コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

飛光よ飛光よ!

2017-11-26 00:00:00 | 詩文
宇宙空間から謎の発行体が飛来するし、昨夜は新千歳空港の航空管制システムが故障するし、秋田に北朝鮮の漁船が漂着して今朝はかき消えるし、飛蚊症は出るし、

ああ、飛光よ飛光よ!
爾(なんじ)に勸めん、一杯の酒
吾は識らず、青天の高く
黄地(きじ)の厚きを
唯だ見る、月は寒く日は暖く
来て人の寿を煎(い)るを
熊を食らえば則ち肥え
蛙を食らえば則ち痩す
神君(しんくん)、何にか在る
太一(たいいつ)、安んぞ有らん
天東に、若木有り
下に燭を銜(ふく)む龍を置く
吾、將(まさ)に、龍の足を斬り
龍の肉を嚼(か)まんとす
之をして朝には廻るを得ず
夜には伏するを得ざらしめば
自然(じねん)、老者は死せず
少者は哭(なか)せざらん
何為(なにす)れぞ、黄金を服し
白玉を呑まん
誰か任公子(じんこうし)の似(ごと)く
雲中、碧驢(へきろ)に騎(の)らん
劉徹、茂陵滯骨多く
贏政(えいせい)、梓棺(しかん)、鮑魚(ほうぎょ)を費す

―李賀

蛙を食うと痩せるのか、とダイエットのヒントを得たように思ってはいけません。蛙を食うと痩せる効果があるのではなく、カエルを食わねばならぬほど、食うものがない貧乏だということです。つまり、フランス人はそれほど貧しかったのです。

というわけで、今夜はfadです。

これは聞き覚えがありませんか。ホンダアコードのCM曲だったそうです。

o pastor


声がでかいです。

Barco Negro


後ろのおっさんがおもしろい顔です。

Fado Loucura


(止め)

月夜見

2014-10-10 22:44:00 | 詩文

奥多摩周遊道路の随一の絶景、月夜見第一駐車場からは、眼下に奥多摩湖、旧青梅街道、遠くに雲取山など奥秩父の山々が眺望できる。月夜見(つきよみ)とはいえ、夜間には周遊道路間が閉鎖されるため、クマシカサルたち以外に見ることはない。

月の佳い晩が続いています。でも、「中秋の名月」って9月でした。もう過ぎていたんですね。

名月や池をめぐりて夜もすがら (芭蕉)

名月を詠んだ代表的な名句とされています。このとき、芭蕉43歳の男盛り。じつは恋しておりました。それで名月も池も眼に入らず、足下だけを見つめ、女のことを考えながら、うろうろと一晩中歩き続けてしまったわけです。好きな女について考えたといっても、そう真面目なものではありません。ほとんど妄想三昧でしょう。なかにはこんなのもあったのではないかと後年の詩人は書いています。

ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう。
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。

沖に出たらば暗いでせう、
櫂(かい)から滴垂(したた)る水の音は
昵懇(ちか)しいものに聞こえませう、
―あなたの言葉の杜切(とぎ)れ間を。

月は聴き耳立てるでせう、
すこしは降りても来るでせう、
われら接唇(くちづけ)する時に
月は頭上にあるでせう。

あなたはなほも、語るでせう、
よしないことや拗言(すねごと)や、
洩らさず私は聴くでせう、
―けれど漕ぐ手はやめないで。

ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう、
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。

(湖上 - 中原中也)


Myaskovsky's Cello sonata No.2 Op.81 - Mstislav Rostropovich - First movement


(敬称略)

非人情の準備

2014-01-25 06:14:00 | 詩文
宮尾節子の詩のおかげで思い出した。むかし、よく読んだ半村良に「軍靴の響き」「回転扉」という作品があった。物心のつく12歳で「終戦」迎え、両国高校卒業後は零細広告会社のアドマンや酒場のバーテンダーをなりわいとして、人情の機微をよく知る清野平太郎(本名)がもし生きていたなら、きっと、この詩のような非人情を憂う小説を書いていただろう。

明日戦争がはじまる - 宮尾節子
https://twitter.com/sechanco

まいにち
満員電車に乗って
人を人とも
思わなくなった

インターネットの
掲示板のカキコミで
心を心とも
思わなくなった

虐待死や
自殺のひんぱつに
命を命と
思わなくなった

じゅんび

ばっちりだ

戦争を戦争とも
思わなくなるために
いよいよ
明日戦争がはじまる


(敬称略)