コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

日ロ共同記者会見のプーチン

2013-04-30 23:14:00 | 政治


プーチン怖いぜ
http://matome.naver.jp/odai/2136724349220969001

私がいま注目したのは、記者が紙を読み上げて質問したことです。その質問の紙は、ほかの人からもらったと思いますが、その人に次のことを伝えてほしい。この問題というのは・・・。

紙を読み上げて質問した記者を無視するように、紙を手渡した者へ「伝えてほしい」と皮肉をとばしています。同時に、紙をやりとりした二人には、さらに背後があるのではないかと疑いを示すものです。見ているぞ、見抜いているぞと立場が逆転。プーチンはまるで審問官のようです。怖いですね。

ロシアの記者団もお通夜のように沈んでいます(ロシア人はお通夜しないでしょうが)。動画の6:01~の大きなため息も怖いですね。質問したのがロシア人記者なら、どんな報復を受けるのかと想像をたくましくしてしまいます。TVニュースではほとんど放映されていないようです。

(敬称略)

猪瀬さん、じぇじぇじぇ!

2013-04-30 15:44:00 | 政治


不快顔をさせたら日本一の猪瀬さんですから、不快顔を見せつけられてバカにされたり、無視されたりしてきたマスコミ記者が、猪瀬さんの「高転び」に沸き立っています。

猪瀬東京都知事の過激なイスタンブール攻撃に「オリンピック招致規則違反」の懸念
http://getnews.jp/archives/331394

アスリートにとって最善のオリンピック開催地は(リオデジャネイロで2016年に開催される予定の)ブラジルのように社会インフラが整備され、近代的な施設がある国だ。我々(日本)もそれらの条件を満たしている。
しかし、(トルコを含む)イスラム教国は、アッラーの教義を絶対とする階級社会で、内戦に明け暮れている。そのような国は開催国にふさわしくない。

「イスラム教国初の開催」と言うが、それは「仏教国初」や「キリスト教国初」と同様に重要な意味を持つものではない。

トルコは日本よりも平均年齢がはるかに若く、貧しいので子供がたくさん生まれる。日本は人口増加も止まり、高齢化が進んでいるが健康的で落ち着いた生活を送っている。トルコの国民も長生きしたいと思っているのは同じだろう。彼らは早死にしたくないのならば、日本と同様の文化を創造すべきである。

この通りの発言だとすれば、オリンピック招致規則と照合などせずとも、一般的にいっても、下品にして非常識な発言です。ただし、五輪招致のための公務ですから、同行した東京都のPR担当か五輪招致のPR担当の落ち度でもあります。まず、知事と想定問答をインタビュー前に確認しておくべきであり、インタビュー後には原稿をチェックする必要がありました。もちろん、事前にインタビュアーの過去記事や人となりを把握しておくのも、PR担当としてはごくあたりまえの仕事です。

そんなあたりまえの仕事をPR担当がしなかったとは考えにくいから、猪瀬さんが「いいからいいから」とはしょったのかもしれません。とすれば、自身ジャーナリストとして多くのインタビュー経験があり、インタビュアーが日本人記者でもあるので、多寡をくくったのかもしれません。いずれにせよ、まったく異なる他の理由があったにしろ、「ほんとにこんなバカなこと云ったのかよ」と信じがたいほど、お粗末な発言です。

そのような国は開催国にふさわしくない。
「イスラム教国初の開催」と言うが、それは「仏教国初」や「キリスト教国初」と同様に重要な意味を持つものではない。


政治家自身がネガティブキャンペーンをする論外については、誰でも知っていることです。石原慎太郎前都知事に影響されたのかもしれないが、キャラクターが違いすぎます。好悪は別にして、石原慎太郎は戦後の文化人スターの代表の一人です。政治家となって老練さを身につけ、それなりの愛嬌もあり、つねに国内に限った発言をしています。残念ながら、猪瀬さんにはそのいずれの与件もありません。真似たとすれば、ひどい勘違いです。

また、イスラム諸国の内戦に、アメリカをはじめ旧宗主国が関係していることは周知の事実です。イスラム原理主義勢力VS民主化を求める市民の「内戦」を「どっちもどっちのケンカ」とするなら、それは「民主化」側に立つIOCをはじめとする欧米主導の国際社会の「理念」や「正義」を貶めるものです。同様に、欧米の「侵略」と「専横」と闘っているつもりのイスラム原理主義勢力も、敵に回す発言になることはいうまでもありません。

「どっちもどっち」という判断や見解は、一見、ニュートラルで公平なようですが、「俺から見ればどっちもどっちだよ」と「上から目線」を売り込む場合が多いものです。子どものケンカならともかく、いうなれば世界を二分する勢力の上に立とうとするとは、ちょっと猪瀬さんを見くびっていたのかもしれません。

彼らは早死にしたくないのならば、日本と同様の文化を創造すべきである。

日本の平均寿命が世界一であることを誇っているのですが、ならばトルコだけでなく、世界の国々に対し、「日本と同様の文化を創造すべき」といっているに等しいわけです。オリンピック招致に向けて、日本や東京への共感や共生感を醸成するために取材を受けているはずなのに、「長生きしたけりゃ、日本文化に学べ」では、反発しか招きません。

いうまでもなく、文明は共有できますが、文化は民族固有のものですから、非常識きわまる発言でもあります。とりわけ、親日国といわれるトルコにとっては、きわめて不当といえる発言です。西欧文明を普及させた例外的なイスラム国にして、その反動としてクルド人など民族独立運動に苦しむトルコに、日本文化という民族文化を学べと説教するとは、ちょっとどころか、おおいに猪瀬さんを見直さなければなりません。

真意が伝わらなかった

猪瀬さんはそう弁明しているようです。その後、「言葉足らずであり、私の不徳の致すところ、関係者の皆様にお詫びする」と続けば、日本の場合は水に流しておしまいです。ですが、外国にはこの弁明も謝罪も通用しません。「真意をねじ曲げた」とNYTに抗議しないのは、さすがにPR担当もインタビューに同席して録音やメモをとっていて、記事内容には文句をつけられないと判断したからでしょう。

ほとんど無風選挙で都知事になった苦労知らずが、この脇の甘さにつながったのかもしれません。石原慎太郎前都知事は戦後文化人のスターであり続けていますが、政治家としては挫折をくり返し、都知事選挙でも苦杯をなめています。肩を並べられない猪瀬さんとしては、副知事が分相応だったといわれないために、石原さん以上の実績を上げねばならず、石原さんができなかったオリンピック招致にのめり込むあまりの失言かもしれません。

しかし、ヨットマンとしてワッペン付きのブレザーを着慣れた石原さんにはオリンピックは似合うが、猪瀬さんには似合いません。東京マラソンのときも、ただただ場違いな印象をふりまいただけでした。だいたい、ベルサーチのスーツが似合わないというか、スーツ姿そのものが似合わない人です。都職員ジャンパーでも着込んで、地味ながら都民に有益な実績を積み上げる方が、柄に合っていると思います。どうせ、再選はないのだし。

GWをパクられて過ごす人もいる

2013-04-29 10:21:00 | 政治
学生運動が払底したといわれて久しいが、法政大学にのみ、数少ないながら生き残っているらしい。これに対し、大学当局は、躊躇なく大学内に警察を導入して、デモや集会をする学生を次々に逮捕させているらしい。「らしい」ばかりで恐縮だが、数年前からそんな状況らしい。

4/24武田くんアピール2


大学で闘うことを覚え、大学で団結することを覚え、大学で次の社会のあり方を見すえ、社会に巣立っていく場にしたいと我々は考えています。

昔は、ヘルメットにタオルにサングラスで顔を隠し、ハンドマイクのノイズを増幅するような割れ声に早口で、何を云っているのかほとんどわからなかった。わからそうという気もなかった。はっきりした口調と正しい言葉づかいで、こんな風に説得的に話すのは民青だけだった。ただし、話の中味はくだらなかったが。彼らが中核派なのか、自治会活動家なのか、よくわからないが、昔よりずっとマシなのはたしかに思える。学長が言ってもおかしくない言葉だ。

4/25不当逮捕状況


逮捕されています。校門の外でデモを呼びかけていた、ただそれだけのようなのに。逮捕状の提示もなさそうだから現行犯逮捕らしいが、いったいどんな容疑なんだろうか。それとも今は、デモや集会を呼びかけるだけで逮捕されるのだろうか。

凄いぞ、麻生さん

2013-04-23 17:43:00 | 政治


安倍内閣への支持率の高さは、「安倍麻生政権」といわれるほど、麻生太郎副総理兼財務大臣の存在感の大きさが寄与しているからでしょうね。4月19日、アメリカの有力シンクタンクである米戦略際問題研究所(CSIS:Center for Strategic and International Studies)で、麻生副総理は流暢な英語で講演しました。

動画「アベノミクスとは何か 日本経済再生に向けた日本の取組みと将来の課題」
http://www.ustream.tv/recorded/31681043

講演の文字起こし

http://daisukeblog.com/?p=2089

講演後の質疑応答
http://twishort.com/24kdc

横にいるのは、あの有名なジャパン・ハンドラーマイケル・グリーンさんです。麻生副総理のスピーチのすばらしさに感激の面持ち冷めやらずといった風です。麻生さんはあの魅力的な笑顔をたたえながら、自信に満ちた堂々たる受け答えをしています。マイケル・グリーンさんに、「アベノミクス」の第3の矢=成長戦略について尋ねられ、麻生さんはこう答えています(動画の再生時間では、44分15秒~)。

3番目のバズーカ(3本目の矢=成長戦略)については、いま私に訊かれるより数か月待って、これをまとめている人たちに直接訊いて頂いたほうがより正しい答えが出ると思いますが、私の知ってる範囲で答えさせて頂きます。

「これをまとめている人たち」とは麻生さんが議長代理をつとめる産業競争力会議のことでしょう。その中心といわれる竹中平蔵主査がまとめて、4月17日に産業競争力会議に提出した資料が、この4月19日CSISにおけるスピーチの下敷きになったと思われます。小泉政権で大蔵大臣をつとめた竹中平蔵さんも麻生さんの懐刀だったんですね。第3の矢=成長戦略のひとつは、非効率で赤字を垂れ流す公共事業の規制緩和だと麻生さんはいいます。

このロボットは一つの例ですが、例えばいま日本で水道というものは世界中ほとんどの国ではプライベートの会社が水道を運営しているが、日本では自治省以外ではこの水道を扱うことはできません。しかし水道の料金を回収する99.99%というようなシステムを持っている国は日本の水道会社以外にありませんけれども、この水道は全て国営もしくは市営・町営でできていて、こういったものを全て民営化します。

竹中平蔵主査が麻生さんに提出した「立地競争力の強化に向けて」という資料には、空港・有料道路・上下水道・公営地下鉄など、非効率で赤字を垂れ流す、「公共事業の資産規模は185兆円、民営化すれば少なくとも数十兆円規模の財源創出が見込まれる」とあります。

水道事業を民営化すれば、「「日本版水メジャー」として、グローバルに展開する道も開ける」ということです。欧米や日本などの先進国以外では、まだまだ上下水道が未整備な国がたくさんあります。そうした国々に、日本の水道事業を輸出しようという壮大な成長戦略です。実現すれば、石油メジャーに代わるとされる「水メジャー」の一角に日本も加わるわけで、はかりしれない経済効果といえます。

麻生さんが、「日本の水道事業を民営化します」と言明したとき、横のマイケル・グリーンさんがあわてて水を飲んだのは可笑しかったですね。「日本の麻生、恐るべし!」と衝撃を受けたのがありありでした。堅い話が続いたので、下は「水メジャー」について、オマケです。

現在の話と完全にリンクする、今回の『007』水道民営化の恐怖
http://machiokoshi666.blog.fc2.com/blog-entry-24.html

アウトレイジ ビヨンドのビフォーアフターについて 01

2013-04-18 13:48:00 | レンタルDVD映画
関口宏が司会するTBS「サンデーモーニング」に、張本勲がメインのコメンテーターをつとめるスポーツニュースのコーナーがある。「喝っ」「天晴れ!」というやつだ。先週の僅差というか、ほとんど負けていた亀田興毅の防衛戦について、評論家の寺島実郎がこんなことをいっていた。「興業としての評価は別にして、ボクシングとしてはどんなものか。パンチを当てるだけで、切れるようなプロのパンチをまだ見せてもらっていない」と亀田批判である。


不甲斐ない試合に土下座して観客に詫びる亀田興毅

肥えているのにいつもダブルの背広を着ている寺島が、減量がつきものであるボクシングのファンとは意外だった。「21世紀のアジアは大中華圏」を唱えて、「中国のゾルゲ(@オフィス・マツナガ)」と揶揄されるスケールの大きな外交評論に定評ある人だ。肥満体型+着ぶくれファッションという非常識と、「大中華圏構想」という超常識が見合っているように思えるのは困るが、TV局の興業優先を批判したこの発言は、「天晴れ!」に値するものだった。

外交問題といえば、この番組の先週を見のがしてしまったのだが、松井・長嶋のW国民栄誉賞について、張本はどんなコメントをしたのか気になる。松井のおまけに長嶋に与えて、「師弟受賞」とは失礼だし、長嶋に与えるなら、在日韓国人への差別をはね返して、たぶんイチローさえ及ばぬ、3000本安打という前人未踏の大記録を打ち立てた張本が先だろう。

政府内閣の人気とりなら、竹島や慰安婦問題をめぐって、反韓や反在日運動が問題となっているいまこそ、張本に国民栄誉賞を与えるべきだった。在日中国人をルーツとする王貞治に続き張本勲が授賞すれば、どれほど在日社会や国際社会にアピールするか。政治利用の絶好の機会をみずから潰してしまった、前回とあまり変わらぬ安倍政権の政治センスの乏しさには、張本に代わって、「大喝っ」を出したいところだ。

閑話休題、それはさておき、「世界チャンピオンになりながら、まだプロのパンチを見せてもらっていない」という寺島の控えめな亀田批判に、「我が意を得たり」と膝を叩いたのは、北野武の新作「アウトレイジ ビヨンド」を観たからだった。前作「アウトレイジ」に引き続きヒットしたらしいのは慶ばしいのだが、作品としては、捻りすぎた首が戻らず、傾いたまま肩に付いてしまった。いったい、これは映画なのだろうか、とさえ思ったものだ。



寺島のおかげで、亀田興毅と北野武に似ている点が多いことにも気づいた。6度目の防衛を果たした「WBAバンタム級世界チャンピオン」と海外映画祭で数々の受賞歴を誇る「世界の北野」。亀田は大阪西成区、北野は東京足立区の貧困家庭出身。亀田は選手・コーチ未経験である素人の父親の指導でボクシングを学び、北野も漫才のかたわら俳優経験を重ねて独学で監督術を身につけている。二人とも、メディアへの露出は抜群だが、試合や作品に対する安定した評価を得ていない。たんにボクサーや映画監督・お笑い芸人というだけでなく、トリックスター的なキャラクターとして、どちらも人気を博している。

もちろん、ボクサー・亀田興毅、映画監督・北野武、いずれも虚像ではなく、優れた資質を見せたり、よい映画シーンを撮っている。しかし、亀田興毅が海老原博幸大場政夫と同じ世界チャンピオンか、北野武が今村昌平や深作欣二と同じく映画監督かといえば、どこかなにか違うという気がする。寺島にならい、北野武から、「まだ世界レベルの映画を見せてもらっていない」といえば、すぐさま、カンヌ映画祭をはじめとする輝かしい受賞歴をお前は知らないのかと云われるだろう。だが、それをいえば亀田興毅にしても、31戦30勝(17KO)という圧倒的な戦績を誇り、WBAバンタム級チャンピオンを6度も防衛している。

問題は試合や作品の中味であり、タイトルがすべてではない。観客にとっては、ショットに興奮できるかどうか、それがすべてだろう。私見としては、北野作品のうち、「その男、凶暴につき」以外をさほど優れた作品とは思っていない。この北野武監督デビュー作は、それ以後の作品と異なり、早世した野沢尚が脚本を書いている。これ以外の北野作品は、すべて脚本・北野武となるのだが、実際には脚本はなく、監督北野武の口立てによって俳優にセリフが伝えられている。最新作の「アウトレイジ ビヨンド」も同様である。

深作欣二が監督を降りたおかげで、主演のビートたけしに話題づくりとして監督のお鉢が回ってきた。「その男、凶暴につき」にはそんな経緯があったから、野沢尚脚本だけでなく、カメラや照明、スタッフのほとんどはすでに決まっていて、撮影プランもおおかたできていただろう。少なくとも、いわば中途採用の監督として映画づくりに参加したビートたけしに裁量できる範囲は、きわめて少なかったはずだ。もちろん、ビートたけしにお飾りの監督に甘んじる気はなかった。撮影現場は混乱しただろうが、だからこそ映画としては緊張感に溢れて優れたものになったと思えるのだ。

ほとんどの作品が脚本なしの口立てという映画監督は珍しいはずだが、映画づくりの素人だった北野武が、結局、脚本が書けないがために口立てにしたということはじゅうぶんにあり得る。ならばなぜ、たとえば原案・北野武としてべつに脚本家を立てるとか、あるいは共同脚本にしないのか。「アウトレイジ ビヨンド」では、主演・監督・脚本にくわえ、編集まで自ら手がけている。なぜそこまで、映画のすべてに携わろうとするのか。言い換えるなら、なぜそこまで、すべてが許されるのか。そこらあたりに、映画監督・北野武の「裸の王様」ぶりと、裸と知りつつ気づかないふりを続ける、北野武という空洞がうかがえる気がするのだ。
                               -この項続く-

(敬称略)