元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

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年休取得5日以内(時間単位)超(計画的付与)の取違いをなくす<社労士試験「比較対照」>

2017-08-20 17:39:57 | 社会保険労務士
 計画的付与は「従来の労働者の自由な時季指定には年休消化率に限界」を感じ⇒考えの転換で最大日数に、一方、時間単位は年休本来の考え(休養)から外れ最少日数で認めたもの<背景から考えると分かる>

 年休においては、一般的に、間違えやすいものとして、5日以内(時間単位年休)と5日超(計画的付与年休)があり、社労士試験に出そうなところでもある。どちらも、労使協定により定めることは共通であるが、時間単位については、与えられた休暇のうちの「5日以内」が取得可能であって、一方年休の計画的付与においては、与えられた有給休暇の「5日を超える部分」である。この計画的付与については、5日以内は、労働者に年休を自由に取らせるというもともとあった年休の与え方である。このもともとあった年休の取らせ方というのは、労働者が時季を指定すれは、使用者が「時季変更権」を行使しない限り、一方的な労働者の意思表示により(いわば形成権として)年休取得が認められるというものである。それに対して、この計画的年休は、昭和63年改正で規定されたものであって、使用者が計画的に付与できるものであり、逆に云えば労働者個人で自由に使えない・選択できない部分になる。これが5日超の部分である。

 もう一度整理すると、時間単位では「5日以内」で必要最小限のもので認められたものであるといえるし、計画的付与においては「5日を超える部分」であって「5日」(この5日は労働者が時季指定により自由に使える部分)を除けばすべて計画的付与にすることができるということで最大限に利用できることになる。

 この「5日」という共通のワードが使用されているが、以内と超えるであり、どちらがどちらか分からなくなる。社会保険労務士試験問題にもこれを取り違えた問題が○×問題として出そうである。しかし、これはその背景を考えれば、分かりやすい。取り違えはなくなる。

 まず、計画年休付与からいくと、従来の「時期指定権」という労働者にイニシアチブを取らせ、労働者が指定した日に年休を取得する方法では、組織で労働者にとっては、他の者に迷惑をかけるとこいうことでなかなか年休は取りずらい雰囲気がある。事実、年休の消化率は半分以下であった。ということで、これでは年休取得に限界があった。ちなみに、2014年の年休取得率(消化率)は、47.6%半分以下である。そこで、計画的付与によって、使用者が計画的に指定した労働者に有無をいわさず年休を取らせることで、政府は年休消化の促進になると考えた。もちろん、交代制で年休(交代制)をとってもいいし、会社全体で全員で休む方法(一斉年休)だってある。そう考えると、従来の時季指定権という労働者指定の自由な年休の取り方である「5日分」だけを残しておいて、あとの残りの「5日を超過する分」については、計画年休に持っていくという思い切った最大の日数で付与したということではないか。付与日数の考え方の転換である。

 一方、時間単位の年休に対しては、日本では、体を休ませて明日の鋭気を養うということから少なくとも1日単位の年休をとらせるというのが考え方の根本にあり、その意味からはこれは反している。これがヨーロッパでは最低限2週間の長期休暇を与えるというのが原則であり、日本とは比べようのない格段の差があるところではあるが・・・。半日単位の年休もやっと昭和63年から積極的ではないが通達で認める形になっている。そして、平成20年になって、鋭気を養うという意味からすると逆行することになるが、夫婦共稼ぎの増加等時間単位のちょっとした休暇がどうしても必要と言うことから、それを法で改めて時間単位の年休で処理することになったと考えられる。また、前述のように、年休の消化自体が悪かったので、少しでも全休消化につながればと言うもくろみもあったと思われる。そういうことからすると、なるべく本来の目的からすると、なるべく認めたくはないが、社会情勢等から必要最小限の5日以内で時間給を認めたものであろう。

 このようにその背景というか規定を設けた目的から考えると、5日以内、5日超ということで、時間単位、計画年休を取り違えることはなさそうである。

● 時間単位の年休
 <労働基準法39条4項>
  使用者は、労使協定により、次の事項を定めた場合において、労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、時間を単位として有給休暇を与えることができる。
 (1) その労働者の範囲
 (2) 時間単位として与えることができる有給休暇の日数(5日以内に限る)
  ・・・・・・・・ 
● 年休の計画的付与
 <労働基準法39条6項>
  使用者は、労使協定により、有給休暇の時季に関する定めをしたときは、有給休暇の日数のうち5日を超える部分については、労働者の時季指定及び使用者の時季変更権の規定(労基法39条5項)にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。

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