張琪氏医案 毒熱蘊結 迫血妄行案
(張琪臨床経験?要集より)
患者:王某 7歳 女児
初診年月日:1984年8月13日
病歴:
2ヶ月前、突然に腹痛が出現、続いて両下肢の関節痛と紫斑が出現、尿検査で赤血球が多数認められ、蛋白(2+)。入院して「紫斑病性腎炎」と診断され、大量のステロイド剤の治療を受けたが効果が明らかでなく、治療を求めて来診した。
初診時所見:
尿検査:蛋白(2+)赤血球多数50個以上/H 白血球4~6。全身倦怠無力感が強く、眠気があり横臥を好み、自汗、血尿、手足心熱、容貌は満月様(ムーンフェイス)を呈し、便秘、舌尖赤、苔白干、脈象滑数。
診断:毒熱血絡蘊結 迫血妄行外溢
治則:清熱解毒 涼血止血法
処方:以下
白花蛇舌草30g 大黄7.5g 桃仁15g 藕節25g 生地20g 側柏葉20g 小薊40g 白茅根50g 黄芩10g 甘草10g 水煎服用
二診(8月20日)
上方6剤を服用後、紫斑は減軽し、尿中赤血球は10~15、尿蛋白(+)と改善したが、まだ、手心熱、舌尖赤、脈滑であった。
前方に加味: 蒲公英30g 紫花地丁30g
三診(8月27日)
6剤を服用後、手心熱が減軽し、気力が戻り、尿中赤血球8~10 蛋白(2+)舌尖赤、脈滑。
四診(9月4日)
反跳(リバウンド)が出現し、尿中赤血球50以上、蛋白(2+)、苔白脈滑。
総合して分析してみると、熱邪は減退したとはいえ、まだ、血絡の損傷が未回復であり、清熱涼血の治則に炭類を加え血絡の損傷を修復させるのが宜しいと判断、
処方 以下
大黄炭10g 血余炭10g 地楡炭10g 蒲黄炭10g 焦梔子10g 生地20g 丹皮10g 側柏葉20g 白茅根50g 桃仁15g 小薊30g 白花蛇舌草50g 生甘草10g
9月14日再診:
上方を10剤服用して、諸症は皆減じた。尿中赤血球3~4 蛋白(+) 苔白脈滑。
病状は漸次安定し、上方に黄蓍30gを加え、継続服用20余剤で全快した。
評析
本案は初期には熱毒蘊結、迫血妄行の所見を呈した。ステロイド治療では未寛解であった。そこで、蒲公英、白花蛇舌草、紫花地丁で清熱解毒、小薊、生地、黄芩で清熱、涼血止血、藕節、側柏葉で止血の功能を求めた。臨床上、凡そ紫斑病性腎炎は正気がまだ衰えていないものに属する。張氏は大黄、桃仁の配伍を得意とし、瀉熱開瘀(化瘀と同意)止血の効果を確認し、頻繁に使用されるステロイド治療を受ける瘀熱の象を示す患者に対して、まず、大黄 桃仁を選択して満足できる効果を収めている。
ドクター康仁の印象
大黄炭10g 血余炭10g 地楡炭10g 蒲黄炭10gの炭類も清熱解毒、瀉火、涼血止血、活血化瘀の品を炭にしていますね。それで、なお止血の効能を高めています。
本案の大黄と桃仁の量は「日本では無理」かも知れませんね。腹痛がやってきて下痢になるからです。その辺に「野糞」をするわけにはいきませんから、介護用オシメが必要になるでしょう。ともかく外出できなくなるわけですから。
2013年3月28日 記
本日は午前診だけですので、準備します。
関係諸氏の方々ご心配なさらずに。
http://www.kinwu.ac.jp/topics/index.html?id=23726
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