元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

医療行為の同意は、家族は可能か。

2013-08-23 03:43:16 | 社会保険労務士
 医療行為の同意は、一身専属的!!(その人だけが持つ権利、他人が取得、行使できないもの)

 
 病気やケガの場合、病院で治療をしてもらいますが、簡単な治療であれば、もともと病院に行ってお医者さんにかかる際には、「直してほしい(患者)、今の治療方法でできることはやりましょう(医師)」といった医療契約を結んだものとされ、その医療診療契約の中に、その治療についての同意もしたと考えられていますので、特にその治療への患者の同意は必要ないと言われています。
 しかし、手術ともなれば、患者の痛みを伴うものであり、そういうわけにはいきません。

 
 刑法204条 人の身体を侵害したものは、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
 民法709条 故意または過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害したものは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 
 上の法律のように、医師といえども、本人の意思を無視して、手術をすることは、傷害罪、損害賠償責任を生じることになりますが、本人の同意があればその違法性がなくなるため、医師としては手術等の同意を求めることが必要になるのです。

 一方、患者の側からいうならば、具体的な医療に対する同意権を有していることになるのですが、これは、一身専属的なその患者でないとできないものといわれています。

 そのため、成人の場合であれば(子の親権を持つ親の場合を除く)、代理権を持つものであっても、その代理権で、その同意をすることはできないのです。

 しかし、医療現場では、成人患者が同意能力を喪失した場合には、一般的に家族から同意を得る方法が行われているところですが、「医療の同意」が違法性をなくすための同意であって、同意を得ることによって、この医療行為には「社会的相当性」があるものになるからであるとされています。すなわち、*1「本人の意思を推測しかつ本人の最善の利益を図り得る家族に説明してその同意を得るならば、社会的相当性ということから違法性がなくなる場合があることが肯定されてよい」としています。しかしながら*2「もとより本人と交流のない遠い親族が同意したからとしても、社会的正当性の評価が得られることはありえない」としている。

 いずれにしても、医療の同意の代行は、理論構成され、法的に定められたものではなく、「違法性阻却」(傷害罪、損害賠償を生じないために、その違法行為を排除すること)のため、医療現場で運用されているものであるといえるのであって、家族の範囲等の法の整備が待たれるものである。特に、今、焦点になっている成人後見人の制度のあっても、通説では、単なる代理権を持つものであって、未成年後見人に認められるような医療の同意権はないとされていますので、第三者が成人後見人を行う場合には、現実に求められる「胃ろう手術」や「経管栄養」等の同意にどう対処するか、現実には処理できないところであって、早めの法整備が待たれるところであります。

 *1.2. 日本弁護士連合会(平成23年12月15日づけ)医療同意能力がない者の医療同意代行に関する法律大綱
 参考:・上記の日本弁護士会の法律大綱、・社労士のための成年後見制度実務(日本法令、埼玉県社労士会成年後見等部会著)
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