元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

副業・兼業禁止は労務提供不全や企業秘密の漏洩等の例外的な場合のみ許される!!

2021-05-30 09:24:28 | 社会保険労務士
 就業規則にうたうも業務遂行の支障や会社の職場秩序の影響しない場合のみ制限される

 従来は就業規則に何となく副業・兼業は禁止されていたので、副業等はダメなんだと当たり前のこととして受け取られていたように思う。それが政府の経済対策の一環として、副業・兼業の推進が言われるようになり、基本的には副業等は労働基準法上は禁止されていないということが認識されるようになったようだ。

 労働基準法では、副業・兼業の禁止はうたわれていません。労働者としては、労働時間以外は、会社からは基本的には全く自由利用です。そこで、会社が就業を禁止・制限することは、合理的な説明ができる例外的な場合に限られることになります。

 最近争われたマンナ運輸事件(京都地裁H24.7.13)では、他の解雇の有効・無効が争われた事件と違い、現職の労働者がアルバイトの許可申請を会社に申請したところ、不許可になった事件で、従来の総括的な結論が出たものと考えられます。これでは、「労働者は、勤務時間以外の時間については、事業場の外で自由に利用することができる」として、例外的に兼業が禁止されるのは① 労働者の使用者に対する労務の提供が不能又は不完全になるような事態が生じたり、② 使用者の企業機密が漏洩するなど経営秩序が漏洩するなど経営秩序を乱す事態もありうるから、このような場合においてのみ、例外的に就業規則をもって兼業を禁止することが許される」とされています。

 また、東京都私立大学教授事件(東京地裁H20.12.5)では、副業を夜間・休日に行い本業の支障は認められないにかかわらず、解雇無効としたものについて、形式的には禁止条項に違反するものであっても、「③職場秩序に影響せず、かつ、使用者に対する労務提供に格別の支障が生じない(もの)」として、実質的に就業規則に違反しないとした。
 十和田運輸事件(東京地裁H13.6.5)では、年1,2回の貨物運送のアルバイトをしたことを理由とした解雇に関して、「職務専念義務違反(労務提供の支障が出ることに関係するもの)や③信頼関係を破壊した」ということはできないとされ解雇無効とされた。
 協立物産事件(東京地裁H11.5.28)では、労働者は使用者との雇用契約上の信義則により「使用者の正当な利益を不当に侵害されてはならない」という付随的な義務を負うとされ、労働者本人の「④在職中の競業会社設立は、労働契約上の競業禁止義務に違反」するとされたものである。

 結局、裁判例では、具体的には①②③④にような例が挙げられるのであるが、その合理的な判断を総論的に述べると、会社の業務遂行に支障が出ていなくて、会社の職場秩序に影響しないのであれば、副業・兼業制限禁止規定には実質的には違反していないとするものであるように見られます。

 なお、厚生労働省が作成しているモデル就業規則は、次のようになっています。3項の副業・兼業の禁止・制限規定では、上記の裁判例の①②③④に相当するものとなっていますので、このモデル就業規則では、考えられる合理的な具体例を挙げていることになると考えられます。
  (副業・兼業)
 第68条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
  2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれ
かに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。
   ① 労務提供上の支障がある場合
   ② 企業秘密が漏洩する場合
   ③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
   ④ 競業により、企業の利益を害する場合

 
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