祝?矛氏医案 腎陰不足案
(祝?矛臨床験案精選より)
患者:史某 8歳 女児
初診年月日:1992年6月24日
病歴:
両下肢皮膚紫斑と蛋白尿 顕微鏡学的血尿2ヶ月
4月初旬小エビを食べた後に、密集して紫斑が出現、尿検査:尿蛋白(3+)赤血球大量。4月20日地元の小児科病院を受診、“過敏性紫斑、紫斑病性腎炎”と診断される。雷公藤多?片(雷公藤抽出製剤の錠剤)10mg、毎日3回服用(1日量30mg)、下肢の紫斑は消退、但し、頻回の尿検査で、蛋白(2+)~(3+)、赤血球大量、5月中旬退院した。6月21日祝氏の医院受診。
診時所見:
現症では特殊な所見は無し。両下肢に陳久性の紫斑があり色は淡、舌淡暗、脈細弦。
弁証立法:腎陰不足、飲食不節、海エビによる助火生熱、迫血妄行。
治則:涼血清熱、補腎滋陰。
経験方「過敏煎加味」:
銀柴胡10g 防風10g 烏梅10g 生甘草6g 五味子15g 白茅根30g 益母草20g 生黄耆20g 川断10g 菟絲子10g 枸杞子10g
14剤服薬後、尿蛋白60mg/dl、赤血球10~15/HP
8月2日再診: 腎虚血燥、迫血妄行と診断、治療は涼血止血、補腎滋陰、
治方は四生丸加味として、雷公藤多?片の服用は停止した。
処方 以下
生地10g 生側柏葉15g 生荷葉10g 生艾葉10g 生地楡30g 白茅根30g 大小薊各10g 烏梅10g 五味子10g 山茱萸10g 枸杞子10g 生黄耆30g 毎日1剤 水煎服用。
18剤服薬後:尿蛋白15mg/dl 尿検査:赤血球6~11/HP 自覚症状無し、舌尖紅、脈弦滑。上方を守り、牡丹皮 紫草を加え、蜂蜜で丸薬を作成し、1丸10gとして、1日2回、1丸ずつ服用。
服薬2ヶ月後、尿蛋白(-)
継続服用2ヶ月、尿検査異常なし。
1994年11月再診 再発なし。
評析
本案では祝氏が診た時には顕微鏡学的血尿のほかには異常がなく、一見「無証可弁」と呼ぶに似つかわしい状態であったが、祝氏は其の児童の皮膚紫斑の病歴を根拠に、陰虚血燥、熱迫血行を初診時の弁証の主として、過敏煎に疏風涼血、益陰補腎の品を加えて用いた。再診時弁証は四生丸、六味地黄湯加減、涼血止血、滋陰補腎を以って治療し、雷公藤多?片の服用から離脱に成功し、尿検査は次第に正常になり、弁証と弁病の結合の優越性を十分に体現させている。
ドクター康仁の印象
雷公藤(らいこうとう)片は私も使っていますが、非常に使いづらい薬剤です。慢性関節リウマチでリウマトレックス(抗癌剤トレキセート)などの抗リウマチ剤を多量に服用している患者さんに少量使用しています。不良反応(副作用)に注意しながら、少量を使用するだけです。
経験方「過敏煎加味」:
銀柴胡10g 防風10g 烏梅10g 生甘草6g 五味子15g 白茅根30g 益母草20g 生黄耆20g 川断10g 菟絲子10g 枸杞子10g
加味ですから何処までが「過敏煎」なんでしょうね。
銀柴胡は退虚熱剤ですが、虚熱の証はないですね。
烏梅と五味子を最後までカップルのように使用していますので、祝氏は経験上、抗過敏という効能を確認しているのでしょう。経験方たる所以ですね。
四生丸(ししょうがん、或いは、しせいがん)止血剤です。
読み方はどちらでもいいでしょう。出典は中国の「婦人大全良方」です。
「よんなまがん」と覚えると、全部生(なま)の生薬を用いるという感じがつかめます。
生地10g 生側柏葉15g 生荷葉10g 生艾葉10gという具合に「生」が4つあります。君薬は生側柏葉で、涼血止血に作用します。念のために生地黄は生ではありません。生地よりも新鮮地黄の方が効き目がありそうです。日本では、漢方医は生の生薬をディープフリーザーで保存しておいて、使用するような面倒なことはしておりません。
最後の丸薬は以下 1日量
生地10g 生側柏葉15g 生荷葉10g 生艾葉10g 生地楡30g 白茅根30g 大小薊各10g 烏梅10g 五味子10g 山茱萸10g 枸杞子10g 生黄耆30g 加 牡丹皮 紫草から1丸10gの丸薬を作成するのですから、(粉末にして蜂蜜を練りこんで丸薬を作成するのではなく)煎じ薬を煮詰めて、最後に蜂蜜で丸剤を作ることになりますね。手間のかかる作業です。
評析に「弁証と弁病の結合の優越性を十分に体現させている」とありますが、本案は明らかに弁証<<弁病ですね。
2013年3月29日 記
もう金曜日になっちゃいました。1日分老化しましたが、知識は1日分増えていきます。
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