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超級龍熱

香港功夫映画と共に

地球最後の楽園に女1人と男2人。マーゴット・ロビー主演「死の谷間」6月公開。

2018-04-10 17:39:43 | 作品レビュー

さてさて、昨日は都内某所でクレイグ・ゾベル監督、マーゴット・ロビー主演「死の谷間」(15)を試写で観て来ました。
事前に見た本作のチラシには「人間の本性をえぐり出す衝撃のSFサスペンス」なんて煽り文句が入っていましたが、この映画はSFサスペンスではなく、極限状態での男女の心の奥底の弱さを徹底して掘り下げた重厚な人間ドラマの表記がより正しいでしょう。

核の猛威で地球が死の灰に覆われ壊滅した世界。そこに唯一核汚染を免れた谷がありました。
緑と澄んだ水に囲まれたその谷ではアン(マーゴット・ロビー)という汚れを知らない女性がたった1人で住んでいました。アンの話し相手は愛犬のファロだけ。
何故ならアンの弟も含めた他の住民は谷を離れて、そのまま2度と戻って来なかったからです。アンは愛する弟の無事を願いながらも、父が立てた木造の教会で1人オルガンを弾き、その強い信仰心と共に静かに暮らしていたのでした。
そんなアンの住む谷にジョン(キウェテル・イジョフォー)という黒人の男性が姿を見せます。科学者のジョンは迂闊にも谷の外から流れて来る放射能汚染された滝に入り瀕死の状態となりますが、アンの懸命の看護で命を取り留め、そのまま谷に留まります。
知的で優しいジョンと、久しぶりの人との会話を喜ぶアンは共に助け合いながら生活し、お互いに少しずつ理解し合い、やがて自然に親密になっていくのでした。
博識なジョンは様々なアイディアでアンを喜ばせますが、ジョンはやがて谷に訪れる厳しい冬に備えて、食糧を貯蔵する冷蔵庫の電気を確保するために滝を利用して水車を作ろうと提案します。
しかしアンはその水車を作るためには教会を壊した木材を使用するしかない、とのジョンの提案に強く反対します。そう、教会はアンにとって父親その物だったのです。
そんなアンとジョンの静かで平和な生活にまた1人の訪問者が現れます。地下鉱山で働いていたため核汚染を免れた若き青年ケイレブ(演じるは「スタートレック」のカーク艦長ことクリス・パイン)です。
ジョンはケイレブに対するアンの好意と恥じらいの態度を見て、自分が白人である2人とは違う黒人である事を改めて思い知ると同時に、自分の中の激しい嫉妬の感情を懸命に抑えようとします。
また若く逞しいケイレブも清楚で美しいアンに熱い視線を注ぐのでした。こうして静かで平和だった谷に人種や欲望が入り乱れた男女の神経ギリギリの人間模様が繰り広げられた果てに、ある日ジョンはそれまで決して口にしなかったある過去の出来事をアンに告白します。それはアンにとって余りにも悲しい事実でした。
そして2人の男の間で心揺れるアンを残し、ジョンはケイレブと共に滝に建造中の水車の最後の仕上げに向かいます。
しかしそれは共にアンを愛する2人の男にとってはお互いの“決着の時”でもあったのでした!!

本作「死の谷間」は1976年にエドガー・アラン・ポー賞を受賞した「死の影の谷」を原作とし、美しい自然に囲まれた谷を舞台に1人の女性と2人の男性の息詰まる人間ドラマが展開されていきます。
映画の意味深で、ある意味不気味なラストは、監督のクレイグ・ゾベルが観る側である私たち観客に向かって「あなたはどう思いますか?あの後どうなったと思いますか?本当にそう思いますか?」とジワジワと問いかけて来るような重くズッシリとしたエンディングです。
また主演のアンに扮したマーゴット・ロビーの清楚で、それでいて強靭な意志を感じさせる美貌は大変印象的で、さすが「アイ、トーニャ史上最大のスキャンダル」(17)でアカデミー賞など各女優賞にノミネートされただけの事はある素晴らしさでした。
この「死の谷間」は6月23日から新宿武蔵野館などで全国順次ロードショー公開となりますので是非!

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