さあ!「THIS IS 甄子丹」スペシャルこと「Way to the 葉問4:完結篇」、その第1回は陳可辛監督作品「捜査官X」(11)でいきましょう!
山奥の静かな村で美しい妻阿玉(湯唯)と2人の息子と平和に暮らす男性劉金喜(ドニー兄貴!)には悲しくも恐ろしい過去があった。その悪夢が再び甦る時!男は仮の名の劉金喜を捨て、その真の姿である唐龍となる!名監督陳銅民の息子として幼い頃から邵氏兄弟公司の撮影セットに出入りしていた陳可辛は、自身が子供の時に熱狂した武侠片の神話をドニー兄貴に加えて往年の邵氏2大武打星を起用する事で現代に甦らせたのである。
その邵氏2大武打星の1人が狂気の教団七十二地煞教主(敢えて後述)の妻で鬼女の如く冷酷な女殺手十三娘(恵英紅)である!
十三娘「お前は劉金喜じゃない!唐龍さ!そ〜れ!」「ぎゃあああ!」
劉金喜の目の前で村の年老いた老人の首を十三娘が切り裂いた時!10年に渡って封印して来た唐龍の無敵格闘本能が覚醒する!
この一見何の取り柄もなさそうな主人公が実は凄腕の格闘マシーンだったというプロットは、ドニー兄貴の役名が唐龍である事からも明らかだが、李小龍初監督作品「ドラゴンへの道」(72)のアレンジである。
唐龍「ハァ!ハアァァァァァ!」
バッババッ!七十二地煞の狂刃から村人を守るため秘められた格闘術を解禁し十三娘に挑む夫の金喜、いや唐龍の後ろ姿を悲しげに見つめる阿玉。そして自分の父親の真の姿を初めて見た次男坊が「ニコッ!」と見せる笑顔が素晴らしい!(ここは龍熱が大好きなシーン👍)。
唐龍「十三娘!俺は教団には戻らない!」
十三娘「無駄よ!教祖様がお前をお望みなのさ!」
ここで唐龍と十三娘が無数に立ち並ぶ瓦屋根の上を飛び越えながらの追撃戦は、胡金銓が邵氏公司で撮った「大酔侠」(66)で女剣士の金燕子が披露する有名なシーンへのオマージュである。
激闘の末に十三娘を倒した唐龍は七十二地煞との闘いで自ら左腕を切り落とし、阿玉と息子たちが待つ我が家に舞い戻るが、そこで唐龍を待っていたのは唐龍の実の父親である七十二地煞の教祖(王羽!)だった!香港クンフー映画の“生きる伝説”ジミー・ウォングこと王羽、衝撃の銀幕復帰である!!
教祖「お〜?よしよし!我が息子も帰って来たか。これで一族全員揃うたな・・・うん?貴様!その腕は何だぁぁぁあ!(怒)」
唐龍「人を殺めて来た左腕は教団に返しました!」
教祖「黙れ!お前の身体に流れる血はワシの血だ!ならばこの小僧の血もワシの血よぉ!うがあぁぁぁ!」
教祖は唐龍の息子を逆さに持ち上げそのまま頭から床に叩き着けんと咆哮!それを阻止せんと父親に刀を向ける片腕の剣士!いま実の親子の骨肉の闘いが火蓋を切る!
ここからの唐龍と教祖の一騎打ちは主人公であるはずの唐龍が教祖に対してひたすらセールをしまくり、最後も教祖は徐百九(金城武)の針攻撃から“天災”で命を落とし、それを唐龍はただ倒れたまま瀕死の状態で見ているだけという、最後まで“天皇巨星”の妖気と凄味だけが印象に残った前代未聞の決着シーンとなった。
言うまでもなく本作「捜査官X」は張徹が邵氏公司で撮った「片腕必殺剣」(67)のリメイクである。監督の陳可辛はそこに唐龍と阿玉の深い夫婦愛と金城扮する捜査官によるスリリングな捜査&検証テイストを加味させた新たな“獨臂刀世界”を構築する事に成功している。最後に余談ながら、映画のクライマックスの唐龍vs教祖の対決シーンの撮影中、王羽が陳監督に「なあ?思うんだが、ここは俺も片腕になったほうが面白いと思うがどうだ。うん!それがいい!俺も片腕になるぞ!」と言い出し、陳監督を大いに困惑させたとの事。「葉問4:完結篇」へのカウントダウンまであと3つ!!!