元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

僧侶、力士、プロ野球選手は労働者か?!

2016-06-11 17:00:22 | 社会保険労務士
 労働者であれば、労働基準法等の保護を受けられる大きなメリット!!

 労働基準法で定義する労働者に該当すれば、他の最低賃金法や労働安全衛生法、労働災害保険法、雇用保険法等の労働者にも該当することになります。そこで、労働者であるかそれとも労働者として認められないかは、労基法の割増賃金が請求できるか、就労中に負傷をした場合に労災保険が適用になるか、合理性等としての「解雇」の正当性が必要になるのか、就業規則の規定する退職金や賞与等の対象となるのかなど、これは大きな判断の分かれ目となります。

 労働者に該当するかといったこの「労働者性」の問題は、使用者に指揮監督されているかどうかを重要な判断要素としたうえで、他の総合的な考慮を含めて判断されています。個人で事業を行っているものでも、この労働者性が問題となり、例えば、最近問題のあったバイク便等メッセンジャーについては、通達では労働者性が肯定されたところですが(平成19年9月27日基発0927004号)、裁判では労働者性が否定されて、これにより当該契約の解除は、労働契約法の「解雇ではない」とされています(ソクハイ事件・東京地判平成25年)。このように、委託等の契約について、裁判例は、後を絶たないところです。

 その中で、興味ある特殊なところを取り上げたいと思います。

 1、宗教法人と僧侶の関係は、雇用関係にあり、破門は「解雇」であるとした例→そして、解雇の理由に正当性があるとした。(妙應事件、東京地判平成22年)
 2、幕内以下の力士(力士養成員)と日本相撲協会との契約は、労働契約ではなく、準委任類似の契約であるとした例(日本相撲協会事件、東京地決平成23年)
 3、幕内力士(力士)と日本相撲協会との契約は、雇用契約・準委任契約としてみることは困難であって、有償双務契約には違いないが私法上の無名契約(=民法上規定されている典型契約とは違う契約)であるとした例(日本相撲協会事件、東京地判平成25年)

 まだ記憶に新しいと思われますが、日本プロ野球選手会が、労働組合上の労働組合としての資格認定を受けたことが話題に上りました。(東京都労働委員会1985年認定、日本プロフェッショナル野球組織事件=東京高決平成16年) これはプロ野球選手が労働組合上の労働者であることを前提とした判断ですが、これはある程度独立性がある就労形態であっても、事業組織の中に組み込まれて、企業等の指揮命令下で就労するという実態があれば、使用者に対峙しなければならないという意味で、労働者として認めたものということができます。ここでいう組合法の労働者とは、労働基準法等とは若干違ったもの(労働基準法上の労働者かどうかは疑問)ではありますが、少なくとも企業等に「使用従属する」労働者(=交渉の面からみれば弱い立場)という大きな意味では、軌を一にする同様の概念であることは間違いありません。

 なお、シルバー人材センターは、実質、就業機会の提供等を行っていますが、高年齢法によって、ここでは労働法規の適用は除外されており、「労働者」ではないという解釈になっています。

 参考 労働法実務講義 大内伸哉著 日本法令

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