能力を褒めるのか、努力を誉めるのか⇒OJTでは「成績ではなくプロセスを褒める」が常識になっているが・・・
現場研修の方法としてOJTがあるが、よく言われているのが「褒めて伸ばす」というのがある。しかし、どう誉めたらいいのか、具体的には分からないという方が多いのではないだろうか。というのも、実際には、OJTの現場において、どんな言葉を発したらいいのだろうとなり、どう誉めたらいいのかが難しいからだ。
小学5年生の生徒を対象に行った実験結果として、スタンフォード大学のドゥエック博士の有名な研究があるようだ。(*1) 能力を褒めたグループとして、「君は偉い」「いい成績を取った」といって褒めた生徒たちと、努力を誉めたグループとして「頑張った」「一生懸命やったね」と言って具体的に誉めた生徒たちを調査した結果、これら2つのの行動の変化に大きな違いが現れたというのだ。この2つのグループに対して、まず、2つのテストを提示して、一方は「簡単な問題です」といい、片方は「難しいけど頑張って解けば勉強になる」と言ったのちに、このテストのどちらかを選ばせたところ、能力を褒められた生徒たちは、7割近くを簡単な問題を選んだ。一方努力を誉められたグループの9割以上は、難しい問題を選んだという。能力を褒められた生徒たちは、難問を選択し間違いをするよりも自分を賢くみせる傾向にあるから、難しい問題を選ばなかったというのだ。
次に、この2つのグループに、これらの問題を2者選択式ではなく、強制的に難しい問題を行わせたところ、努力を誉めらたグループは熱心に挑戦しつづけましたが、能力を褒められたグループは解答をあきらめてしまう傾向にあり、結果、努力を誉められた生徒たちは20%以上点数が伸び、能力を褒められた生徒たちは成績が低下したということです。
さらに、能力を褒められた生徒たちは、自分の成績を他の下の成績者と比較し、また自分の成績を実際の成績より高いものとして他人に伝え、虚勢を張って、自尊心を維持する傾向があったということです。
この論文の発表を経て、「成績ではなくプロセスを褒める」ということが常識的になっています。しかし、ドゥエック博士は、「無駄な努力については修正しなければならない」というように、どんな努力でも効果があるわけではなく、間違った方法の努力は無駄になるからです。
結局、誉めて伸ばすというのは、プロセスの努力を誉めるのが基本であろう。しかし、その前に、上司としては、その人の具体的な能力の強みと弱みをよく知ってから、その強みを生かす方法での指導を常に行いその人に認識させながら(この部分で、常日頃では、具体的な能力の強みを「褒める」ことになるのであるが・・・)、その上で、プロセスを褒めていくのが一番よい方法と考えるがどうでしょうか。
*1 2019.6.28週刊朝日「パテカトルの万能薬」 東京大学薬学部教授 池谷祐二 実験の内容はこの記事の要約したもの(要約責任は自分にあります。)
現場研修の方法としてOJTがあるが、よく言われているのが「褒めて伸ばす」というのがある。しかし、どう誉めたらいいのか、具体的には分からないという方が多いのではないだろうか。というのも、実際には、OJTの現場において、どんな言葉を発したらいいのだろうとなり、どう誉めたらいいのかが難しいからだ。
小学5年生の生徒を対象に行った実験結果として、スタンフォード大学のドゥエック博士の有名な研究があるようだ。(*1) 能力を褒めたグループとして、「君は偉い」「いい成績を取った」といって褒めた生徒たちと、努力を誉めたグループとして「頑張った」「一生懸命やったね」と言って具体的に誉めた生徒たちを調査した結果、これら2つのの行動の変化に大きな違いが現れたというのだ。この2つのグループに対して、まず、2つのテストを提示して、一方は「簡単な問題です」といい、片方は「難しいけど頑張って解けば勉強になる」と言ったのちに、このテストのどちらかを選ばせたところ、能力を褒められた生徒たちは、7割近くを簡単な問題を選んだ。一方努力を誉められたグループの9割以上は、難しい問題を選んだという。能力を褒められた生徒たちは、難問を選択し間違いをするよりも自分を賢くみせる傾向にあるから、難しい問題を選ばなかったというのだ。
次に、この2つのグループに、これらの問題を2者選択式ではなく、強制的に難しい問題を行わせたところ、努力を誉めらたグループは熱心に挑戦しつづけましたが、能力を褒められたグループは解答をあきらめてしまう傾向にあり、結果、努力を誉められた生徒たちは20%以上点数が伸び、能力を褒められた生徒たちは成績が低下したということです。
さらに、能力を褒められた生徒たちは、自分の成績を他の下の成績者と比較し、また自分の成績を実際の成績より高いものとして他人に伝え、虚勢を張って、自尊心を維持する傾向があったということです。
この論文の発表を経て、「成績ではなくプロセスを褒める」ということが常識的になっています。しかし、ドゥエック博士は、「無駄な努力については修正しなければならない」というように、どんな努力でも効果があるわけではなく、間違った方法の努力は無駄になるからです。
結局、誉めて伸ばすというのは、プロセスの努力を誉めるのが基本であろう。しかし、その前に、上司としては、その人の具体的な能力の強みと弱みをよく知ってから、その強みを生かす方法での指導を常に行いその人に認識させながら(この部分で、常日頃では、具体的な能力の強みを「褒める」ことになるのであるが・・・)、その上で、プロセスを褒めていくのが一番よい方法と考えるがどうでしょうか。
*1 2019.6.28週刊朝日「パテカトルの万能薬」 東京大学薬学部教授 池谷祐二 実験の内容はこの記事の要約したもの(要約責任は自分にあります。)