元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

パワハラ対策は令和4年4月から中小企業に義務化・定義により日常指導と区別が必要

2021-07-11 11:06:16 | 社会保険労務士
 パワハラは労災だけではなく損害賠償に至る場合もあり雇用管理措置によりしっかりと対応を!!!
 
 パワハラ又は正式にはパワーハラスメントの防止は、会社において取り組まなければならなくなっています。労働政策総合推進法(以下「パワハラ防止法」と呼びます。)の中で、パワハラについて、事業主だけでなく労働者に対する責務が明確化されているところです。しかも、中小企業者については、努力義務だったのが、令和4年4月からは、法的な義務化がなされることになります。

 パワハラは、指針の中で定義づけがあり、①優越的な関係を背景とした言動でありこと。これは上司が部下に対してだけでなく、部下が上司に対して、あるいは同僚に対しても、あり得るとしております。例えば、部下が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、上司もその協力を得なければ業務が円滑に進められないような場合です。課長に昇進になった異動先にその仕事に精通した部下がおり、その課長は相当苦労したというような例はよく聞きます。

 ②業務上必要かつ相当な範囲を超えた場合です。その言動が明らかに業務上の必要がない場合は、これにあたることは、分かりますが、その範囲が相当なものかどうかは難しいところです。これも指針の中で、例示があげられており、「人格を否定するような言動」「業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる激しい叱責を繰り返し行うこと」「他の労働者の面前で大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと」などがあります。失敗を繰り返す部下に対して、失敗したときに、勢い余って「無能呼ばわり」するような人格を否定したり、ついつい皆の前で大声を張り上げてしまうようなことはないでしょうか。昔のことですが、私も組織に入っていた時は、グループで仕事をしていたときに議論が発熱して大声や相手の問題点そのものまでも言及するようなこともあったかと思い反省します。パワハラ防止法(=総合労働政策推進法)が出来てからは、言動には慎重に気をつけて、パワハラと捉えられることのないようしなければなりません。
 
 そして③労働者の就業の環境が害されるものです。

 これらの3つがあった場合に、パワーハラスメントになるとされています。

 ゆえに、②に関連することですが、客観的に見て、業務上必要で相当な範囲で行われるような「適正な」業務命令や指示指導については、全く該当しない、パワハラではないのです。なんでもかんでも上司が指示ができなくなったというわけではないのです。これを区別すれば、ちゃんとした指導はもちろんできます。そのためには、部下が失敗したときに、勢いに任せて指導しない。これではその指導は必要であっても、人格攻撃やみんなの前での叱責になってしまいます。そうなれば妥当性を欠くので、パワハラと捉えられることになります。一(ひと)呼吸置くことが必要ということになるのでしょうか。

 パワハラにならないためには、事業主は次のような雇用管理措置をとらなければなりません。(パワハラ防止法に基づく指針)
 ① 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
 ② 相談窓口(外部の機関への委任を含む。)を設けて、労働者に周知
 ③ パワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応~就業規則・服務規程のパワハラに関する規定等に基づき行為者に対する懲戒等
 ④ 相談者・行為者等相談の対応又は事後の対応にあたり相談者・行為者等のプライバシーを保護する措置とその旨を労働者に周知
   ~それらを就業規則等に規定・社内報等に労働者が解雇等の不利益な取り扱いをされない旨の記載

 パワハラ事例は労災認定に同様な事例があり労災認定されることが多く、特に労災が認められた自殺した労働者の遺族は、さらに会社に損害賠償を求めることがあります。損害賠償は、労災認定がOKであるという前提に立てば、業務上の因果関係は認めらたものとして、後は、安全配慮義務をしていたかだけが問われることになりますので、損害賠償は認められやすくなります。
 この安全配慮義務を果たしていたかは、パワハラ防止法の雇用管理措置を行っていなければならないことは言うまでもありません。
 すなわち、雇用管理措置は、損害賠償責任を果たしていたかの重要な要素になりますので放っておくことはできず、ちゃんと規定を整備した上でちゃんとした運用を図りましょう。

 令和4年4月1日からは、前述のように、パワハラ防止措置は中小企業にも義務化されます。それであれば、パワハラが起きれば、労災認定は労災保険がありそこから支払ってもらえますが、損害賠償になると会社の負担が直接重くのしかかります。その前に、パワハラ防止措置に係る「就業規則」や「服務規程」の整備をしておくことをお勧めします。
 
 なお、社会保険労務士は、パワハラだけでなくセクハラ・マタハラ等の広く危機管理の面から、相談・指導していますので、近くの現役の社労士(私は「元」社労士です。)さんにお声をおかけください。 
 
 
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