コタツ評論

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世界はなぜ地獄になるのか

2023-10-27 12:15:48 | 新刊本

『世界はなぜ地獄になるのか』(橘玲 小学館新書)

売れているというので買ってみた。

「Pert1 小山田圭吾炎上事件」

東京五輪開会式の作曲担当だったミュージシャンの小山田圭吾が、過去に雑誌企画「日本いじめ紀行」のなかで、高校時代のイジメ経験を語っており、それが問題とされて東京五輪から降板させられた事件を検証している。

高校時代とはいえ、酷いイジメをしたのを雑誌で自慢げに得々と語っていたと新聞記事で読んだ記憶しかなかったが、詳細を知ってみると、報道による印象とはずいぶん違ってくる。

橘は当事者や関係者に直接に取材することなく(取材拒否されたからだが)、当時の雑誌記事やその企画意図、問題となって取材を受けた編集者の証言など、資料やWeb記事から丹念にたどり考察していく、アームチェア・ディテクティブ・ルポといえる。

読後、小山田圭吾って、ごく普通の高校生だったんだな、と思った。どこにでもいる、私や誰それであってもかまわない、ごくありふれた。考えてみればそれも当然で、そんなにびっくりするほどの高校生がいるはずがない。

もちろん、マスコミはそんなことは書かなかった。東大卒のシンガーソングライターとして話題となった小沢健二とは中学時代から同級で、二入でバンドを組んでから、その先鋭的な音楽センスが注目され、才能あふれる音楽家として東京五輪開会式の作曲を任されるまでに「勝ち組」になった、55歳ミュージシャンのイジメ・スキャンダルとしてフレームアップしようとした。その信じられない裏の素顔とばかりに、不祥事続きの東京五輪にからめて。

すると、あの「オザケン」も55歳かとちょっと驚いたが、小山田も高校時代なら40年近く前のイジメである。それをおよそ30年前の90年代の雑誌で語っている内容が問題となった。旧聞も旧聞なのだが、イジメをした上に、それを懺悔するどころか自慢した、というところが、現在の国民感情を刺激するとマスコミは乗ったのだろう。

橘が整理したところによると、40年前もイジメ自殺は起きていて、ときに「イジメ問題」がクローズアップされたが、30年前の90年代には、加害者を談話インタビューする雑誌企画が成立するほど、メディアにおいてイジメ問題は一般化して、それだけインパクトが逓減していたと読める。

今回のマスコミ報道も、イジメたという悪事を雑誌で自慢げに語っていたという点が強調され、いわば「ポリコレ」事件として浮上したといえる。だが、問題となった雑誌のインタビューの小山田は、けっして自慢話や武勇伝として語ってはいない。かといって、懺悔調では全然ない。

イジメをした同級生について、その原因となった彼の「奇行」に当初はびっくりしたが、やがて、「気になる存在」となり、「ファンになった」と小山田は話している。イジメの内容も報道されたほど悪質なものではなく、実行者ではなく傍観者であったり、もっと幼い頃の見聞だったりしたものを、切り取り繋げて「衝撃的」な記事にしている。ただし、ときに、もっとも悪質とされてもしかたがない、イジメの「発案者」だったことも小山田は認めている。

そこからは、他人や状況に流され、流れていく、とりたててワルでもなければ嘘つきでもない、他方、その罪の意識と後悔は沈殿しているという、ごくありふれた内面が想像できる。と同時に、何が自分をそうさせたかを知ろうとする小山田の探求心もうかがえる。

スキャンダルが発覚した場合、マスコミは実際以上に悪く書くことが多いが、ときに実際以上に良く書く場合がある。橘の論考はもちろんそんな扇動や忖度には距離を置き、といって中間的な微温的な立場にも立たず、小山田の内省を踏まえながら、社会文化のなかで等身大という捉え直しを試みている。

それはマスコミが煽情的に描き出す「ありえない姿」ではなく、国民感情が期待する「ありのままの姿」の予定調和のどちらでもない、いわば「ありふれた姿」に本質というより、実質を見出そうとしている、という風にも思える。

橘と同じ資料を読み込んだはずの新聞雑誌記者のほとんどが、「誤報」に近いステロタイプな叩き方をした。なかには、小沢健二や小山田圭吾は、メディア人種や音楽界のクリエイター周辺から、特権階級的に遇される、いわば「上級国民」だったから、過去のイジメは無視されてきたのだとする記事さえあった。

金や地位だけでなく、才能という「文化資産」を受け継いだ「上級国民」という観点を音楽界に当てはめたのはおもしろい。しかし、当の小山田は言わずに済んだ、自らの高校時代のイジメを率直に告白し、イジメた同級生(障碍者)との対談までさせようとする企画にあえて乗ったのだ(被害者との対談は断られたが)。

イジメた側は忘れてもイジメられた側はずっと忘れることはないとよくいわれるが、イジメから10年以上も経てなお、小山田はイジメた同級生について、どのようなイジメの場面があったのか、よく覚えていて、どうして起きたのかについても考えていた。

反省や後悔、弁明や謝罪という以上に、イジメ当事者であることを引き受け考え続けてきたことが、小山田の発言からうかがえる(イジメ側が何を思い考えていたかを尋ねるのが、この「日本いじめ紀行」の企画意図だからでもあるが)。やはり、小山田もどうしてイジメをしてしまったのか、なぜそれは起きたのか、イジメた同級生と再会することになっても、知りたかったのだろう。

被害者はもちろんだが、加害者もまた、「なぜ起きたのか」を知りたいのだ。

涙ながらに土下座しろ、社会的制裁を受けろ、イジメられた者の苦しみを少しでも味わえ、という「キャンセルカルチャー」の復讐心の解消からほど遠い、この「日本いじめ紀行」の前向きな企画に感心した(小山田を第1回として、その後は誰も引き受けてくれなかったそうだが)。

誤解を畏れずにいえば、障碍者をイジメた小山田とイジメられた同級生について、その後もずっと考え続けてきた10年後の小山田の屈折した「友情」に、私は好印象を持った。そんな「友情」はあり得ない、自己合理化に過ぎないと直ちに切り捨てる「キャンセルカルチャー」に、与することはできないと思った。

「炎上」に見舞われた55歳の小山田は、いったい何を考えているのだろう。イジメた同級生に出した年賀状の返信のハガキを、いまも大事に持っているのではないか。

橘も少し突っ込んでいるが、障碍児や不登校児などを積極的に受け入れてきた、リベラルな校風で知られる和光学園で、そうしたイジメが蔓延していたことも、興味深い。

(止め)

 


目からウロコ

2021-12-09 00:27:00 | 新刊本
衆院議員が新潟裏金騒動の泉田氏と星野氏の関係性を解説
https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/news/3840560/

「例の件について問題は何故二人が喧嘩したかではなくむしろ、何故知事時代は蜜月でいられたかでしょう」(米山隆一)

例の件とは、先の衆院選の比例復活で再選された自民党の泉田議員が選挙期間以前に、新潟県政のボスである星野県議から、「当選するには、2〜3000万円の裏金が必要」と要求されたとツイッターで暴露したことから始まった、「喧嘩」のことです。

前新潟県知事である泉田議員と県連のボスとして知られる星野県議、この二人についてよく知るはずのやはり元県知事で先の衆院選で当選したばかりの米山議員が解説しています。

そういう場合、たいてい二人の業績や人柄、エピソードなどを通じて語るものですが、米山議員は新潟県政の構造に踏み込んで解き明かします。

韓国映画の名作「オールドボーイ」のセリフを思い出します。

「なぜ、15年も監禁されたのかよりも、なぜ突然解放されたのかを考えてみるべきだ」

米山議員は医師でもあり、作家の室井佑月さんと結婚して話題にもなりました。もしかしたら、この映画を観ていたので思いついたのかもしれません。

新潟の自民党政治について、政治家10人に話を聞いて回ったとしても、その構造について話してくれる人は一人いるかいないかでしょう。その生態系に及ぶところまで話してくれる人なら、100人に一人でしょう。米山議員の解説は生態系をもイメージさせる優れた分析です。なんと、東スポの記事です。

冨田宏治氏が喝破「大阪で維新を支持しているのは貧困層を憎悪する中堅サラリーマン層」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/298204://

先の衆院選で第3党にまで躍進した維新の謎を解き明かしていますが、同時に大阪と大阪人の現在をよく知るために役立ちます。

維新支持層の中心は30代後半から50代の中堅サラリーマン層です。第2の経済都市なので、大企業の関西支社や大阪支店が集積している。全国から転勤族も含むサラリーマンが集まり、相当な数になる。都構想をめぐる15年の住民投票で、ガチの支持層を実感しました。-

周囲はタワーマンションだらけ。ラフな格好ながらどう見ても中堅サラリーマン風の男性が三歩下がって歩く奥さん連れで三々五々やって来て、維新の運動員に次々に合図を送って投票所に吸い込まれていく。一日中こんな光景を見続けたんです。愕然としましたね。/articles/view

/要するに、彼らは転勤族なんです。専業主婦の奥さんや子どもとタワマンで暮らすような勝ち組。維新の主張は絵に描いたような新自由主義改革なのだから、彼らが支持していると考えた方が分かりやすい。それこそ、目からうろこでした。

自民党、立憲民主党、共産党が減らした計30議席をそっくり取った形なので、維新独り勝ちに映る。投票率上昇分の票が自民党に行かず、野党共闘にも向かわず、維新に途中下車したようには見えますね。

地方議員に支えられた圧倒的な組織力です。大阪府下の府会議員、大阪市議、堺市議、市町村議員は239人。対する立憲は20人、連合大阪推薦まで広げても68人。地方議会に強い共産党は142人です。

この記事は触れていませんが、大阪に赴任する転勤族ははたして「勝ち組」なのか、という疑問が浮かびます。大阪の経済的地位が沈下し、経済規模では横浜より下であることを考えれば、タワマンに住むエリートと言えるかどうか。

ほんとうのエリートは「大阪なんか」に赴任しない、じつは二番手三番手ではないかと考えてみると、彼らコアな維新支持層である新自由主義者の陰影が窺える気がします。ゲンダイ記事です。

(止め)

16歳の君へ

2019-06-06 22:20:00 | 新刊本
かねてから話題のベストセラー。16歳が読んでベストセラーになっているとは思えないが、16歳にはほんとうに読んでほしい。オッサンやオバサン、ジジイやババアが読んでもどうにもならない。どうにかなるくらいなら、いまのような、「ニホン」と留保しなければならない奇怪な国にはなっていない。だから、俺も読んでいない。読んでいないが、目次を眺めただけでだいたい内容がわかるし、ほとんどその通りだと思う。



ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ!16歳から始める生き残るための社会学―

続・ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ!16歳から始める思考者になるための社会学―


君たちが対峙する脅威とは、外国資本の傀儡と化した自国政府であり、生存権すら無効とする壮絶な搾取であり、永劫に収束することのない原発事故であり、正常な思考を奪う報道機関であり、人間性の一切を破壊する学校教育であり、貿易協定に偽装した植民地主義であり、戦争国家のもたらす全体主義である」(本書「まえがき」より)

全目次

第1章 これから君たちは政府が消滅した時代を生きる
1  主権が無くなったことに誰も気付いていない
2  自国のことを自国で決めてはならないというルール
3  国民の議会が廃止され外国の企業が政府になる
4  離脱も撤回も永久に許されない協定に署名した
5  政治家もTPPの内容を知らない
6  代表する権利の無い者が勝手に協定を結んだ
7  国民を守る機能としての政府はもう無い
8  相手国を破滅させる貿易を何と言うか
9  津波や地震よりもグローバルな資本が脅威である世紀
10  主権を明け渡して繁栄できるわけがない
11  ニホンは植民地主義に呑み込まれた
12  TPPに不参加のアメリカがTPPを通じてニホンを支配する仕組み
13  ニホンという地域は残るが日本という国家は消える 
14  メキシコの国境フェンスが暗示するニホンの未来
15  新聞テレビが外国企業の手先となり侵略の実態を隠した
16  やがて投資家の訴訟がニホンのおカネを奪い尽くす
17  どれほど酷いことになるかは隣の国を見れば分かる
18  国を売ることが一番儲かる時代
19  経済特区は現代の租界
20  世界で最も愚かな国であることの証明
21  『家畜人ヤプー』さながらの人々
22  移民社会は低賃金社会である
23  失業者で溢れ返る国が100万人の移民を呼ぶ狂気
24  国産の奴隷よりも安く使える外国産の奴隷が欲しい
25  移民の数だけ雇用が消える
26  かつてない「就業の大競争時代」の到来
27  この貧困のスパイラルから永久に逃れられない
28  下層に転落した人々の運命
29  イギリス国民は移民に悲鳴を上げEU離脱を求めた
30  移民国家は犯罪国家になる
31  なぜ貴重な雇用を国民ではなく移民に与えるのか
32  天文学的な移民コストは国民の負担となる
33  要するに外資の配当のための移民政策であるということ
34  少子化を仕掛け労働者不足を訴える
35  移民を呼ぶためにわざと出生率を引き下げた
36  グローバル資本が描いたニホン人削減計画
37  国民が移民に入れ替わってもニホンと言えるのか
38  野党もグルになって移民を推進した
39  安価な外国人を輸入するため国会で用いられた詭弁
40  ギャンブル依存症者が世界一多い国でカジノを作る
41  外国の食い物にされる国は何と呼ばれるか
42  植民地主義は生活領域にまで広がる
43  「水による支配」は未来永劫続く
44  縁故主義者が生命の水を外国に売り飛ばした
45  水道の民営化によって政治家が手にする報酬の額
46  社会資本を私物化した挙句に生きる権利を粉砕する
47  重大な問題が伝えられないのではなく、重大な問題だからこそ伝えられない
48  東欧の女性と同じ悲劇がニホンの女性を襲う
49  地球的な経済暴力が弱者を翻弄する時
50  「生きづらさ」は海を超えてやって来た
51  白昼堂々と売春婦の募集車が行き交う

第2章 「政治が存在しないこと」について語ろう
52  国会は国会議員が法律を作っていると錯覚させるための「劇場」である
53  与野党の対立はシナリオに基づく
54  重要な事は絶対に国会で取り上げられない
55  政治家が政治をやっているのではないから、政権が交代したところで何も変わらない
56  避難者の支援打ち切りが与党と野党の談合を浮彫りにした
57  本質を読み解くため極論から出発すること
58  被選挙権のない者たちが法律を作っている
59  それでも政治家が政治をやっていると思っているなら頭がどうかしている
60  「威嚇の装置」として置かれている在日米軍
61  外国の軍隊が駐留して政治を決める
62  公式には認められないが非公式の事実であること
63  アメリカの政界にばら撒かれたおカネがニホンの法律を決定する仕組み
64  経済が失敗すると国民は貧しくなるが投資家は栄える
65  人間のクズたちに支配される社会
66  有権者は肉屋を支持する豚に等しい
67  響きは美しいが中身は空っぽの言葉がある
68  宗教と政治が癒着し地獄のような社会を作った
69  政府が国民に仕掛けるテロリズム
70  選挙の開票結果は最初から決まっているのか
71  外資からおカネを貰い外資のための法律を作る
72  法律を商品として取引する市場がある
73  政治家の人柄ではなく政治家の金脈から考えること
74  歴史は政治家が金融家の下僕であることを語る
75  国民を安売りすることで成り立つ経済
76  外資をボロ儲けさせるために計画倒産する国
77  消費税が投資家の配当に化ける仕組み
78  国民からマネーを搾り取る装置としての消費税
79  考えないことを伝統とする社会
80  生きるという行為そのものに課税する
81  福祉の解体が国策であること
82  「世帯の貧困」を「子どもの貧困」という言葉で誤魔化す
83  政治が失敗したからではなく、政治が成功したから貧困が蔓延した
84  これほど豊かな国がこれほど貧しい理由
85  国民の老後のおカネを戦争産業に貢ぐ最低の国になった
86  日米関係とは主人と奴隷の関係だと考えればいい
87  500年にわたる文明の蹂躙の果てに
88  本当の権力は常に透明である
89  ニホンの財政が悪化するほど外資の利益は増える
90  人類史上最も搾取される社会

第3章 原発事故は終わっていない
91  ニホン人の民度を超えた問題であること
92  悲観か楽観かではなく、何が事実かを考える
93  事故の処理にかかる費用の一切が国民の負担となる
94  怒りで頭の中が真っ白になること
95  自分の利益のために他者の人生を奪う
96  2+2=5的な思考の強制
97  矛盾を受容させ思考力を破壊する
98  東京ドームが衆愚ドームになった日
99  ド級の原子力災害の最中にオリンピックを開催する
100  国連の人権委員に「風評被害」と言えるのか
101  検閲と宣伝によって成り立つ政府
102  学者もエコノミストも現実を理解していない
103  沈黙する君も悪の共犯である
104  国民を虐待する政府の登場
105  道徳と法律が同時に崩壊した
106  無抵抗であるほど残虐度は増す
107  最悪の時代に最悪の事故が起きたという意味
108  文学者も哲学者もこれほど危険な社会を想像できなかった
109  だから国民は永久に抵抗しない
110  戦時社会と酷似した同調圧力の下で
111  チェルノブイリより酷い汚染地帯に子どもたちを住まわせるな
112  この軽薄の群れを人間の集合と言えるのかよく考えて欲しい
113  卑劣な人々によって災禍は果てしなく広がる
114  冷静でいられるのは理性的だからではなく理解力に欠けているからだ
115  それでも楽しく歌い踊れる人々
116  正常な思考を麻痺させるもの
117  報道の自由度は原発事故によって先進国中最悪になった
118  世界から軽蔑されるきっかけとなった出来事
119  新聞を信じる者は生き残れない
120  ニホンが世界の核処理場になると狂喜する新聞社
121  地球上で最も汚染された国の末路として
122  自由貿易の枠組みで原発事故を捉えると恐ろしい現実が見える
123  経済の破滅に気付かない経済人たち
124  言語の壊乱が社会の錯乱を表す
125  自分は何も知らないと自覚すること
126  その場限りのデマカセが公式の話法になった
127  この国の人権はあくまで「目安」であって、法律によって保障されたものではない
128  「絆」は家畜を縛る道具の意味なのだが
129  迷信と疑似科学で纏められる国民
130  原子炉の爆発とともに巨大なカルト国家が出現した
131  進化ではなく退化を目指す文明
132  悪は裁かれるという妄想を捨てること
133  なぜ子どもたちを守ろうとしないのか
134  これはやがて国際問題に発展するが幼稚な詭弁は通用しない
135  存在の基盤が液状化する現代
136  国家の消滅は人類社会のありふれた事件なのだ
137  私たちの文明はオブラートのように溶解的な基層の上に立つ
138  人間の生命が羽毛のように軽い時代になった

第4章 メディアという意識の牢獄から抜け出す
139  巨大な不況が戦後最長の好況に偽装された
140  報道が認識を歪め事実を不明にする
141  現実は在るのではなく作られるということ
142  メディアが提供する虚構の共有によって社会は成立する
143  国民は無知に沈められる
144  問題はどのようにすり替えられているか
145  とろい人々を標本にして政府が望む世論をデッチ上げる
146  対日支配の道具としてのテレビ
147  大衆とは情報に操作される群れを意味する
148  ニホン人を「下等人種」にするためのプログラム
149  身体ではなく精神を破壊する戦争
150  見てきたものは領土ではなく地図に過ぎない
151  テレビに気を取られている隙に国を乗っ取られた
152  派手なスキャンダル報道の裏で危険な法案がひっそりと決まる
153  マスコミと政治家が酒を飲みながらニュースの内容を決定する国
154  自民党に献金する日本新聞協会
155  知的レベルが低い者ほど新聞を信用する
156  思考しない脳の餌となるもの
157  レベルの低い文化の泡からレベルの低い国民が生まれた
158  「文化一般は死の文化である」という言葉の意味
159  世界観はマスコミによって作られた擬制である
160  新聞テレビを神と崇めるのか
161  この国では50歳の大人の政治知識が15歳の子どもと大差無い
162  マスメディアを所有する者たち
163  内閣官房機密費に飼われる卑しいジャーナリストの群れ
164  世界の投資マネーで潤う北朝鮮がニホンを攻撃する理由などない
165  「騙されやすい軽信の時代」を象徴する北朝鮮問題
166  1億人がポスト真実に惑わされている
167  「民は愚に保て!」という号令が聞こえないか
168  全てが見えているようで何も見えていない
169  ある年齢を過ぎて事実を知ると発狂する

第5章 生き残るために世界の仕組みを知ること
170  ニホンの主義を誰も知らない
171  国家は国民のためではなく資本のためにある
172  何重にも巻き付けられた支配の鎖
173  戦争をやっている国よりも人が殺されている
174  人間の本性は危機で露わになる
175  グローバルな戦争経済の中で全てが繋がった
176  バラバラに見えるものが一つの恐ろしい構造を示す
177  金融と軍事の連合に支配される「自由の国」
178  大統領も末端の使い走り程度の者に過ぎない
179  政治家は選出母体の代理人であるという原則 
180  資本は議会に命令する
181  だから戦争は永久に無くならない
182  憎悪と対立を煽れば支配が容易になるという論理
183  暴力の思想が戦時から今に繋がる
184  気付いた時には戦争前夜
185  自由から逃走する時代の再来
186  ニホンのナチ化が東京から始まった
187  戦争を経済の中心に据える構想
188  やがて非国民という言葉が日常語になる
189  右翼も左翼も形式的に存在するだけで機能は無い
190  愛国者ほど国を批判し、売国奴ほど国を賛美する
191  支配を正統化するための神話とフィクション
192  馬鹿が多くなると社会は右翼化する
193  こうすれば憲法は簡単に改正できる
194  派遣の兵隊になって死んだところで何の補償もない
195  監視と検閲と弾圧の未来
196  権力に付け込まれている内に思考力を失い無反応になった
197  鋳型でモノを成型するように学校で大衆を生産する
198  非理性を振りかざす醜い大人たち
199  素直に死ぬ群れに調教する手段であったものが今も残っている
200  学校は「準軍隊」なのだから残酷なのが当たり前
201  愚か者が宗教に取り込まれ政治に利用される
202  兵器産業に投資する聖職者たち
203  宗教は普遍の支配ツールである
204  科学と疑似科学の境界を見極められるか
205  危機は砂山のように堆積している
206  迷いを深める答えが本当の答え
207  滅び行く国に生まれた若い君たちが考えなくてはならないこと
208  「大衆」として生きるか、「分衆」として生きるか
209  知識によって世界像を新しく塗り替える


(止め)

読んでみたいご本

2018-01-08 21:09:00 | 新刊本
元林務官が執念の取材で追究した、ヒグマによる史上最悪の惨殺事件の真実――2018年も気をつけたい身近な危険生物
http://bunshun.jp/articles/-/5602

もっとも怖ろしいWikipediaのひとつといわれる「三毛別羆事件」に決定版ノンフィクションが出たようだ。

北海道は何度も車旅したことがあり、「クマ出没注意」の看板はよく見かけた。冬眠中も危険、蚊取り線香が有効、などは知らなかった。

春先とはいえ、まだ雪深かった摩周湖の展望台をめざして駐車場から歩き出したところ、アッと声を上げる間もなく、胸まで雪に埋まり、小一時間脱出できなかったとき、ここでクマに見つかったらどうなるのかと怖気をふるったものだ。



小熊にかぎらず、成熊もボリショイサーカスなどで角砂糖もらって自転車に乗っているのを眺めている分には可愛い。あり得ないことだが、捨てられていたら、拾ってきそうなほどだ。

しかし、人間を見るその目には何の感情もなく、こちらを食えるかどうか測っている気がする。「クマモン」もそんな目だが、あの摩周湖で汗だくで雪をかいていたとき、どこからか何かの視線を感じたのは気のせいではなかったのかも知れない。

(止め)

全国民必読の書

2017-07-27 23:30:00 | 新刊本
「障害は個性だ」という言葉があります。「障害に甘えるな」という言葉もあります。物は言いようだなと思っていました。

障害者を美化することで励まし、あるいは一歩踏み込んで叱咤する、障害者に「寄り添う」、障害に「向き合う」言葉だとは思えませんでした。

なぜ、そう思ってしまうのか、そこから先を考えることはしませんでした。この文章を読んで、その思いはあながち間違っていなかったけれど、それ以前に私は何もわかっていなかったと胸に落ちました。

されど愛しきお妻様
http://gendai.ismedia.jp/list/series/daisukesuzuki

夫婦と家事についての物語です。もちろん、ただの夫婦ではありません。発達障害の妻と脳梗塞を患った夫が、ただ普通の、平凡な家庭を営もうとして、「寄り添えず」「向き合えなかった」時もありながら、18年を経て支え合うようになった非凡な記録です。

日々の炊事や掃除などの家事を中心に、妻の言動から気づき、障害について考え抜いて、その正体に迫ろうとする夫のルポでもあります。

障害とは、不自由とは、何かをできないとは、あるいは頑張るとは。それらを考え抜いていく知性とはどういうものか。私たちに問いかけてきます。

言うまでもなく、私たちもやがて老い、あるいは病を得て、不自由や障害と無縁ではいられません。そうした不自由や障害を克服しない克服のあり様を示唆しています。

と小難し気な言い回しになりましたが、社員研修のテキストにしたいくらい汎用性を含む内容を平明達意の文章でつづっています。くすっとする可笑しみの場面の裏側に、それまでの苦しさや哀しさが層を成していることに、夫と一緒に気づいていきます。

そして、愛しいと思うでしょう。パジャマ姿のぼさぼさ頭で微笑む「お妻様」の姿を胸に描きながら。

言葉の綾掲示板でSさんに紹介されました。私にとっても、近年、もっとも心を揺さぶられたテキストでした。ありがとうございます。

長い連載です。読む時間がなかったら、とりあえず、Sさんが勧めたように、「最後の3回分」(じつは4回分ですが)を読むだけでもじゅうぶんです。

注:障碍という表記はあえて使いませんでした。

(止め)