コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

日本には二人の偉大なイチローがいる

2009-03-31 05:52:00 | ノンジャンル


小沢一郎の嘘涙会見を見た。この人はバカのひとつ覚えのように、「政権交代」を唱え続けている。それに対し、民主党に政権担当能力はあるか、自民党とどこが違うか、元経世会の小沢こそ金権まみれ、と批判が相次いでいる。はい、おっしゃるとおりだが、メディアでこうした小沢民主党批判を繰り返す輩は、すなわち政府自民党の走狗である。彼らは、小沢の最大の論点に答えないからだ。「政権交代」はすべきなのか? すべきでないのか? 説明責任を逃げているのは夫子自身ではないか? 民主政治において、政権交代は当然のことである。戦後60年も自民党独裁が続いてきた日本においては、政権交代は絶対的といってよいほど正しい。小沢はバカのひとつ覚えであるが、バカではないどころか、もっとも賢明なことをいっている。よい年をして似合いもしない嘘泣きするまでの虚仮の一念に、感動した!(@小泉純一郎)

(敬称略)


日本WBC2連覇

2009-03-31 05:39:00 | ノンジャンル


まず歯医者を称えよ(今週の誤変換1)

原監督もイチローも、「侍ジャパン」の面々なら、5度も死闘を演じた韓国について、「強いチームだった」「すばらしい選手がいた」「優れた技術を見た」「見習うべきガッツがあった」など、賞賛の声が上がっていたはずである。あるいは、日本を苦しめ続けた「韓国野球」の実力と美点について、「侍」たちが解き明かしてくれとインタビュアーは積極的に尋ねるべきであった。洪水のように報じられたニュース報道をみる限り、韓国を讃える声が取りあげられることはほとんどなかった。

もし逆の立場だったら、決勝で韓国チームに負けていたら、韓国の監督や選手たちから、少しでも日本野球や日本人選手について褒めたコメントを引き出そうと、日本の新聞・TVは躍起となっていただろう。無様にKOされた日本人ボクサーについて、世界チャンピオンがどんなコメントを出したのか、私たちが翌日の新聞スポーツ欄をくまなく探すように、韓国の野球ファンも、「好敵手」や「辛勝」といった声を「侍ジャパン」から聴きたかったはずだ。

私の周囲では、TV観戦した誰もが口をそろえて、「感動的な一戦だった」といい、「長い間野球を観てきて、涙が出るなんてゲームははじめてだった」という感想を洩らす知人もいた。それほどの名勝負だったのなら、敗者についてももっと語られるべきだ。岩隈やダルビッシュの投球や内川や青木の打撃や守備について、詳細に論じられたと同様に、韓国チームの面々について、私たちももっと知りたかったはずだ。

日韓は孝行野球である(今週の誤変換2)

日韓とも野球の裾野は高校野球である。郷土や家族の名誉を賭け、一度負けたらそこで敗退、というトーナメント方式で闘ってきた経験が、あの決勝のような緊迫した好ゲームを生んだ。換言すれば、日韓ともアマチュア野球の根がある。それが基本に忠実な、エラーの少ない、チーム力で勝ちをつかむ、「スモールベースボール」に結びついている。

トータルで勝ち越せばよいという興業を重視したアメリカのベースボールとは、根底的に違うわけだから、単純な比較はできないが、「プロフェッショナル」が無前提にアマチュアを凌駕するという通念を覆したと考えることはできる。それはどこか、あれほど専門性を独占し、先進性を誇った、アメリカの金融工学と金融ビジネスが無惨に瓦解したことを連想させる。

もっとも、日本では、「プロフェッショナル」というとき、「プロジェクトX」に登場した「プロ」たちを想起すれば、「優れた職人技」や「無私の努力」を指す場合が多く、アメリカの金融ビジネスのように、ルールなき弱肉強食の勝者を「プロフェッショナル」と指すことはない。もちろん、アメリカのベースボールプレーヤーや監督たちも、日韓の野球選手たちと変わらぬ、かつての野球少年たちだろう。

ただ、WBCの背後に控えるアメリカのビジネスマンたちは、中国やインドなど、膨大なアジア市場を射程に入れていることだろう。中国やインドが、日韓に続いてWBCの有力メンバーになれば、たとえばそのTV中継の放映権料だけでも莫大な収入が見込めよう。それは同時に、アメリカのスポーツ文化をこれらの国々に押しつけようとする、アメリカの覇権としての「グローバリズム」の問題を起こすものだ。

真実一路(今週の誤変換3)

そこでは当然、フィデル・カストロが正しく批判したように、日本・韓国・キューバをひとつの組にして戦わせ、アメリカが決勝に進み易くするような「陰謀」がこれからも仕掛けられるだろう。にもかかわらず、日韓が決勝に勝ち進んだ。ここで大事なことは、日本が韓国に勝ちWBCを2連覇したことではなく、日韓が決勝に勝ち進んだことなのだ、と思う。日韓のアマチュア野球が決勝に勝ち残ったこと。それは「」をはずした、グローバリズムに進む端緒だと思いたいのである。

周知のように、韓国のプロ野球は、日本から学び、日本の野球人によって育てられた面が大きい。つまり、日韓は同じ野球をやっている。アメリカから輸入されたベースボールを野球に変えて、アメリカと互角以上に闘える実力を養ってきた。アメリカとは違う練習方法と鍛えかた、モチベーションでゲームの高みに上がったわけである。その象徴がイチローであることは言うまでもない。イチローが、現代において、代表的なベースボールプレーヤー、野球選手の一人であることは誰しも認めるところだろう。

そのイチローのバットを決勝の1試合を除き、それ以前の4試合において完璧といえるほど封じた韓国チームの投手陣については、もっと分析されるべきだろう。あるいは、ダルビッシュから初回に3点をもぎとった試合の攻守についても。韓国チームを讃えることはすなわち、日本野球にある普遍性を見出すことであり、日韓のローカリズムがアメリカの「グローバリズム」にどう拮抗して、「」をはずしたグローバリズムに進む道を示す、ひとつのきっかけに成り得ただろうと思うのだ。

しかし、WBC戦TV中継を一回も観ていないのに、俺もよく書くなあ。

前回、「侍ジャパン」の命名にケチをつけた。命名者は、王貞治らしい。それなら、話は別である。誰が言ったかによって、言葉の意味や価値はまるで違ってくる。王貞治が命名したのなら、オラに文句はない。

(敬称略)



とむらいジャパン

2009-03-18 22:53:00 | ノンジャンル
「侍ジャパン」ってネーミングが恥ずかし。自分を「侍」だなんて思っている日本人いるのかしら、右! その「侍ジャパン」の韓国戦の先発がダルビッシュだもんなか? 日本わなあ、明治まで圧倒的多数が農業に従事していた百姓の国菜の花っ。それわ、一割くらいは武士がいた、江戸時代までは士農工商があった、うちは武士の家系で、という話にはならない、ないないない、金がない♪ わたしのあなたのだれのご先祖も遡れば、みんな百姓だった。一族丸ごと百姓の時代もあったろうし、一族の9割が百姓の時代もあったろうということ菜の花畑っ。武士の家系だと自慢げに宣うとすれば、おおかた百姓だったご先祖様を捨象は僕だ! うん、天使は君だ。それはオバマが、「私は黒人の子です」、あるいは、「白人の子です」というのとおな自民党! パパもママも悲しむ無理が通れば道理が引っ込め原辰徳! 戦後は、ご存じ町人国家。へえへえまいどごひいきに、ドンパチを算盤に代えて、「国際社会に名誉ある地位」を占めんとした、爺ちゃんや婆ちゃん、父ちゃんや母ちゃんに、「侍ジャパン」で顔向けでき羊羹は「夜の梅」。アリアリランスリスリランアラリ~ガナンネエ~♪(密陽-ミリャンアリラン)

(敬称略)


バルタザールどこへ行く

2009-03-13 17:14:00 | レンタルDVD映画



風邪ひいた。鼻ズルズル。脳が溶けて流れ出している。そう思えるほど止めどない。頭はぼんやり。長谷川穂積が見事1RKO防衛。日本ボクシング史上、最高のボクサーの一人ではないか。CATVのシネフィル・イマジカにチャンネルする。今月はロベール・ブレッソン監督特集らしい。『バルタザールどこへ行く』(1964)を放映していた。バルタザールはロバの名前。ロバが主人公。始終出ているという意味では。擬人化はない。人間にこき使われる、ただのロバ。ロバ視点はないが、ロバの長い顔のクローズアップは多い。大きく黒濡れた眼。ロバの姿を借りた人間の物語。かもしれない。俺たちもこき使われ、くたびれ、涙ぐむ。文句はいえない。滅入る。音楽ほとんど無し。ピアノがときどき鳴る。ピレネーの農村が舞台。バルタザールはあちこち転々。たいてい、重い荷物を運ぶ辛い仕事だ。サーカスにも売られた。かけ算ができる天才ロバになる。一ケタずつの答えを脚を上げて答える。合図通りに。歓声。サーカスに売った飼い主の貧乏男を会場で見つける。ワインを瓶からラッパ飲みしている。死人のように生気がない。バルタザール答えそっちのけ。ウオーウオーと歯をむき出して鳴き出す。4、5人がかりでも抑えられない。観客大拍手。サーカス赤っ恥。追い出される。元の貧乏男の家に。いろいろなことが起きる。悪い若者たちに連れていかれるバルタザール。闇夜に荷物を積んで月の丘を上る。ひどく尻を叩かれながら。後ろから銃声が。立ち尽くすバルタザール。かすめる弾丸。逃げ去る若者たち。傷口から流れる血。流れ弾に当たった。茂みに隠れて一夜を明かす。羊飼いの犬の鳴き声。羊の群のなかに座っているバルタザール。もう動けない。犬は鳴き通しだ。羊はみなロバに尻を向けている。その中心で横たわる。大きな瞳を閉じるバルタザール。fin。鼻ズルズル。鼻ズルズル。

(名) バルタザール(Balthazar) 東洋から来て赤ん坊のイエスに贈り物をした東方の三博士の一人(聖書)、 男子名; 姓 、12.3リットル(13クォート)入っているワインボトル

(敬称略)

金賢姫の抱擁

2009-03-12 15:31:00 | ノンジャンル
大韓航空機爆破事件の実行犯である金賢姫元工作員と、拉致被害者田口八重子さんの長男飯塚耕一郎さんと兄繁雄さんとの面会が実現した。まず率直に、この3人にとってよかったと思った。当初から金賢姫元工作員に日本語を教えた「李恩恵」は田口八重子さんという供述が出ていたにもかかわらず、事件から22年を経て、ようやく3人は会えた。それは、どうしていままで会えなかったのか、という当然の疑問にも結びつく。

最近の金賢姫さんの談話によれば、北朝鮮へ「太陽政策」をとる盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権下では、大韓航空機爆破事件は韓国諜報機関が実行した北朝鮮に対する謀略説が流布され、マスコミに追い回されるだけでなく、人々から「偽工作員」と中傷され、近年は身を隠して暮らしていたという。殺された乗客115人とその遺族の無念を負った金賢姫さんの無念の底は、想像を絶するほど深かったろうと思う。

姉と慕った田口八重子さんの長男である耕一郎さんと兄の飯塚繁雄さんとの面会は、金賢姫さんにとって、22年間の贖罪の日々になかで、きわめてまれな、人を勇気づける心晴れやかな時間だったろうと想像する。まるで田口八重子さんの代わりであるかのように、耕一郎さんを抱きしめる姿に、47歳となったこの女性の過酷な半生への思いをかいま見る気がした(耕一郎さんはもう少し長く抱きしめてあげてもよかったのに)。彼女にとって、李恩恵=田口八重子さんにまつわる記憶とは、イノセントだった自分に帰るわずかな手がかりだろうと思えるからだ。

先日の日韓首脳会談において、李明博(イ・ミョンバク)大統領は麻生首相に対し、
「朝鮮人強制連行と従軍慰安婦問題について、今後日本政府の謝罪要求を放棄すると誓約した」
という。
http://www.iht.com/articles/ap/2009/01/10/asia/AS-SKorea-Japan-Relations.php
http://www.newsway21.com/news/articleView.html?idxno=53029

「太陽政策」から「北風政策」への転換のひとつかもしれないが、国家に翻弄され続けた金賢姫さんの苦痛に満ちた表情と、耕一郎さんを抱擁しながら頬を濡らす涙をみるとき、拉致問題の前進については少しも考えなかった。もちろん、田口八重子さんや横田めぐみさんらの消息について、新しい情報が拉致家族にもたらされ、いささかなりとも拉致問題の解明に役立ち、拉致被害者が家族の元に帰る日が遠からずくるかもしれない。ぜひそうあってほしいと願っている。

だが、拉致問題のように、国家によって人々が引き裂かれていく、という現実は、これからも続いていくと思えるのだ。もし、前進への希望があるとすれば、「抱いていいですか?」と耕一郎さんに尋ねてから抱きしめた、金賢姫さんのような行動から生まれるものであるはずだし…。なるほど、村上春樹はこのことをいっていたのか。

If we have any hope of victory at all, it will have to come from our believing in the utter uniqueness and irreplaceability of our own and others’souls and from our believing in the warmth we gain by joining souls together.

もし、勝利への希望を持てるとするなら、かけがえのない独自の存在である私たちが、たがいの魂が寄り添うときに感じる温かさ、それを強く信じること以外にないでしょう。
(村上春樹のイスラエル賞受賞スピーチから 拙訳)

(敬称略)