元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

懲戒は、社会通念上相当であらねばならない。

2011-07-19 05:18:46 | 社会保険労務士
 就業規則~懲戒の事由(その2)
 
 前々回の{就業規則~「懲戒事由」について}では、就業規則において、懲戒処分の種類や程度を記載し、それに沿った処分をしなければならないということを申し上げました。では、就業規則に書いてあればその理由は何であれ懲戒ができるのでしょうか。
 
 19年にできた労働契約法に、次のような条文があります。「当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、権利濫用として無効にする。」とあります。非常に抽象的な表現です。それもそのはずで、裁判の積み重ねで出来上がってきた理論をそのまま、労働契約法が新しくできるときに、その判例をそっくりそのまま持ってきたものだからです。
 
 懲戒については、その有効性を判断する基準が、裁判例の積み重ねで出来ていたのですが、それがこの「客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められない場合」は、権利濫用で無効であるというわけです。
 
 懲戒権は、前々回お話ししたようにに、企業秩序の維持のため会社に与えられた権限です、懲戒処分の理由がある場合に、懲戒処分を行うか、いかなる処分を行うかは、使用者の自由であります。使用者の裁量に任されているということです。

 そこで、その裁量に、枠をはめたのが、この条文です。権利濫用のこの条文、又は、裁判で積み上げられたこの法理は、その裁量を逸脱した場合に無効になるのです。具体的な事例が出てきた場合に、裁量権を逸脱して、無効になるかを判断する際に、判断基準となるのが、この権利濫用の条文です。多くの事案を当てはめるときに、その判断基準とするためには、逆に言うと、抽象的に書かれているのも仕方がありません。

 それでは、実際懲戒を行うのに、そんな抽象的な条文では判断しようがないではないかという声が聞こえてきそうです。私の頭ではこれ以上の説明ができませんので、お得意の引用で、ご勘弁願います。

 「具体的には、就業規則の規定が妥当であるか(罪に見合った罰になっているか)、懲戒事由にあたることが裏付けをもって確認をされているか、その社員の行為に見合った罰であるか、事前に社員の言い分を聞いたり処分のための社内検討を行うなどの手続きがされているか等の点が厳しく判断されます。」となっています。(「社員を適正に辞めさせる法」労務リスクソリューソンズ著、アニモ出版初版P29、ただし、懲戒解雇の説明で述べられているところですが、懲戒全般にも同様に考慮すべきことであると考えられます。)





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