリーズ)はアレクサンドル・ドミトリエフの客演指揮で次のプログラムが組まれた。
(1)シチェドリン:管弦楽のための協奏曲第1番「お茶目なチャストゥーシュカ」
(2)ハチャトゥリャン:ヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン:セルゲイ・ハチャトゥリャン)
(3)ショスタコーヴィチ:交響曲第1番

 いずれも才気あふれる曲が並んでいる。20世紀のロシア音楽にどっぷり浸った指揮者でないと組めないプログラムだ。

 ドミトリエフは今年75歳のベテラン指揮者。今までも日本のいくつかのオーケストラを振るのをきいたことがある。地味だがオーケストラを整える手腕にはたしかなものがある。

 1曲目の「お茶目なチャストゥーシュカ」は、アンティークシンバルと小太鼓がジャズのドラムスを模倣し、コントラバスがベースを模倣するなかで、機知にとんだ楽想が飛び交う曲だ。こういう曲ではもっとノリのよい演奏も可能だろうが、ドミトリエフの指揮はじっくり構えて、けれんのない演奏をした。これがほんらいの姿かもしれない。

 斎藤弘美さん執筆のプログラム・ノートによれば、「スコアのおしまいには「エピローグ」が付いている。これは拍手に応じてのオプションで、演奏するかどうかは任意となっている」とのこと。この日は演奏されなかったと思う。どういうエピローグなのだろう。

 2曲目のヴァイオリン協奏曲は、作曲者と同名(ただし血縁はないらしい。アルメニア人にはこの名前が多いのだろうか)のヴァイオリン奏者が見事だった。プロフィールによれば1985年生まれで、2000年のシベリウス・コンクール、2005年のエリザベート王妃コンクールでそれぞれ優勝しているとのこと。若者だけあって、ベテラン奏者が弾くと物々しくなるこの曲を、ひきしまった造形できかせてくれた。なかでも第2楽章のほりの深い表現には、オーケストラともども、きき応えがあった。

 3曲目のショスタコーヴィチの交響曲第1番は、いうまでもなくレニングラード音楽院の卒業制作だ。堂々としたこの交響曲が卒業制作ということに、作曲者の天才ぶりがうかがわれる。その天才に相応しい苦難の人生がショスタコーヴィチには用意されていた。これは斎藤弘美さんも触れている交響曲第13番「バービイ・ヤール」、第14番「死者の歌」、第15番の3曲をかかせるためだったのかと、今の私たちには思える。演奏は第4楽章になって、それまでの軽い音が、なぜか重くなったように感じられた。
(2010.9.24.サントリーホール)
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