元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

勤務時間の前後30分の育児時間付与で可であるが別の時間の個別労働者請求にも対応すべき!

2021-07-25 10:08:33 | 社会保険労務士
 育児時間付与は有給休暇とは違い使用者の「事業の正常な運営を妨げる場合」の時季変更権はないが無給でも構わない

 労働基準法に育児時間請求が労働者に認められているが、午前午後のそれぞれ30分の休憩時間なので、子供を預けているところまでの行き来の時間等を考えるとなかなか使いづらいものがあった。しかし、最近では子連れ出勤や職場内保育所が出てきて、この育児時間の請求の有効な運用が考えられるようになったと思う。政府も、平成31年に少子化対策の一環として子連れ出勤の促進についての予算化を図っているところである。

 労基法67条1項 生後満1年に達しない生児を育てる女性は、第34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる。
       2項 使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。

 この条文はシンプルにうまくまとめられていて、この文章のとおり読んでもらえばいい。そのまま①生後1年未満の子供を育てる女性は、②休憩時間の他に ③一日2回少なくとも30分の(休憩)時間 ④子供を育てる時間として ⑤その女性である労働者は請求することができる。そして⑥育児時間中は、使用者はその女性を使用してはならない。ということにすべてが言いつくされている。

 ただ、この文章をこのまま捉えてもらえばいいのだけれども、この条文は労働基準法の内容であって、労働者の最低基準を定めたものであって、強行規定である点である。就業規則や個別の合意で育児時間取得の制限や育児時間請求を女性労働者に放棄させることは無効となりますし、女性労働者からの請求があったら必ず付与しなければなりません。これを付与しない場合は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が課される可能性があります。また、育児時間も休憩時間の一環と捉えられ基本的には就業規則の記載事項(=休憩時間は絶対的記載事項)であるが、たとえ就業規則に記載されていなくとも、強行法規であるため、使用者は労働者からの請求があれば、当然のこと付与しなければなりませんが、女性労働者からの請求がない限り付与する必要もないことになります。

 次に解釈により注意すべき点について簡単に説明します。労基法34条の休憩時間は、労働時間の途中に置くと定めれているところですが、育児時間については何も規定していませんので、勤務時間の始めと終わりに置くこともできます。また、一日の労働時間が4時間以内である場合には、一日一回の育児時間の付与をもって足りるとされています。(昭36.1.9基収8996号)さらには、2回に分けてする請求については、労働者が拒否する趣旨でない限り、一日一回60分の付与でもよいとされています。
 また、労基法のこの規定では、有給か無給かは全く記載されていませんので、会社の方針で有給・無給どちらにするかは使用者側に任されています。また、年休みたいに請求された時季に年休を与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合」には、会社に対し時期をずらす権利を明示的に認めていますが、この育児時間についても何も規定していません。ですので、この育児時間については会社にそういった対抗措置は認められておらず、女性労働者からの請求があれば何があっても付与しなければならないことになります。

 さて、最後に特に言及したかった点について、述べます。労働者(=女性)の請求によって育児時間は認められるとされておりますが、いつ付与するかは定めていません。労働者の請求という点から言えば、労働者の主体的な請求によって認められるものであり、労働者の自由に決めるところであるといえます。もちろん現実的には会社がそれを認めるという図式が成り立ちます。基本的には、当事者に任せられているといえます。

 よくある取り決めの例では、勤務時間の始めと終わりに30分と定めるところが多くみられます。通達では、いつの時間に請求するかは労働者が自由に決めることができるものであり、取り決めにより育児時間を勤務時間の前後に設定した場合でも、それとは別の時間に女性労働者の請求がありその労働者請求の時間に労働者を働かせることは労基法67条に違反するとされています。したがって、あらかじめ労使で取り決めをしていたとしても、個別の労働者として別の時間での合理的な請求があるならば、取り決め時間の変更をしたほうが良いと思われます。

 特に子連れ出勤にあたっては、臨機応変に対応しなければいけないことが考えられますので、使用者・労働者双方で配慮すべきことなのかもしれません。

なお、就業規則例を掲げておきます。<規定例とポイントがわかる就業規則の作り方・見直し方>より
 第20条(育児時間) 
  1歳未満の子を養育する女性A社員があらかじめ請求したときは、休憩時間とは別に1日2回それぞれ30分間の育児時間を与える。ただし、1日の勤務時間が4時間以内の場合には、育児時間は1日1回とする。
 2 育児時間の給与は支給しない。
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