コタツ評論

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ナイロビの蜂(集英社文庫)

2006-06-16 20:56:13 | ブックオフ本

ル・カレの最新作『律儀な園芸家(原題)』読了。リーダビリティと翻訳者が解説で書いているとおり、晦渋に慣れていたル・カレファンとしては、とまどうほど読みやすい。ほんと、途中で心配になった。こんなにテンポよく「旅」が進み、命を賭した「友情」や「化物」じみた悪役が登場するのでは、三文謀略小説と変わりないじゃないか、それにNGOの資料でも借りてきたのか、大丈夫か彼と。J・エルロイみたいに新聞記事や調査報告書をそのまま貼り付ける手法もお手軽に感じた。しかし、下巻において、すべて杞憂であったと知る。読む前と後では、アフリカを見る眼が確実に変わる。少しだけあらすじに触れるのをご容赦願いたい。


嫌だ、迷惑だという人は下を読まないでね。


いい気なもんだぜ、という結末は迎えない。ただし、救いはある。しかし、癒しはない。彼のように70歳を越えないと男女の愛は描けないのかもしれない。俺はまだまだ現役の哀れなウッドロウであるな。