コタツ評論

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朝鮮日報案内

2014-06-20 21:52:00 | 政治
コタツ評論はじつは韓流推しでして、その筆頭は天才少女民謡歌手のソン・ソヒ嬢なのですが、その次はパク・ユハ(朴裕河)さんであります。

以前に、パク・ユハさんの新著『帝国の慰安婦』が韓国で出版されたことを紹介しました。メディアの評価はおおむね好意的でしたが、残念なことに、やはり慰安婦側(というより、挺対協)から、提訴されました。

元慰安婦ら、『帝国の慰安婦』著者を告訴
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/06/17/2014061701009.html

元慰安婦ら 韓国人教授著書の出版差し止め求め提訴へ
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/06/15/2014061500858.html

提訴を報じる朝鮮日報の記事は、「提訴された」という事実中心の客観的といえるものですが、次の記事は、はっきりと『帝国の慰安婦』を擁護したので驚きました。慰安婦問題について、これほど「客観的」な記事を朝鮮日報ではじめて読みました。「政治的な公正」を排した記者の主観的な記事をはじめて読みました。

朝鮮日報記者に質問:『帝国の慰安婦』の内容に一理あるのか
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/06/19/2014061901778.html

「今必要なのは、彼女たちを『正しい朝鮮人闘士』に仕立て上げることで『国家の品格』を高めることではなく、彼女たちを単なる『一人の個人』に戻してやることだ。中国やオランダのように敵国の女性が『完璧な被害』を受けたという記憶を借りてきて、それによって覆い隠し、朝鮮女性による『協力』の記憶を無きものとし、少女像を作り上げて彼女たちを『民族の娘』に祭り上げる行為は、家父長制と国家の犠牲者だった『慰安婦』をいま一度国家のために犠牲にする行為にすぎない」

と、短いコラムなのに、「朝鮮人慰安婦」を再定義した長い引用を厭わず、以下では、「慰安婦問題」の所在を簡潔に適切にまとめています。

さらに「慰安婦問題を再構成するわれわれの記憶は決して正確なものではなく、互いに異なった記憶の間には闘争が存在する」とした上で、われわれが持つ記憶が不完全であることを指摘しています。つまり朴教授の主張は「韓国人が持っている慰安婦のイメージは、慰安婦たちの『記憶と経験』の片方の側面にすぎない」「そのような形の『慰安婦』そのものに対する不十分な理解と、日本による『謝罪と補償』をめぐる『誤解』、そして現実の政治と絡み合い、またそれ(政治)に利用されていることが、20年以上にわたり慰安婦問題が解決しない最も大きな理由だ」との見解も示しています。

と、ここまでなら、記者の有能と見事なまとめに帰するのですが、そこまで書いて大丈夫かというところまで行き、慰安婦のおばあさんたちへぎりぎりの気配りに帰ってきます。

朴教授は上記のような自らの考えを表明することで、日本軍慰安婦被害者につらい思いをさせたようです。記事にも書きましたが、同書の110ページには「日本軍による性暴力には単発の強姦(ごうかん)、拉致した上での性暴力、管理売春の3種類が存在していた。(中略)朝鮮人慰安婦のほとんどはこの3番目のケースが中心だった」と記載されています。このような記述を実際に日本軍によって拉致され、被害を受けた女性たちが見れば、非常に気分を害すると思います。

最後の行は、存命の54人のおばあさんだけに向けて書いています。パク・ユハさんが、「彼女たちを『一人の個人』に戻したい」と主張していることを踏まえて、「ハルモニ」たちの心中を思いやっています。それ自体がきわめて侮辱的な差別語ともいえる、「性奴隷」という呼称を使う余地をまったく残していません。

「朝鮮人慰安婦のほとんどは、管理売春だった」という文言が一人歩きすることを覚悟の上で、「ハルモニ」たちの「つらい思い」を引き受けようとしています。それは、「朴裕河とは、どのような人物なのか?」という読者の質問に、「答えない」ことでもうかがえるものです。パク・ユハさんが提起した「慰安婦問題」の所在について、自らが問題の一部であること、それは読者を含む「我々」の一部でもあるからでしょう。

いま、朝鮮日報をはじめ、韓国のメディアでは、新首相候補の「親日」が問題になっています。セウォル号沈没の責任をとって辞任した首相に代わり、パク・クネ大統領から新首相候補に指名された、ムン・チャングク(文昌克)元中央日報主筆の言動を連日報道しています。新首相候補がかつて書いた「親日記事」や「慰安婦」をめぐる発言が、「首相になる資格がない」と国民から批判され、その去就が注目されているのです。

朴大統領側近の与党重鎮 首相候補に指名辞退促す
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/06/20/2014062001896.html

そのさなかというだけでなく、安倍内閣の河野談話検証の結果発表を明日に控えた6月19日に、オム・ボウン記者は、読者の疑問への回答という形、つまり、社論とみなされることを承知の上で、客観的で良心的な記事を書きました。中立的な耳障りがよい記事を書きませんでした。主観的な人を傷つけるかもしれない記事を書きました。そして、20日を迎え、日本の大久保は次から次へシュートをミスしました。

韓国政府「日本の河野談話検証強行に遺憾」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140620-00000043-yonh-kr

Midnight In Moscow - Kenny Ball

(敬称略)