コタツ評論

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ポップ1280(ジム・トンプスン 扶桑社ミステリー文庫)

2006-06-11 00:04:04 | ブックオフ本
以前に紹介した『俺の中の殺し屋』と同工異曲。だが、これも傑作。ぼんくらに見えて実は切れ者。弱っちそうでいざとなればタフ。気弱そうでほんとは冷酷。犯罪常習者でありながら、同時にモラリスト。職業保安官にしてその正体は救世主! 救世主ニック・コーリーは無実のサムに問う、「はっきり言えよ。言われていることが事実でないなら、どうして事実だという話が広まっているんだ?」。シェークスピアばりの凄い詭弁術。もしかしたら、シェークスピアに下敷きがあるのか? ジム・トンプスンには、長生きして、繰り返しこの同じ物語を書いてほしかった。病みつきになる。ポップとは音楽や風俗に何の関係もない。ポピュラー=人口のことだ。